海に帰る日 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900618

感想・レビュー・書評

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  • ベタでクサいと優れた小説世界との紙一重的作品。妻に先立たれ自暴自棄になり、過去に失われた初恋の少女を想いながら酒を飲む。過去の情景の立ち現れ方というか、本文中にもあったけど、そういえば私も過去を思い出す時は動きはあまりなくて絵画的な瞬間として思い出していたなとか、細部で共感できる。ラストのあの海でのよくわからない現象はすごいなぁ。ああいうシーンこそ小説の醍醐味と感じる。

  • 「海に帰る日」はアイルランド人のジョン・バンヴィルのブッカー賞を受賞した小説です。

    最近妻を亡くした主人公が子供の頃に夏休みに訪れた海辺の町へ帰るという話です。

    アクションはあまりなく、小説の大部分は主人公の考えと回想だけです。そのため、これは「映画にできない」小説だと思いましたが、驚いたことに映画が作成されたそうです!



    いうまでもないと思いますが、散文は本当に美しいものです。英語版を読みましたが、分からない言葉が出てきました。どうやって翻訳されたのか興味があるので、次は日本語版に挑戦しようかなと思っています。

  • ブッカー賞受賞作ということで入手したんだったかな。あと、ノーベル賞にも近い作家みたいだし。なんだけど、やはり自分には、そのあたりの理解力が無くて、文学の素養も追いつかないみたい。本作も、主人公の視線を軸に、自由自在に時間を行き来するんだけど、やっぱりこういう展開の仕方、個人的にはダメみたい。集中して読んでいれば何てこともないのかもしれないけど、であれば、注意を引きつけ続けるだけの求心力を、と思ってしまう。他の作品も是非!とは、ちょっと思わなかったなぁ。

  • ブッカー賞受賞で故 児玉清氏が推薦していたとのことだったが、私には高尚すぎて言わんとしているところを理解できなかった。面白くなくは無かったけれど。
    ひたすら、えんえんと続く、叙述される主人公の過去と現在を行き交っての脳内独白とも言える言葉を読んでいくのは辛かった。

  • 小説というものの読み方を自体を変えてくれた本。間違いなく近年アイルランド文学における傑作の一つだろう。幼少期のひと夏の思い出、癌で妻を看取るまでの日々という過去と、再びあの夏を探して季節外れの海辺へとやってきた私の現在が綯い交ぜに語られる。まるで行きつ戻りつ海岸へと打ち寄せる波のように。
    ジョイスやウルフの様な意識の流れを感じさせる部分もあるが、バンヴィルの美しい文体に身を任せれば読み終えるのはそう難しくないだろう。ゆっくりと時間をかけて読むことをお勧めします。

  • ストーリーがあるような無いような。主人公が過去の記憶をたぐり寄せる物語。その過去の時間軸が入り交じる。いつか、みんな、逝ってしまう。

  • [05][130222]<m市

  • 本書『海に帰る日』は、最愛の妻を失ったばかりの老美術史家のマックスは、少年時代を過ごしたことのある海辺の小さな町を訪れる。
    ある夏を一緒にすごした双子の姉弟との蜃気楼のような日々と、がん末期の妻と過ごした最期の日までが、時を超越して絡まりあい、深い喪失感と静かさを置き去りにする。

    どうも私はジョン・バンヴィルとは相性があまりよくないようである。
    本書の翻訳は村松潔さんで翻訳文の不安はないのにもかかわらず、ストーリーをきちんと追いにくいのである。
    たとえば、双子と過ごした夏の日々と妻と過ごした最期の日々。
    これらは、どちらも死という喪失へ向って進んでいくのだが、記憶や場面の切り替えしが、作者の意図なのか曖昧すぎ、時折混乱を引き起こす。
    たとえば、シャン・サの『碁を打つ女』のように、徹底し、明確なクロスカッティングのような様式で書かれた書物は構成がしっかりしていれば、非常に効果的で読みやすい。
    それに比して、わざと混沌のなかに読者を放り込むような『海に帰る日』のような作品はよほど、小説に没頭しないと本質を掴むのが遅れてしまう。

    『バーチウッド』でも思ったが、ジョン・バンヴィルは、深く読み込まなければならない作家なのかもしれない。
    反芻したり、表現を焼き付けたり、ビジュアル化されたものを頭のなかで的確に組み立てたりと、読者独自の企図も必要なのかもしれない。

