謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106003035

作品紹介・あらすじ

ドストエフスキーを本格的に愉しむために。目立たぬところに仕掛けられた洒落、笑い、語呂合せ、言葉の多義性の遊び、パロディ精神。スリリングに種明かしする作品の舞台裏。

感想・レビュー・書評

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  • 岩波文庫の『罪と罰』の訳者、江川卓さんによる解説本。ドストエフスキー独特の文章の作り方、登場人物の名前にこめられた意味、主人公の思想(=非凡人は既存の法を踏みこえる権利を持つ)と原題『プリストゥプレーニェ・イ・ナカザーニェ』との対応など、日本語に訳された文章を読んでいるだけでは絶対に気づかない目からウロコの知識が盛りだくさんで、ほんとにミステリーのように面白かった。

    ところで『罪と罰』を読んでいる間ずっと気になって仕方なかったのだが、主人公のラスコーリニコフ(ロージャ)という青年、どういうわけかやたらと男に絡まれる男なのである。美男子である彼は女性ウケも良いのだが、それ以上に同性からみて放っておけない存在らしい。マルメラードフは初対面でいきなり「見込まれたと思って話を聞いてくれ」と口説くし、ラズミーヒンは完全にロージャの世話女房と化しているばかりか、「だから僕はこいつが好きなんだ!」と放言する始末。スヴィドリガイロフも「俺たちは同類だろ?」と絡むし、ポルフィーリィまでもが「太陽におなりなさい」と、「You are my sunshine!」と言わんばかりの熱弁をふるうので、私は「うーむ…」と考えこまざるを得なかった。主人公総受けという概念が当時のロシアにあったのか??

    もちろん、こんな考えはロシア正教会においてはシベリア流刑レベルの冒涜だろうと思い、それ以上深く考えないようにして小説を読み終えた。しかし、なんとこの解説本において、訳者自身が同じようなことを書いているのである。「これはポルフィーリィのロージャに対する求愛である」とか、「ロージャに対する思い入れではスヴィドリガイロフとポルフィーリィはほとんどライバル」とか。もちろん思想的な意味においてではあるものの、私は自分の感じ方がさほど的外れではなかったのだと安堵するとともに、「訳者公認?!」という新鮮な驚きも覚えたのだった。

    とりあえず、硬派な読み方もユルい読み方もできるという点で、本書は素晴らしい解説書だと思った。『罪と罰』既読の人で、ミステリー好きの人、ロシア語に興味のある人、BLっぽいのが嫌いじゃない人は、読まなきゃ損な本だと思う。

    • 淳水堂さん
      佐藤史緒さん こんばんは。

      「罪と罰」を数か月前に読み終わったので、
      実に興味深いです!
      ロシア語の意味とかは、解説読まないとわか...
      佐藤史緒さん こんばんは。

      「罪と罰」を数か月前に読み終わったので、
      実に興味深いです!
      ロシア語の意味とかは、解説読まないとわからないですよね。

      しかしロージャもてまくりなのは確かにそうでしたが、
      「クリスチャンって奉仕の精神なんだなあ」「ロシア男の友情は熱い」「街中貧しいと、貧しい同士でお金や情が回ってなんとかなるもんだなあ」などと思っておりましたが、
      そんな「訳者公認」があったとは(笑)

      スヴィドリガイロフ(覚え辛いので私は彼を「ビーフストロガノフさん」と呼んでいるが)に関しては、
      本人は「ほっといてくれ!」と言うが周りが世話を焼きたがるロージャに対し、
      本人は「構ってくれ!」なのに全然誰からも構ってもらえないスヴィドリガイロフという対比なのかと。

      読まなきゃ損っぽいので、いつかぜひ読んでみようと思います!
      2018/12/07
    • 佐藤史緒さん
      淳水堂さん、こんにちは!
      「罪と罰」読み終わったんですね。おつかれさまでした〜。

