慰安婦と戦場の性 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106005657

作品紹介・あらすじ

日本人にとって、「性」とは何か?公娼制度の変遷から「慰安婦」旋風までの全てが分かる!日本の慰安婦制度の歴史と実態をもとに、豊富な資料・証言と諸外国の事例から、拡散する慰安婦問題の論点を全て解説した決定版百科全書。

感想・レビュー・書評

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  • 著者本人は学術的に書いているとしているが、資料や証言について、どういった基準で取捨選択しているのか不明。
    「女郎の身の上話は信用できない」
    「当の私自身も若い頃に似たような苦い思いをかみしめたことがある」と個人的体験談を基準に執筆しているようだ。

  • 慰安婦問題は見解が分かれていることを知っていたので、両者の意見を読みたいと思い、「従軍慰安婦」の著者吉見義明と対立しているっぽいこの人の一冊を。
    「女郎の身の上話」「知力が低く、おだてにのりやすい」といったあのな的な表現が随所に飛び出してくるので選択を間違ったかな、と思いつつ。

    著者の主張はつまるところ、
    ・強制連行を「告白」した吉田清治の談話は詐話である
    ・朝鮮人「元慰安婦」の告発(強制連行)が事実であると確認できた例はひとつもない
    ということのようだ。たしかに前者は眉唾なようだが、日本軍の強制連行については、オランダ人女性が無理やり慰安婦にされたジャワ島スラマン慰安婦事件がBC級戦犯裁判で裁かれて死刑を含む有罪判決が出た、という話がこの本の中に入っている(冤罪だ、というならまた別の話だが)。オランダ人は強制連行したけれど、朝鮮人はしてません、というのは説得力のない話ではある。

    「やっていない」証明は非常に難しいが、「やった」証明はそれほどでもないはずなので、そこに焦点を絞って証拠調べをすれば済む話だと思う。吉見義明が論拠の一部としている「防衛庁防衛研究所にあった6点」を含む60数点の資料の評価が見当たらないのはなぜだろう?

  • クマラスワミ報告書は学生レポートなら落第点。官憲による「強制連行」の存在を申し立てているのは、日本人では吉田清治の告白のみ、後は元慰安婦たちの証言だけ。しかし最終的には、河野談話を引用する形で「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが-官憲等が直接間接的にこれに関与したこともあった。」と女史は結論した。
    秦郁彦氏は、最も事情に精通する元憲兵からのヒアリングに重点を置いた。

  • 2018.02―読了

  • 慰安婦問題が未だに解決されていない。日本も朝鮮も自分の立場ばかり言って議論が進まない。戦争中に何が行われていたのか、資料を出し合って解決的な議論をすべきだと思う。
    そんな時、この本は役に立つと思う。韓国の人も従軍慰安婦像を建てることだけでなく、この史料発掘の方も熱心に行えば状況も変化すると思うのだが。

  • 10月2日読了。慰安婦問題について、これほどに一次資料を丹念にあたっている方はおられない。ただ1999年の著書で、その後状況が変わってしまっている。できれば著者にあらためて執筆願いところ。

    読後感としては、慰安婦問題は朝日新聞の大罪と言える(第一章)。慰安婦の政府関与は学術界隈では既知の事実であったのにもかかわらず、さも新しく発見したように朝日新聞は1992年1月に突如批判記事を展開をはじめた。宮沢首相の訪韓を狙い撃ちにしたキャンペーンであると断言できる。

    <目次>
    第一章 慰安婦問題の「爆発」
    第二章 公娼制下の日本
    第三章 中国戦場と満州では
    第四章 太平洋戦線では
    第五章 諸外国に見る「戦場の性」
    第六章 慰安婦たちの身の上話
    第七章 吉田清治の詐話
    第八章 禍根を残した項の談話
    第九章 クマラスワミ旋風
    第十章 アジア女性基金の功罪 現状と展望
    第十一章 環境条件と周辺事情
    第十二章 七つの争点 Q&A

