いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)

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制作 : John Banville  村松 潔 
  • 新潮社 (2013年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901059

いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

  • ともかくバンヴィルの装飾的できらびやかな文体が美しい。日本語に移し替えてもその美しさは健在。
    物語のプロット自体はいたって普通だが、彼の小説においては全く問題ではない。バンヴィルは恋い焦がれる思春期の青年の心情をほぼそのままに、文章で表現することに成功している。
    個人的には彼の最高傑作は海へ帰る日だと思うが、間違いなく本作も秀作以上の出来なのは間違いない。

  • メロディはともかく音が美しい、絵のテーマはともかく色が美しい、というような小説。15歳の少年が友人の母親である30代女性と初めての情事を持つ、その思い出を傷害の恋として温める老俳優に、不確かな記憶の輝きともどかしさ、娘を失った悲しみが波のように押し寄せ…というプロットは「普通」。少年と熟女というのは普遍的なテーマだな。男には経験豊かな女性に抱かれる憧れ、女には若い男性に惚れられる喜びがあるのだろう。ラストにもっと以外で残酷な展開があるかと思えば、これも想定内にマイルド。
    しかし、何が素晴らしいって、バンヴィルの文章表現がすごく「心地いい」のだ。それはもう、最近の読書体験で随一の相性の良さ。比喩がぴたりと読書中の感情の流れに沿い、豊かな波となって心を洗ってくれる。翻訳の良さもあるのだろうが、文章の名手だ。この文章のために、他の作品も読みたい。

  • 少年の日の思い出、主人公は友人の美しい母と懇ろになり、思いかけず奔放な大人の女性との関係に溺れる日々。大人になり俳優業を引退した主人公は娘を亡くした経験を持ち、妻との関係も思わしくない。再起に挑戦した映画では、共演者の人気女優が自殺未遂をする。その彼女の提案で娘の死に場所へ旅立つが、それと平行して描かれる、かつての記憶、年上の女性との背徳の日々。さらに自殺未遂をした女優に亡くした娘を重ねることになりえるのか。いにしえの光というタイトルにふさわしく、過去の美しい記憶の光がさすような文章。

  • じつに厭な、けしからん、とんでもない話なので読むのをやめようと思ったけど、最後まで読んでよかった。これは記憶をめぐる物語。ラストの尼僧との会話は完全に三島の『豊穣の海』だと思うのだが、どうなんだろう。著者が書きたいことを書きたいように書き、訳者がそれを訳したいように訳している(そんなこともないんだろうけど)ワイルドなセッション感もあり、規格外の魅力を感じた。

  • ジョン・バンヴィルの最新長編。
    過去と現在が有機的に絡まり合い、不思議な空間を作り出している。一歩間違えば生々しい内容だが、その有機的な絡まりのせいで殆ど生々しさは感じない。
    『無限』はコミカルさも見え隠れしていたが、こちらは『海に帰る日』を思わせる。

  • 新潮クレスト・ブックスからは「海に帰る日」「無限」に続く3冊目。

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    「初老の俳優と若い人気女優の奇妙な逃避行。少年時代の恋の記憶と、命を絶った娘への思いが男を翻弄する。ブッカー賞作家の最新長篇。 」

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いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)の作品紹介

撮影現場から姿を消した人気女優と、あとを追うベテラン俳優。よみがえる禁断の恋の記憶――。最愛の娘を失った老俳優と、今をときめく人気女優の、奇妙な逃避行。その途上で彼の脳裏によみがえるのは、友人の母親との禁断の恋の記憶だった。二人きりで過ごした短い時間があんなにも光に満ちていたのは、なぜだったのか? 数十年の後、その手がかりが不意に明らかになる――。ブッカー賞、カフカ賞受賞作家による最新長篇。

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