終わりの感覚 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900991

感想・レビュー・書評

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  • 作品自体も翻訳もうっとりするくらい素晴らしかった。とくに凡庸な人々の描き方が巧い!主人公はもちろん、息子の賢い友達が自殺しちゃったときの主人公のお母さんの台詞「おまえも頭のいい子だけど、そんなことをするほどよくはないよね?」とかわかりすぎて、ここが個人的クライマックスかと思うほど。「歴史とは勝者の嘘の塊」と言った高校時代の主人公に老先生が返した「敗者の自己欺瞞の塊でもあることを忘れんようにな」という言葉が最後まで読むとすごく深い意味をもって迫ってきた。老境において若き日の自己欺瞞を知りガックリする、そういう意味では哀しい物語かもしれないんだけど、でも爺さんになってもダメなところはダメなまま、周りの人にマイペースでちょっかいを出しつつ、反省しつつ、それでも生きてるその姿になぜか希望すら見出せたり。上下巻とか苦手な私にとっては、この短さでここまで豊かなの、ほんと素晴らしいと思いました。

  • 記憶って自分が生きていくために自分を守るためのものなのか。
    最後タネ明かしがあるけど、あまりに唐突でしばらく理解できなかった。
    読後の後味があまりよろしくない。

  • SL 2018.3.7-2018.3.16

  • 無駄のないストーリーに加えて、裏表紙にもあるアニータ・ブルックナーを思わせる硬筆な筆致。
    これだけで素敵じゃないか!と思わせてくれる。

    本筋からはズレてしまう部分も魅力的だ。
    物語に出てくるビートルズ、ストーンズ、ホリーズ、ドノヴァンetc、リズムに乗り、腰をくねらせダンスを踊る主人公とヒロイン…
    読んでいて思わずニヤリとしてしまった。
    (私は彼らと違い今でも腰をくねらせ踊っているが…)


    いかに私たちの中にある記憶があやふやで自分勝手に捏造されたものなのか。いかに私たちが一つの目線からでしか物事を捉えられず、考えられないか。
    序盤に飄々とした語り口で読者に学生時代の記憶を語る主人公だが、中盤以降次第にその語りもたどたどしくなってくる。しばらくの後に、この主人公が矮小で逃げ腰のいわゆる'信用出来ない語り手'だと気づいた途端に物語がパッと開けた感覚があった。実に英国小説らしい。
    この辺りの手腕はおっ、流石イギリス人小説家の名手だな!と思わせてくれる。
    一冊の本の読了に優に1ヶ月はかかる、実に遅読人間の私には極めて珍しく本書は1日足らずで読み終えることができた。バーンズの文章が魅力的であり、土屋政雄さんによる翻訳も実に見事な出来栄えである。そのお陰なのだろう。

  • 「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」人生の終わりが近付いた頃に読み返したい。イギリスでは映画の公開が始まったばかり。早く観たいな。

  • けっして軽くはない衝撃。なにもかもが主人公トニーのせいじゃないし、ベロニカとエイドリアンが幸せになれなかったのは、エイドリアンが人生を諦めたからだと思う。ふられた男の腹いせに出された手紙が運命をかえたなんて、ずうずうしい。記憶はかけちがいもあるかもしれないけど、これは衝撃だった。うけいれられないひともいるかも。映画化するから見てみたいな。

  • 面白くてつんのめるようにして読んだが、読み終えると、何だこれは…という印象。
    記憶がおぼろ気になり、主観的な過去、自分に語るための過去によって自分の人生を振り返るようになる…。
    身につまされるようでちょっと焦った。
    「血の報酬」って、後から考えれば考えるほど不気味でもあり、また悪いことばかりではなかったのかもしれない、とも思えてくる。
    それぞれの本当のことは、きっとそれぞれにあるのではないかな。
    主人公の目を通して語られると全てが疑わしく見えてしまう。

  • 独りよがりな主人公が平凡な人生や苦い青春を振り返る。
    過去は、誰もが年を経ればそうであるように、鮮明に思い返せるものもあれば、曖昧だったり、忘れてしまったり、都合よく塗り替えられたりしていく。
    思い込みの強さで行動にも移してしまう様や悔恨の思いが皮肉っぽく書かれているけど、少し退屈で下品だと思った。

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