オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : Junot Diaz  都甲 幸治  久保 尚美 
  • 新潮社 (2011年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900892

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

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  • 主人公のオスカーは、『指輪物語』とSF小説、マーベル・コミックス、日本のアニメをこよなく愛するデブのオタク。当然ながら女の子にはまったくモテないが、本人の中には、愛を求めてやまないドミニカ男の血が脈打っているのだ!かくして、恋に落ちてはフラれて落ち込むことをくりかえすオスカーの人生を、姉のロラや語り手のユニオールは、はらはらしつつ見守ることになる。
    これだけなら、オフビートでちょっと切ない青春小説にしあがっていたことだろう。だが、登場人物たちが共有するドミニカのルーツには、より暗い側面がある。ユニオール言うところのフク、カリブ海の呪いが。それはまるで、トルヒーヨ以降、ドミニカ人の愛とセックスは無垢のままではありえず、政治と暴力がつきまとうことになってしまったかのようだ。超自然的なほどの絶対的権力をふるう独裁者、世代が下り、場所がアメリカに移っても子孫たちを追いかけてくる呪い・・・これではまるで、オスカーが夢中になるファンタジーかSFマンガみたいではないか。
    国中の女たちをわがものとするために、その父親や夫たちをサメのプールに投げ込んだというトルヒーヨ、独裁者に美しい娘をさしだすことを拒んだために一瞬にして破滅したアベラードの、ファンタジー小説めいたエピソードから始まる一家のサーガに低い旋律を添えるのは、ラ・インカ、ベラ、ロラという3代にわたる女たちだ。主要な産物は売春婦だと言われるドミニカで、セクシーな身体をもつ女の子たちは、自分の身体を武器に自由を手にするつもりで利用され、傷つき、ときに生命の危機にさらされ、そんな娘たちの運命を知りぬいている母親たちは、娘たちを守ろうとしながらも支配し、憎みあい、愛しあうのだ。
    こうして、アメリカのニュージャージー州で育ち、アメリカ国籍をもつベラの子どもたちのひとりは、あまりにも冷酷で強靭な母親に押しつぶされながら必死にもがき、もうひとりは、まるで超自然的な何かに導かれたように、ひきこもりのオタク生活から命をかけた愛へと跳躍し、サトウキビ畑へと消え、母親とは違って、二度と還らない。
    読み手が理解しようがしまいがおかまいなく吐き出されるオタク・ワードとスペイン語をちりばめた饒舌にして思慮深い文章は、実に圧倒的なパワーで、ドミニカ移民の子どもたちをとらえつづける、個人と歴史をつなぐ大きな力を示している。
    あとがきによれば、ジュノ・ディアスはこの語りの形式にたどりつくまでに11年をかけたとか。それだけの執念とみなぎるパワー、切実さを感じる傑作だ。

  • カバーに書いてある通り、南米文学の豊穣さ・マジックリアリズムと、アニメ・ゲーム・マンガなどのオタクnerdが激突している。びっくりする面白さ!リョサの「チボの狂宴」と併せて読むと面白さ倍増。

  • 私に分かるかな~と思いつつ読み始めたけど、登場人物たちの凄まじい人生にからめとられてしまった。たくさんある注釈は分からんことばかりだが、それでも充分に魅力的だ。悲惨な出来事だらけなのに、たくましく生き抜くドミニカの人々の力強さ。一見何の強さも持ってなさそうなオスカーが最後にやらかしたことに心打たれた。

  • 評判通り、すごくおもしろかった!
    物悲しいけど、どこか少しだけ温かい気持ちになってほろりとしてしまう。
    ほんとに凄まじい家族の歴史に触れて、生きる意味ってなんだろうと久しぶりに改めて考えさせられる。それから、歴史を自らの手で、意志で語る意味も。

  • 小説を読んだあと、こんな気分になったことはない。ひとこと、疲れた。どっぷり、疲れた。内容が濃かった。濃すぎた。悲惨だけどどこかおかしみもあって、感情をゆっさゆっさと揺さぶられた。そんな高ぶった気持を抑えるかのごとく、ラストはなんか、かなしくて。そしてなぜか、面白くてガシガシ読んでたはずなのに、なかなか進まなかった。脚注、読み切れず…。将来、息子に読ませたい。これが面白いと思える男になってほしい。

  • 本書の本質はあらゆる権威への反抗にある。それはマッチョで父性主義なアメリカ的価値観であり、英語一辺倒な活字文化であり、聖書や歴史からの引用が持て囃され先人がのさばる文学界であり、家族や両親という血縁、そしてそこから遡る血の輪廻であり、ドミニカ共和国に存在した最低最悪な独裁政権に対しての反抗だ。だからこそ主人公はナードで不細工なオタク野郎である必要があり、サブカルもマジックリアリズムも乗り越えて100%のリアリズムに闘いを挑み、残酷なまでの悲劇で結末を迎える。最高だ。笑って泣けるのに勇気の出る、類い稀な本。