    カズオ・イシグロなどの作家の場合は、ただ読んでいるだけで、彼が前半のところどころに打った布石に自然に気付いていくし、『わたしを離さないで』のような内容が異質な作品に関しても作者の意図通りに読まされてる感があるが、ジョン・バンヴィルに関しては、感情の投射の位置づけが時間と出来事の絡み合いのせいかなかなか明瞭にならない。

    ジョン・バンヴィルは、1945年、アイルランド出身。
    12歳より小説を書き始め、アイルランド紙で文芸記者をしながら執筆活動を続けた。
    1980年代には作家としての地位を確立し、現在アイルランドを代表する作家であり批評家である。

  • 妻に先立たれた人生の晩年を迎えつつある主人公。彼の意識は子供時代へと向けられる。

    それは美しい言葉で語られる元風景。

    思い出や後悔に立ち返ることがこれからの生に意味を与えることになるのかもしれません。

    現在と過去をさ迷うようで読みにくいのだけれど爽やかな読後を得られるブッカー賞。
    全てはあまりに美しいラスト30ページに。

  • こんな感想で悪いんですが、正直微妙です。

    本書は世界的に権威あるブッカー賞を2005年に受賞された作品なんですが・・・。
    なんていうか比喩表現がやたら多いし、会話が少なくほぼ主人公の細かすぎる独白が大半を占めているし、時間軸が飛び飛びで展開されてるんで、いまいち話の内容がつかみにくい。

    幼少時代、海辺沿いに住んでいたころの双子の姉との不器用な恋と、その母親にあこがれる未熟なエロティズムの発露。
    妻との出会いと、病に倒れるまでの感傷的な思い出。
    晩年を迎えた男性の、人生の機微を綴った回顧録なんだとは思うんだけど、いまいちシンクロしにくい。

    読者の問題か、国柄の違いか、翻訳の問題かも定かではない。

    権威ある賞を受賞したからといって、絶対おもしろいとは限りませんね。

  • 後回しにしたりしてすごく時間をかけてやっと読めた本です。そのせいか最後まで入り込めなかったです。が、少女クロエがどうなるのか気になって何とか読みきりました。ラスト数ページで思いがけない展開がありました。最近手に取るクレストブックスは老齢に達した主人公(男性)が回想する、というものばかりです、なぜか。もう少し年を重ねてから読むといいかもしれないです。

  • 妻の死による動揺がおさまらない主人公マックスの想念の赴くまま、私たち読者もまた、彼の過去へ、現在へと運ばれていく。
    少年の日々を辿っていたかと思うと、いつの間にか現在の語りのなかにいる、といった具合に。
    まるで波にもまれているような読み心地。

    逝く者は、逝くべき時がくれば逝ってしまう。後をも見ずに。

      The Sea by John Banville

  • よみかけ!リベンジしなきゃ!

  • 時間が交差する素晴らしい文学。だんだんとわかってくる仕掛けに満ちている。

  • 素晴らしいの一言。
    批評、作成中。

  • 読みたい!

  • 全ての文章が美し過ぎる。すみずみまで凝っていて・・・
    苦笑いてゆうか微かに痒くなるてゆうか。

    手練れってゆうんですかね? 作家に愛される作家だそうで。。

    全編に漂う英国の田舎の海岸の荒涼とした雰囲気はたまらなくすき。

    陰気なおっさんの暗〜い思い出が語られつつ。。
    彼の最期がゆっくりとしかし確実に近づきつつある現在が進行してゆく。。
    みたいな話なのに全編に漂う美しさに癒されますなあ


    古びた猫足バスタブに浸かって曇りの日に、一日かけて読み耽りたいかな

  • <a href="http://manderin.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_acd3.html">ブログ「Cafe Manderin」の該当エントリを参照してください。</a>

  • 死を迎えた男が懐かしい海辺で少年時代を回想する物語。
    多忙の毎日を過ごすうちに記憶の裏側に置き忘れた日々。全く後悔がない人生などあり得ないと思いますが、人生の終末に記憶の外側にうち捨ててきた日々のなかにあるどうしようもない後悔に、少しでもケリをつけてあげる、それができればその人生は、後悔に顔を背けたままであるよりもずっと何ものかであると思います。・・・実際には難しいですけどね。

    ▲忘れてしまったキスもたくさんあるのだろうが、いまでもよく覚えているキスがある。それが初めてのキスだったかどうかはわからないが。あのころは、キスがとても重要だった。キスがありとあらゆるものを動きださせた。キスは照明弾であり、爆竹や、噴水や、噴き上げる間欠泉であり、ときには大当たりのくじだった。▲

    読了 2007/9/15

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