奪い尽くされ、焼き尽くされ (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : Wells Tower  藤井 光 
  • 新潮社 (2010年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900847

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奪い尽くされ、焼き尽くされ (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • 冴えない人生が、素晴らしい出会いや機会を得て一発逆転サヨナラホームラン、一躍ヒーローインタビューなんてものの主役に。皆から羨望の眼差しが注がれるようになる……そんな事を夢見ているなら甘すぎる。そんなことは絶対ない。あるわけない。ということをしみじみと思い知らされる一冊。

    全九篇の短篇の主人公たちは、美しいいとこに、意地悪な継父に、老いた実父に、自分がかつて踏みにじった者達によって生活も人生も踏みにじられ蹂躙され、そこではわずかな希望も瞬く間に焼き尽くされて灰になる。
    状況はなにひとつ良くならず、望みはかなわず、期待は外れ、救われることはない。
    その有り様を著者は淡々と、しかし精緻な文章で描き出す。
    荒涼とした登場人物たちの心象風景から思わず目を背けたくなるのは、これがどこにでもある『普通の人生』だからなのか。

    この本をうかつに読んではいけない。精神を擦り剥いてしまうから。皮膚がそげて、血がにじむ、あのひりひりとした痛みは、誰でもあまり気分が良いものではないだろう。

  • すばらしく巧い短編の書き手。人物像も世界観も自在に操り、端正な筋の運びでラストに余韻を残す。人生のささやかな躓きと鬱屈、この系統は現代作家に多いなとも思いつつだったが、ラストの表題作には意表を突かれた。

  • デビュー短編集らしく色んな雰囲気の作品があるが、社会の吹き溜まりのような場所で上手くいかずにもがいている普通の人々をユーモアある視点で描くレイモンド・カーヴァーのような感じの作品がいくつかあり、とても良かった。文体も綺麗なわけではなく、どちらかといえばワイルドなところがデニス・ジョンソンを彷彿とさせる。

  • こういう作品を読むと不安に、というかしんどくなる。

    「現代のアメリカの現実を書ききった作品」とされる2009年の著者デビュー作。

    『BRUTUS』2014.9.15号特集「強い酒、考える酒。」のなかの「酒と本」のなかに、この短編集に収録されている『茶色い海岸』の一部が引用されていたので、興味を引かれて図書館で借りて読んだもの。

  • 第1回(2011年度)受賞作 海外編 第9位

  • 短編小説 を集めたもの。 21世紀の米国! の現実というふれこみ通り、ものすごく、日本とは違う、ちょっと怖い、米国の現実が描写されている。一番気に入ったのは、やはり最後の、「奪い尽くされ、焼き尽くされ」 かなぁ。奪い尽くし、焼き尽くして得たものは、第三者から必ず狙われている。 だから、奪い続けるか、常に守りを硬くするしかない。   
    日本の脳天気なのんびり主義の ありがたさ! を、 改めて実感できるかも。 

    短編なので、ものすごく読みやすかった。 続編が読みたいなぁ、

  • 思ってたほど救いのない内容でもなかった。中盤の「下り坂」「ヒョウ」「目に映るドア」がお気に入り。
    カーヴァーの作品よりも、なんだか乾いてるけど生命力が強そうな登場人物が多い気がする。
    この訳者の訳で他の作品も読んでみたい。

  •  表題の作品は、ヴァイキングを主人公とした短編である。
     生きるために暴力を他者に対して振るわなければならない。その力を行使するときにはためらないはない。しかし自分もまたいつか、誰かから暴力を受ける未来を確信し、その日が来ることをただ待ち続ける。そんな暗い未来の待ち方が描かれている。

  • とことんまで救いがない。
    でもおもしろい。

  • 「失われた夢。燃え残った願い。21世紀のアメリカン・ショート・ストーリーズ」などという帯を目にすれば、どうしたってチャールズ・バクスターやジョン・チーヴァーやレイモンド・カーヴァーを連想し、比較してしまうというもの。
    いわゆる「いい話」でなく、答えも救いもないままぽんと放り出されるような、結末とも言えない結末は、特にレイモンド・カーヴァーを連想せずにいられない。

