黙祷の時間 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : 松永美穂 
  • 新潮社 (2010年8月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900861

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黙祷の時間 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • 少年と美しい女教師との淡い恋と、その終わりを描いたとても美しい作品です。物語は主人公の少年が、亡くなった先生のことを回想する形で進みます。この描写が絶妙で、まるで美しい絵画や映画を見ているような気分になりました。

  • 大切な人を失うとその人と過ごした思い出の数々が、自然と記憶の中で再現されることになる。そして描写は時に生々しく、時に不確かになる。それが思い込みの強い思春期の青年のものとなればなおさらだろう。

    特筆すべきはレンツのペンにより描写される、在りし日のハンブルクという街と海、そしてそこで生きる人々の姿そのものだ。港を行き交う大小様々な船、漁師や整備士たち。人々が思い思いに過ごす海辺の風景。一瞬ごとに形を変える波。そのどれもをレンツは最低限の静謐な筆致で描ききっている。

    荒れ狂う海でも遠い岸辺に建つ家の中から窓を通して眺めたとしたら静謐な風景に見えるのでないか?そんな距離感を文書から感じた。

  • とある先生の学園追悼式。
    青年は彼女との日々に思いをはせる。
    それは大人への一歩とほろ苦さと。

    平船から見守るラストシーン、
    きっと水面はとても静か。

  • 男子高校生が恋をしたのは年上の英語教師。
    海沿いの町の夏。「ついこの間のことを回想する」形で語られるのは、輝く思い出とまだ鮮度を失っていない感情。

    爽やかな潮風が、ひんやりとした哀しみを含みつつ、全編を通して吹き渡る、そんな恋愛小説です。

  • 一番印象に残ったのは、本筋とは関係のない箇所なのです…ごめんなさい。
    イギリス人の英語教師が舞台であるドイツの高校に赴任し、生徒達にイギリスで思いつくことを言わせる場面。
    主人公の少年は、他の英語教師から「自分の国の印象を他の国の人間に聞きたがるのはドイツ人だけよ」と言われたことを思い出し、意外に思う、というところなのだけれど、実を言うと私はそれは日本人の特性ではないかと思っていたのでドイツとイギリスよお前もかと更に意外に思ったのだった。
    来日したミュージシャン(某兄弟のどちらかだった気がするのだけど、検索しても出て来なかったので違うかな…)が、日本の好きなところだの好きな食べ物だの日本のファンの印象だのを聞かれ続けるのにうんざりして、そんなこと聞くのは日本だけだぞ!とキレたという話を聞いたことがあって、そういうので自国尊心を高めようとするのはいかがなものか恥ずかしい…と思っていたのだ。
    結構みんなそうなのね…そりゃあそうだよね、大概の人は自分の国が広く知られていて人気があると思いたいよね…。

    小説自体は、とても丁寧で静かな作品だった。
    女教師に恋をした高校生の一夏の物語。
    タイトルから察せられる通り、その夏は悲しい結末を迎えてしまう。
    主人公の心情と美しい海の傍の町の情景が過不足なく描かれていたのが良かった。
    ただねー…男の夢物語だなーと、読みながら結構冷めてしまった。
    作者はそこまで冷静に考察した上で書いているのもわかったけれど。

  • 丁度3年前に購入した
    高校生と年上の女性教師のひと夏の「別れ」

    男の子がひとり思い出しながら語る内容なので
    どこかに美化したり、一方的な解釈が入り込むのではないか
    という懸念と疑念はあるが、
    ひたすら淡々と自分が知ることができなかった
    彼女の姿や気持ちの動きも見つめながら
    まだ喪失の痛みを整理できていない
    自分の心を落ち着かせようと
    彼女の姿を思い出し、彼女のいない世界を
    受け入れようとしている感じ。

    死別でなくても、本当は「失恋レストラン」開店直後は
    喪失感、虚無感、失望、困惑にあふれ
    時に怒りと憎しみを取り除けたら
    こんな世界なのだろうけど、それを短くも美しい物語として
    表し残せるかが凡人と作家の違い。

