黙祷の時間 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900861

感想・レビュー・書評

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  • 教師と生徒との恋。そして突然断ち切られた時間。共に過ごした日々が蘇り過ごすはずだった未来が夢となる。海辺を舞台に詩のような世界が広がり、砕ける。哀しみが静かに漂う物語。

  • 名前だけ知っている作家の初読み作品だけど、初読みにはふさわしくなかったかも。シュテラは随分迂闊な気がする。ドイツは教師と生徒の恋は禁断じゃないのかな。クリスティアンを弄んでいる風でもあり、内心を抑えている風でもあり、謎のファムファタール、シュテラ。この名前は英語読みだとステラ?恋を回想する場に追悼式を選ぶってなかなかに切ない。

  • とある先生の学園追悼式。
    青年は彼女との日々に思いをはせる。
    それは大人への一歩とほろ苦さと。

    平船から見守るラストシーン、
    きっと水面はとても静か。

  • 一番印象に残ったのは、本筋とは関係のない箇所なのです…ごめんなさい。
    イギリス人の英語教師が舞台であるドイツの高校に赴任し、生徒達にイギリスで思いつくことを言わせる場面。
    主人公の少年は、他の英語教師から「自分の国の印象を他の国の人間に聞きたがるのはドイツ人だけよ」と言われたことを思い出し、意外に思う、というところなのだけれど、実を言うと私はそれは日本人の特性ではないかと思っていたのでドイツとイギリスよお前もかと更に意外に思ったのだった。
    来日したミュージシャン(某兄弟のどちらかだった気がするのだけど、検索しても出て来なかったので違うかな…)が、日本の好きなところだの好きな食べ物だの日本のファンの印象だのを聞かれ続けるのにうんざりして、そんなこと聞くのは日本だけだぞ!とキレたという話を聞いたことがあって、そういうので自国尊心を高めようとするのはいかがなものか恥ずかしい…と思っていたのだ。
    結構みんなそうなのね…そりゃあそうだよね、大概の人は自分の国が広く知られていて人気があると思いたいよね…。

    小説自体は、とても丁寧で静かな作品だった。
    女教師に恋をした高校生の一夏の物語。
    タイトルから察せられる通り、その夏は悲しい結末を迎えてしまう。
    主人公の心情と美しい海の傍の町の情景が過不足なく描かれていたのが良かった。
    ただねー…男の夢物語だなーと、読みながら結構冷めてしまった。
    作者はそこまで冷静に考察した上で書いているのもわかったけれど。

  • 丁度3年前に購入した
    高校生と年上の女性教師のひと夏の「別れ」

    男の子がひとり思い出しながら語る内容なので
    どこかに美化したり、一方的な解釈が入り込むのではないか
    という懸念と疑念はあるが、
    ひたすら淡々と自分が知ることができなかった
    彼女の姿や気持ちの動きも見つめながら
    まだ喪失の痛みを整理できていない
    自分の心を落ち着かせようと
    彼女の姿を思い出し、彼女のいない世界を
    受け入れようとしている感じ。

    死別でなくても、本当は「失恋レストラン」開店直後は
    喪失感、虚無感、失望、困惑にあふれ
    時に怒りと憎しみを取り除けたら
    こんな世界なのだろうけど、それを短くも美しい物語として
    表し残せるかが凡人と作家の違い。

    筆者が充分に老人なので、主人公の老人が
    遠い日を思い出して語る、なんて方法もあるのでしょうが
    あえて現在形なのかな。

  • 事故で亡くなった女性英語教師の追悼式から始まる教師と18歳の男子生徒の秘められた恋物語。
    全てが少年視点の思い出や現状で書かれている分、少年独特の思い込みや純粋さを含んだ強い想いや喪失の空虚さが切なかったです。

    驚きなのが著者が82歳だと言うことでした。作者の実年齢など関係無く、抱く精神の瑞々しさで作品は作られているのだ、と思ったのでした。

  • 談話室にてオススメして頂いた作品。
    静かな物語だな、と思った。
    映像としてのイメージが強く、まだ見ぬ外国の海辺の風景が浮かび、波の音がひかえめに聴こえてきそうな気さえする。
    そしてその中で主人公の少年の密やかな恋心が沸々と沸いていた。
    まさに、ひと夏の恋という感じ。
    82歳の作者がいかにしてこの物語を書いたのだろう。不思議だなあ。

  • 先生と男子高校生の恋愛を描いたある意味純文学。
    82歳のレンツが書いたということを考えると納得、何となく、朗読者を思い出す物語だった。

  • 著者のレンツはなんと82歳でこの悲しくもみずみずしい物語を書いた。
    小説を書くということは合理性を超越することなのだと思い知らされる。

  • ギムナジウムの女性英語教師と生徒のひと夏の恋愛と別離。
    淡々と描かれていたけれど、もどかしさや嫉妬を感じる
    少年の心がみずみずしくて素晴らしいと思った。
    とても静かで上質な物語。装丁も美しい。
    ちょっと『朗読者』を思い出した。

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