    かつて川本三郎さんが、「フィールド・オブ・イノセンス—アメリカ文学の風景」 で語っていた時のアメリカの風景とは、まただいぶ違ってきているに違いないが、川本さんが「サバービアの憂鬱」と名付けた、アメリカ郊外住宅地のミドルクラスの一見幸福な底に沈んでいる孤独や不安、の末裔ではあろう。
    ありふれた日常の中の不安とか孤独とか焦燥とか翳りとか疎外感とか、と、くくることは出来る。それに加えて、寂寥の中に妙なユーモアと皮肉っぽさがあって、思わずくすりと笑わされてしまったりもする。

    ありふれた日常とその寂寥感、と言ってしまえばそれまでかもしれないけれど、そんな中にもあるユーモアや皮肉っぽさが、今日的なのではないだろうか。

  • 文字をたどる。少しずつその速度が速くなる。文字を追いかけるように。そして追い越してゆく。

    本は頭の中で音読しながら読むのがいつものことなのだけれど。狭い山あいの道で大型トラックの後ろについてしまった時のような心持が、どうしても読む速度を上げさせ文字を音に変換させる動きを追い抜いて、頭の中を沈黙させる。

    先の見通せない曲がりくねった道だというのに、さらにアクセルを踏み込もうとする筋肉の緊張を緩めることができない。一気に字面だけを滑るように頁を繰ってしまう。

    それは決して心地より道行きではない。それだのに体中をアドレナリンが駆け巡るような状態に保っているのは、大型トラックの吐き出す真っ黒な排気ガスの臭さのせいだろうか。それとも常に視界をいじわるく遮る大型車の陰のせいか。そのどちらの向こう側にも、トラックの運転台に座る顔の見えない男に対する訝しさが、影響しているように思う。

    自分でも掴みかねる何かどす黒い感情が、早くこの薄暗い陰から抜け出て、全てを後方へ振り切りたいと思わせる。怒りが、蔑みが、拒絶が、感情を凍りつかせ文字を音にすることを拒む。ここに光はない。

  • 短篇集。9篇収録。

    ウェルズ・タワーは私たちをどこに連れて行こうとしているのだろうか。
    年齢も性別も様々な人々の物語は、そういうことって、あるある、わかるわかる、と全面的に共感できる物語というわけでもなく、かといってまったくなじみのない未知の世界が描かれているというわけでもない。
    主人公の多くは家庭生活や仕事上の問題を抱えているのだけれど、事態の好転への強い希望を抱いているふうには見えないし、絶望の淵に沈み込んでいくふうでもない。人生の理不尽さや不条理を嘆いていたりもしない。せいぜい毒づくくらい。
    そういう人々を描くタワーのまなざしには冷厳さを感じる。
    一瞬の高揚はあったとしても、たいていの人々の人生って、こういうふうに流れていくもんじゃないの、と。

    希望に根ざす明るさはないけれど、陰鬱さもない。息苦しさがあるでもない、なんとも不思議な読み心地。
    不思議といえば、所々に顔を出す比喩も不思議。装飾用のリンパ炎とか、錠剤の目薬とか。つまづきやすいようにわざと置かれた石っころみたい。

    押し付けがましい隣人も、時と場合によってはそう悪いものでもないな、と思わせる「茶色い海岸」、年寄りは大人しくしていなさい、といわんばかりの娘の管理をさりげなく受け流している老人を描いた「目に映るドア」、「奪い尽くされ、焼き尽くされ」がよかった。
    この表題作は、ドラゴンの群れとかヒュドラの襲来、呪術師までも登場させながらあまり本筋には絡んでいない点だとか、バーサーカーのくせに仲間の反対にあってあっさり襲撃を取りやめる族長とか、まるで冗談みたいな部分と、血みどろの襲撃場面のリアルさとのギャップがなんともいえない。

      Everything Ravaged, Everything Burned by Wells Tower

  • 本の題名になっている「奪い尽くされ、焼き尽くされ」は、登場人物たちの取れる選択肢の少なさが面白かった。長編バージョンがあったら読みたい。

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奪い尽くされ、焼き尽くされ (新潮クレスト・ブックス)の作品紹介

夏休みを持てあます少女。認知症の父と過ごす中年男。移動遊園地に集う人々。暴虐の限りを尽くすヴァイキングの男たち-。多彩な視点と鮮烈な語りが、人々の静かな絶望、消えずに燃え残った願い、湧き出す暴力の気配を描き出す。アメリカン・ドリームなき21世紀のアメリカ人の姿とその内面を、絶妙の心理描写と独特のユーモアで浮き彫りにする全9篇。ニューヨーク・タイムズ紙、タイム誌ほか各紙誌が絶賛した驚異の新人によるデビュー短篇集。

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