- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106004650
感想・レビュー・書評
-
読書会か何かで先生の蘊蓄を聞いているようなかんじですかね。読んでからでないとあまり楽しめなさそうな。いろいろ「謎とき」はありますが、意外な「そうだったのか!」的な切り口はそんなにないように思いました。それだけ『白痴』自体の完成度が高い、ということなのかも。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江川卓 「 謎とき 白痴 」
読み方としては 邪道とも思うが、少し読んでみたら 対立軸や宗教性が わかりにくいので、「謎とき」から読む。
「白痴」の宗教的テーマ、読み取る上のキーワード、目の付け所、タイトル意図が よくわかった
主要構想=本当に美しい人を描くこと
*ただ一人 キリストのみ
*ホルバインの絵では キリストは屍として描いている
*ムイシュキン公爵=キリスト=本当に美しい人として描く意図→自然の法則の前の無力さ
「世界を救うのは美」
*ナスターシャは キリスト教的、ロシア的、土着的
*アグラーヤは ギリシャ的(三美神)
*アグラーヤとナスターシャの調和的関係を保つ=ギリシャ神話の美とロシア神話の美の統一→世界を救う美
*ナスターシャの復活=家庭→地獄=トーツキィの囲い者としての日々→トーツキィは死神
白痴
*死の影に彩られている→死にまつわるエピソード
*死の氾濫のなか 「本当に美しい人」の運命
*ムイシュキン「謙虚さは恐ろしい力」
ヨハネ黙示録=生命の源泉とは何か
*著者の深遠な思想を表現するため 黙示録を用いる
*レベジェフが黙示録を語る
*苦よもぎ星=鉄道→鉄道の発展に象徴される物質文明
*黒馬の時代=人間は自分の権利ばかり求めている
*緑色=聖母の衣の色の庇護のもと 人々が守られている
生命の源泉
*イッポリート不治の病→生にしがみついて、どんなことがあろうと生きたいと願う=本当に生きる
*自己保存の法則=自己破滅の法則〜個人のエゴイズムと物質的な必要性のみの満足→精神的基盤がない
*鉄道=生命の源泉の縮図→死の源泉=悪魔のもと自滅と虚無へすべり落ちる
はじめて赤ちゃんの笑顔を見た母親の喜び=罪人が祈るのを見た神の喜び
*人間の生みの親としての神に対する理解
*親が子を思うように 神が人間を思う
-
2007/09/09 読了 ★★★
2013/10/17 読了