    筆者が充分に老人なので、主人公の老人が
    遠い日を思い出して語る、なんて方法もあるのでしょうが
    あえて現在形なのかな。

  • 事故で亡くなった女性英語教師の追悼式から始まる教師と18歳の男子生徒の秘められた恋物語。
    全てが少年視点の思い出や現状で書かれている分、少年独特の思い込みや純粋さを含んだ強い想いや喪失の空虚さが切なかったです。

    驚きなのが著者が82歳だと言うことでした。作者の実年齢など関係無く、抱く精神の瑞々しさで作品は作られているのだ、と思ったのでした。

  • 談話室にてオススメして頂いた作品。
    静かな物語だな、と思った。
    映像としてのイメージが強く、まだ見ぬ外国の海辺の風景が浮かび、波の音がひかえめに聴こえてきそうな気さえする。
    そしてその中で主人公の少年の密やかな恋心が沸々と沸いていた。
    まさに、ひと夏の恋という感じ。
    82歳の作者がいかにしてこの物語を書いたのだろう。不思議だなあ。

  • 現代ドイツを代表する作家ジークフリート・レンツが82歳で発表した18歳の男子高校生のラブストーリー。
    新しい作品なのに、なつかしい感じがするのは作者の年齢?

  • 先生と男子高校生の恋愛を描いたある意味純文学。
    82歳のレンツが書いたということを考えると納得、何となく、朗読者を思い出す物語だった。

  • 若さゆえの思いあがりみたいなもの。

  • 高校時代の先生との初恋の思い出。
    舞台が、北海を前にした港町で、海の匂いのするような雰囲気が伝わってくる。先生が初体験の相手になるのだが、その手の物語と違って直接的な描写は一切なし。
    純文学作品。「ベニスに死す」みたいなクオリティ。

  • 著者のレンツはなんと82歳でこの悲しくもみずみずしい物語を書いた。
    小説を書くということは合理性を超越することなのだと思い知らされる。

  • 現代ドイツ文学を代表する作家である著者が、2008年に82歳で発表した沈痛なラブ・ストーリー。18歳の男子高校生のひと夏の恋を、回想形式で瑞々しく描き出している。年齢を感じさせない著者の感受性と創作力に恐れ入る。舞台は著者の住むハンブルグ近郊と思われる北ドイツの海辺の町。今しもその町の高校の講堂で、亡くなった教師の追悼式が行われんとしている所から話が始まる。正面に飾られている英語教師だったベーターゼン先生の美しい遺影を前に、生徒だったクリスティアンの脳裏をさまざまな思い出がよぎっていく、、、

  • 老境にあってもリリカルな詩は詠える
    憧憬を込めたのではなく
    まさに著者の現在を綴ったものである筈だ

  • 十代の少年が、先生と恋愛関係になる。現代ならスキャンダルだろう。この本の良いところは、その当時、少年が判っていたことだけが書かれているところだと思う。余計な書き込みが無い分、鮮やかで薄汚れていない印象となった。作者は80代の巨匠なのに、少年のようだ。

  • ギムナジウムの女性英語教師と生徒のひと夏の恋愛と別離。
    淡々と描かれていたけれど、もどかしさや嫉妬を感じる
    少年の心がみずみずしくて素晴らしいと思った。
    とても静かで上質な物語。装丁も美しい。
    ちょっと『朗読者』を思い出した。

  • レンツの本は、遺失物管理所に続いて二冊目。作者の年で書かれたとはとても思えない表現力とせつない話で、人は幾つになっても恋心を忘れずに居続けられるんだなぁと感心させられた一冊でした。

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黙祷の時間 (新潮クレスト・ブックス)の作品紹介

ギムナジウムの講堂で行われている追悼式。飾られた遺影の中には、美しく、生徒にも人気の英語教師シュテラの微笑があった。悲しみに包まれた空間で、一人特別な想いを抱いて立ちつくす高校生クリスティアンの胸に、ひと夏の愛の記憶が甦る…港、船、海の風景に彩られながら回想を紡いでゆく、ドイツの巨匠レンツによる上品で清らかな恋愛小説。

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