黙祷の時間 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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本棚登録 : 149
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900861

作品紹介・あらすじ

ギムナジウムの講堂で行われている追悼式。飾られた遺影の中には、美しく、生徒にも人気の英語教師シュテラの微笑があった。悲しみに包まれた空間で、一人特別な想いを抱いて立ちつくす高校生クリスティアンの胸に、ひと夏の愛の記憶が甦る…港、船、海の風景に彩られながら回想を紡いでゆく、ドイツの巨匠レンツによる上品で清らかな恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • とても静かで美しい小説だった。18歳の少年のひと夏の歳上の女性との思い出。美しくないわけがない。何も語られないことも多く、その空白がこの小説の秘密めいた雰囲気をさらに増している。読んで良かった。

  • 少年と美しい女教師との淡い恋と、その終わりを描いたとても美しい作品です。物語は主人公の少年が、亡くなった先生のことを回想する形で進みます。この描写が絶妙で、まるで美しい絵画や映画を見ているような気分になりました。

  • 胸にゆっくり残る余韻。
    辛くて悲しくて爽やかな恋がずっと心に残っている。とても優しい気持ちになれた。

  • 教師と生徒との恋。そして突然断ち切られた時間。共に過ごした日々が蘇り過ごすはずだった未来が夢となる。海辺を舞台に詩のような世界が広がり、砕ける。哀しみが静かに漂う物語。

  • 名前だけ知っている作家の初読み作品だけど、初読みにはふさわしくなかったかも。シュテラは随分迂闊な気がする。ドイツは教師と生徒の恋は禁断じゃないのかな。クリスティアンを弄んでいる風でもあり、内心を抑えている風でもあり、謎のファムファタール、シュテラ。この名前は英語読みだとステラ?恋を回想する場に追悼式を選ぶってなかなかに切ない。

  • 表紙のような暖かい海と砂浜がずっと広がっているような素敵な雰囲気。
    ドイツのものとかほとんど読んだこと無かったので、他のも読んでみよっと。

  • 大切な人を失うとその人と過ごした思い出の数々が、自然と記憶の中で再現されることになる。そして描写は時に生々しく、時に不確かになる。それが思い込みの強い思春期の青年のものとなればなおさらだろう。

    特筆すべきはレンツのペンにより描写される、在りし日のハンブルクという街と海、そしてそこで生きる人々の姿そのものだ。港を行き交う大小様々な船、漁師や整備士たち。人々が思い思いに過ごす海辺の風景。一瞬ごとに形を変える波。そのどれもをレンツは最低限の静謐な筆致で描ききっている。

    荒れ狂う海でも遠い岸辺に建つ家の中から窓を通して眺めたとしたら静謐な風景に見えるのでないか?そんな距離感を文書から感じた。

  • とある先生の学園追悼式。
    青年は彼女との日々に思いをはせる。
    それは大人への一歩とほろ苦さと。

    平船から見守るラストシーン、
    きっと水面はとても静か。

  • 男子高校生が恋をしたのは年上の英語教師。
    海沿いの町の夏。「ついこの間のことを回想する」形で語られるのは、輝く思い出とまだ鮮度を失っていない感情。

    爽やかな潮風が、ひんやりとした哀しみを含みつつ、全編を通して吹き渡る、そんな恋愛小説です。

  • 一番印象に残ったのは、本筋とは関係のない箇所なのです…ごめんなさい。
    イギリス人の英語教師が舞台であるドイツの高校に赴任し、生徒達にイギリスで思いつくことを言わせる場面。
    主人公の少年は、他の英語教師から「自分の国の印象を他の国の人間に聞きたがるのはドイツ人だけよ」と言われたことを思い出し、意外に思う、というところなのだけれど、実を言うと私はそれは日本人の特性ではないかと思っていたのでドイツとイギリスよお前もかと更に意外に思ったのだった。
    来日したミュージシャン(某兄弟のどちらかだった気がするのだけど、検索しても出て来なかったので違うかな…)が、日本の好きなところだの好きな食べ物だの日本のファンの印象だのを聞かれ続けるのにうんざりして、そんなこと聞くのは日本だけだぞ!とキレたという話を聞いたことがあって、そういうので自国尊心を高めようとするのはいかがなものか恥ずかしい…と思っていたのだ。
    結構みんなそうなのね…そりゃあそうだよね、大概の人は自分の国が広く知られていて人気があると思いたいよね…。

    小説自体は、とても丁寧で静かな作品だった。
    女教師に恋をした高校生の一夏の物語。
    タイトルから察せられる通り、その夏は悲しい結末を迎えてしまう。
    主人公の心情と美しい海の傍の町の情景が過不足なく描かれていたのが良かった。
    ただねー…男の夢物語だなーと、読みながら結構冷めてしまった。
    作者はそこまで冷静に考察した上で書いているのもわかったけれど。

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