    今後、ブログ記事を書く予定。
    要点は、
    ・朝日新聞の罪
    ・日本の公娼制度
    ・クマラスワミ報告は、採決されておらず、「留意」(take note)に留まっている。日本政府がクマラスワミ報告に従う必要は全くない。
    ・韓国政府も朝日新聞の報道を迷惑としていた(ノテウ元大統領の証言あり)。
    ・戦前韓国の女性識字率は10%台。
    ・韓国人慰安婦のかなり部分は、自ら率先して働いた公娼ではなく、身売りや騙しによるもの。
    ・慰安婦本人証言の裏づけが取れないのは、慰安婦本人が読み書きできないから。官憲に騙されたのか、民間に騙されたのかの裏取りができない。
    ・慰安婦証言は、誇張表現が多い。鵜呑みにするなら、日本陸軍は人肉スープを食していたことになる。クマラスワミ報告にも記載あり。
    ・戦時下の慰安婦は2万人前後(軍人数が300万人)


    2014.09.20 借りる
    2014.10.02 読了

  •  近代以前の性風俗から現代を考えようとするときに、どうしても立ちはだかるのがこの「戦時下の性」であるわけで。
     研究者のどなたかが言っておられたが近代以降の性風俗というのはややこしくて興味がわかないという指摘があったように、確かにこの戦時下の性はあまりにも周辺事項が多すぎて、純粋な考察が難しいだろうなという印象である。
     それこそ太平洋戦争となるといまだに生存者はいるわけだし、あるいは加害者被害者ともに暗い経験を持つ人もいるだろう。従軍経験者がほぼいなくなるだろう20年30年後となるとわからないが、現時点ではまだまだ熱を帯びているテーマでもある。

     筆者は極力中立な立場で、公的な資料や裏づけの取れる証言から事実を汲み取ろうとしているように見える。それゆえに信憑性が高いような気もするし、一方で正確な証言ができなければ考慮できないという姿勢は冷酷なようにも感じられる(司法ベースで考えればやむをえないとも思うけれど)。
     昭和初期なら、平時ですら女性蔑視の風潮はまだ強かったし、非常時である戦時下においてそれが悪辣かつ巧緻に長けた形で表出することもあっただろう。日本軍が組織的、公的に慰安婦を徴発することはなかったとしても、軍の関与をほのめかす業者はいただろうし、それゆえに「日本軍に騙された、連行された」と記憶している人だっているだろう。
     今に生きる私にとっては結局「だろう」の集合体でしかないのだが、こうした資料を誰かがまとめて、轟々とした非難を浴びつつもその先に残る「検証された記録」を残していくことは、ある意味戦後を生きる私達の責任であるのかもしれない。
     最近読んだ別の本の感想にも書いたが、いま養成すべきは「語り部」よりも「聞き手」の方である。

  • 基本書としてとても良く出来ていると思う。しかしそこはかとなく漂う、オヤジ臭が…どんなヤリマンでも売春が平気かどうかは全く別問題だよ。あと、このこじれまくった現状を思うと、もう…柳美里の文章が何度かひかれていて、これが私の心情には一番フィットしたので、読んでみたい。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4106005654
    ── 秦 郁彦《慰安婦と戦場の性 199906‥ 新潮選書》
     
    http://booklog.jp/author/%E7%A7%A6%E9%83%81%E5%BD%A6
     秦 郁彦  現代史 19321212 山口 /元千葉大学法経学部教授
     

  • 読みやすかったヽ(・∀・)ノ

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著者プロフィール

1932年,山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士。著書に、『日中戦争史』(河出書房新社)、『慰安婦と戦場の性』(新潮社)、『昭和史の軍人たち』(文春学藝ライブラリー)、『南京事件―虐殺の構造』(中公新書)、『昭和史の謎を追う』(文春文庫)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会)、『病気の日本近代史―幕末からコロナ禍まで』(小学館新書)、『官僚の研究―日本を創った不滅の集団』(講談社学術文庫)など多数。

「2023年 『明と暗のノモンハン戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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