      そうなんですよ、実はとんでもない訳者公認があるんで...
      淳水堂さん、こんにちは!
      「罪と罰」読み終わったんですね。おつかれさまでした〜。

      そうなんですよ、実はとんでもない訳者公認があるんですよ(笑)
      ロシアの人が普通にそうなのか、ドストエフスキーの特徴なのかは分かりませんが、ドストエフスキー作品にはBLっぽいというだけでなく、今どきの漫画っぽいヤバめのキャラクターが結構いますね。罪と罰もそうですが、カラマーゾフの兄弟もそうなんです。出てくる人みんなどこか壊れてます。

      ビーフストロガノフさんとロージャの対比、面白い発想ですね。彼は究極の「構ってちゃん」ですよね。そんなストロガノフさんとドゥーニャとの絡みは、私の好きなシーンのひとつです。

      機会があればぜひ、こちらの本も読んでみてくださいね
      (╹◡╹)♡

      2018/12/08
  • ロシア語翻訳家江川卓さんによる「罪と罰」解説本。
    ブクログで、他の方々のレビューで興味を持ち読んでみました。
    …しかし私が読んだ版は江川さん訳ではなかった~~( ̄□ ̄;)!!
    https://booklog.jp/item/1/4102010211

    まあ江川さんも工藤さんもドストエフスキー愛は同じように深いだろう (笑)
    元々はロシア語教室で、生徒さんたちから「この○○はどういう意味ですか?」「日付の矛盾がありませんか?」などという質問が来て、江川さんが熱心に調べた結果ということらしい。

    内容は、とにかくドストエフスキーへの想いが熱い、暑い、恋…じゃなくて濃い(笑)
     ドストエフスキーの他の作品と並べての考察、
     本文にははっきりと書かれていない日付を読み取りそれをロシアでの祝日などに当てはめてみる、
     本文から登場人物たちの移動距離や出身地を測ってみる、
     登場人物名をロシア語から日本語訳したうえで登場人物の役割を考える、
    とににかく最初から最後まで凝っているというかこじ付けているというか、本当にここまですべてドストエフスキーが考えていたら凄過ぎる!
    まあ、ある程度は偶然もあっての話半分ですかね。

    とにかく江川さんのドストエフスキー熱を感じられる研究本でした。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/447980

  • ペンキ屋のミコールカ→逃亡派

    リザヴェータ→鞭身派の聖母
    ↓↑
    ソフィア(???)娼婦
               >一緒に救われる
    ラスコーリニコフ殺人者
    (分離派 古 儀 式 派)

    スヴィドリガイロフの名前の由来が知りたい。
    ポルフィーリィさん

    アレクセイは 「守」

  • キリスト教主義も組み込まれる、緻密な設定で罪と罰がかかれたことなどがかかれていた。

  • 原作読んだ直後に、読み解きヲタ 江川卓の謎とき読むの楽しい!

  • おもしろかった。ドスト氏はかなり細かい人だったのだな。「創作ノート」も読んでみたくなった。

  • 【読書その95】江川卓氏による罪と罰の解釈本。正直あまりひびかなかった。

  • 普通に読んだだけでは絶対にわからない『罪と罰』の「謎」を私が大好きなロシア文学者の著者がつまびらかにしてくれる。『罪と罰』未読の人でも十分楽しめる名著。

  • 2013/12/30 読了

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著者プロフィール

1955年5月25日、福島県いわき市に生まれる。高校時代(栃木県作新学院)にノーヒットノーラン12回、145回無失点など数々の記録を達成し注目を集める。法政大学時代は1年生からエースとなり、在学中六大学4連覇を達成。歴代最多記録の17完封、歴代2位の通算47勝をマーク。1979年、巨人入団。在籍9年間で、MVP1回、 最多勝2回、防御率1位1回。1987年の現役引退以降は野球解説者として活動する。2022年に開設したYouTubeチャンネル「江川卓のたかされ」はすでに登録者数が22万人を超えている。

「2023年 『巨人論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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