- Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105910037
作品紹介・あらすじ
角田光代╳プルースト世界文学最大・最強の長篇小説の画期的〈縮約版〉刊行! 作家志望の「ぼく」が味わう苛烈な恋、そして「時」の不思議――。あまりの長大さと複雑な文体ゆえに、名声ほどには読破する者の少なかった二十世紀小説の代表作が、いま蘇える。現代を代表する小説家と仏文学者のコラボレーションによって、プルーストのエッセンスはそのままに、贅美きわまる日本語でついに読める、読み通せる驚異の縮約版一千枚!
感想・レビュー・書評
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世界的な傑作とされるとともにその長大さでも知られる本作。
一度は触れてみたいと感じながらも書店などに並ぶ背表紙の列に気圧され、一生縁のないものと半ば放棄していたのですが、偶然に「原文にないものは一語も付け加えない」方針で編集され十分の一に切り出された本書を知りました。一冊分の長さで、かつ、超訳されていないものを読めるのであれば、と食指が動きました。
物語としては裕福な家庭に育った主人公とアルベルチーヌの恋愛が大半を占め、序盤には有名なマドレーヌのくだりも訳出されています。
結果として今回の読書では本書の魅力を感じることができたとは言えず、圧縮版である本書であってもかなりいい加減な乱読で読み通すに留まってしまいましたが、「おのぼり観光」的な読書には過ぎないとしても雰囲気と大雑把な流れだけでも掴むためには良いきっかけとなりました。これを機に後日思い返して改めて正式な訳に当たる気になる可能性もあります。
わたしのような読者も対象として想定して企画され、プルーストに触れる機会を与えてくれた本書には感謝しています。 -
長すぎて疲れてしまった。
とだけ読んでいる最中は思っていたが、最後の方でこの小説の意義について思い知らされた。永遠に終わらないのではないかとさえ思わせる比喩の連続、過去と過去の結びつきが現実のもとで幾度と繰り返される場面、物語として本当に成立しているのか首を捻らないわけにはいかなくなるほどに異彩を放つ文体、どれをとっても自分にはまだ到底読むのが早すぎたのではないか、と思うほど難解なものだったが、それもそのはず、この物語の最後で謎が解かれることになった。
最後の文章を読んだ時、自分の人生について考えさせられた。あの時のあの瞬間もどの瞬間も繋がりのあるようでない現実のもとで、頭の中で絶えず繰り返されているがそれは結局自己に対しても他者に対しても意味を与えない妄想に終わることが多く感じられる。だがしかし、その訳の分からない記憶の想起の連続こそが人生において大変な意味を与えることを思い知ったのである。現実の意味について今まで考えていた自分は、過去の延長線上としての現実の意味合いを排除していたことに気づいた。現実は現実のままであるが、それは過去からやってきたものの他でもなく確かな経験が物語る現実であるのだ。そうであるのなら、現実に対してのみ意味を考えるのはいささかお門違いなのかもしれない。そうではなく、一つの人生のうちの一部分、まさにその瞬間として考えなければならない。そう考えさせられる小説であった。 -
何度も挫折した本を一冊にしてしまうなんて!「読んだよ」って胸を張って言えないけれどもでもこの小説にはこんなことが描かれていたのだと全貌を垣間みた気持ちになった。
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作者の感受性に惹きこまれる。
それは独自のようでいて、同時に読者の過去の心象を呼びおかさずにはおかない。
マドレーヌが想起させた多幸感は、人間が、そして自分が存在として本質的に孤独であり、ゆえに限りない自由と可能性に満ちているという直感がもたらしたものではないかな、などと思う。あるいは、多幸感の源は、読み手それぞれに想起させているのかもしれない。
意識と記憶と時の流れが読み手を異境に連れていく。
”ぼくたちが生きているのは、ただたんに前に進む時間軸ではない。今まで過ごしてきたすべてが順不同に混在するなかで生きている。”
人はそれぞれの記憶と習慣の蓄積に基づき意味を見いだし世界を認識していく。マルクスガブリエルの実在論を想起。本作の今日性を見た。
「ソドムとゴモラ」「囚われの女」では、まるで思春期のように想像力に支配される男子の悶々が続く。
この独白は、自己分析に富ながら、極めて狭い自己世界で巡回する。
アルベルチーヌからの独白をぜひ読みたい気持ちになる。
知性への懐疑は、当時の時代背景を感じさせる。
時折、すぽっと話が飛んでいる感覚になるが、
圧縮版とわりきり想像で補い楽しむ。
ぼぉーとしてると言われたらこう返そう。
「失われた時と出会ってたわ」と。 -
いくらなんでも端折りすぎ。
どこまでまとめてるんだろう…なんて思いながら読んでいたら、すごい力業で最後まで詰め込んできてました。すごいワザです。 -
・原作を10分の一程度の長さにして、小説として角田氏が文章を整えたもの。
・時々話が飛ぶような気がして、付いていけない部分がある感じ。特にジルベルトとの経緯。
・読むのは大変だけれどやはり原作を読まないといけないか。
・プルーストの個人的な悩み、特に著作に対する悩みがメインテーマか。 -
令和4年9月の特集「がっつり読書!」
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大著の縮約版。
とは言え、ボリュームあり。
母への想い、祖母の死、そしてアルベルチーヌへの尽きぬ想い。
死と愛と嫉妬と欲望。およそ人間が苦悩する様々なものが連綿と綴られる。
角田さんの訳じゃなかったら、読めたんだろうか。 -
本当は、ちゃんと原文に即したものを読むべきなのだろうが、複数回挫折している自分にとっては1冊でまとまっているものがあるというのは非常にありがたかった。
これを足がかりに改めて読み進めるというのはありなのではなかろうか。 -
古典
一冊って良いな。以前コミック(1巻だけ)読んで、ヴィスコンティのシナリオを読んだのですが、やっぱりちゃんと読もう...
一冊って良いな。以前コミック(1巻だけ)読んで、ヴィスコンティのシナリオを読んだのですが、やっぱりちゃんと読もうと思っています(いつになるかは全く未定)。。。
コメントをありがとうございます。
抄訳ではない点に引かれて読んでみました。正直、良さはイマイチわからず…だったのですが、雰囲気...
コメントをありがとうございます。
抄訳ではない点に引かれて読んでみました。正直、良さはイマイチわからず…だったのですが、雰囲気を覗き見できただけでも有難い一冊でした。