  • ジュノ・ディアスの名前は以前から知っていた。デビュー短篇集の『ハイウェイとゴミ溜め』。すごく気になりつつ読み逃しているのだ(絶版)。で、2作目の本作でピュリツァー賞と全米批評家協会賞ダブル受賞っていうんで、ほー、スゴイねと期待して読み始めた。

    うん、面白かった。
    でも“まったく新しいアメリカ文学”かどうかは疑問だなぁ(笑)
    英語圏でもスペイン語圏でもない日本で、日本語に翻訳されたものを読む時点で、“英語とスペイン語が激突する新しさ”は堪能できないわけだし、黒船来航以来、外国語と日本語の混ぜ合わせに慣れている日本人からしたら、英語とスペイン語がミックスされてるのがそんな新しいかっていう…


    独裁政権下のドミニカで、悲劇と不運に見舞われた一家。世代を経てもその呪いは連綿と続いていく——のわりに、あんまり広がりを感じないんだなぁ。
    独裁政権下でのズッシリとした家族の物語だと、マルケスをはじめ、すでに先逹がいる。だから全然ドミニカ男らしくないヲタクを主人公にして、情報過剰投入したのかなと勘ぐってしまう。
    正直、主人公が最後に想いを遂げたゆわれても、果たしてそれは愛だったんでしょうか本当に…というモヤモヤ感が残る。
    面白かったんだけど。

  • これもジャケ買いした1冊。
    予想と違い、歴史的背景の濃い物語だった。
    けっこう下品でヴァイオレンス満載なんだけど、そんなに嫌な気がしないのは、オタク文化、オタク言語で溢れているからだと思う。
    読みにくい部分もあるけど、オタク的比喩がユニークで生々しさを感じさせず、俯瞰的視点で読めた。
    ドミニカ共和国の暗黒時代って凄まじかったってのを知れる作品。

  • すばらしい。
    これを読んで、百年の孤独を読んだときの感動を思い出した。

    解説、背表紙のコメントではしきりにこの小説の新しさを強調しているけど、SFとかRPGなどオタク的要素を取り入れていたとしても南米マジックリアリズムをしっかりと踏襲した純純文学だと思う。

    マコンドの村とパタソン、サントドミンゴが重なったし、デ・レオン家とブエンディーア家がシンクロしました。

    まさにこの小説はデ・レオン家サーガです。

    南米小説が好きな人は是非一読あれ。

  • 誰もが知らず知らずのうちに誰かの歴史を背負っている。

    呪いの女神の足は後ろ向きについている。彼女は常に過去へ向かう。

    今までに知っているどんな物語も、カラブル家の歴史よりは穏やかで上品で礼儀正しかった。

    訳者がオタク用語?に細かく注をつけてくれているけど、なくてもいいんじゃないかな、これ。
    訳者後書きによると、これほど詳しい訳者注をつけているのは今のところ日本語版のみらしい。日本人は凝り性だね、ホントに。

    人と人が関わりを持つようになれば、その関わりはまるで生きもののようだ。ある時は天使のように彼らを守り、またある時は怪物のように食らいつくす。
    人と人をつなぐ引力は生きものなんだ。得体の知れない生きものだ。人が増えるほど複雑に、力強く、手に負えなくなってしまう。

    自分の人生には自分で責任を持つこと。誰もアテにするな。つまりそういうことね。

    この本に出てくる地名の9割は、聞いたことはあるけどこの地球上のどこにあるのかきちんと説明できる自信がない。地味にショックだ。

    シェイクスピアの時代から、いえもっと昔、オイディプスの頃にはもう、先祖から受け継いだ呪いに子どもたちは苦しんでいた。
    一体どういうことなの?呪いを更新して、苦しみの遺産を残すことが人生だとしたら、人間の尊厳や人生の価値や美しさはどこにあるの。
    私たちの祖先は子孫達を愛していなかったの?どうして誰も、その身を挺して全ての呪いを持ち去ってはくれなかったの。
    人に期待するなってコトでしょ。わかってるよ。うん、それに人身御供を求めるのは間違っているよね。

    愛が破滅の呪いを引き寄せた一族。やがては愛が希望を呼び寄せる……はず。

    暴力に晒されて生きている子どもたちがいることを、私は知っている。けれど自分が知っていることを信じ切れずにいるのかもしれない。

    南米って一体どういうところなの。何が起こっているの、この世界で。

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オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)の作品紹介

オスカーはファンタジー小説やロールプレイング・ゲームに夢中のオタク青年。心優しいロマンチストだが、女の子にはまったくモテない。不甲斐ない息子の行く末を心配した母親は彼を祖国ドミニカへ送り込み、彼は自分の一族が「フク」と呼ばれるカリブの呪いに囚われていることを知る。独裁者トルヒーヨの政権下で虐殺された祖父、禁じられた恋によって国を追われた母、母との確執から家をとびだした姉。それぞれにフクをめぐる物語があった-。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞、英米で100万部のベストセラーとなった傑作長篇。

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