アニマル・ロジック

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106006586

作品紹介・あらすじ

私は、きっと誰も愛していない。それと同時に、きっと、すべての人を愛している…舞台は、"人間の動物園"マンハッタン。主人公は、生きることに奔走する獣、ヤスミン。テーマは、人種、セックス、愛、そして自由。山田詠美初の書下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • すごい本を書くな…エイミーさん。人種のるつぼであるニューヨークで、人を愛するということ。これまでの白人と黒人の関係性が今に影を落とし、溝を作っている中で、ヤスミンだけがその溝を軽々と飛び越える。驚愕し、悲鳴をあげ、だけど羨み、時には脅しながら、ヤスミンの愛し方に惹かれていく周囲の人たち。表ストーリーの反対側で、私たちの知らない世界で愛が育まれ、体を使って表現し、その欲望を守り切ろうとする裏ストーリー。自分に降りかかってきて初めて、正論では処理できない自分の気持ちに戸惑い、苦しみ、他の人を傷つけることで自分を守っていくんだよな。格好のいい男の人が好きなので、トニーチャンやウィリアム、アキラの佇まいが好きだけど、その3人もこれまで差別の中にいて、これからは差別しないように心を訓練し、それにより自分を守っている。どういう言い方が人を傷つけるのか、よくわかってる3人だな。
    ブラッディの遺書と、それでも触れたいブラッドの切なさ。甘い重荷になんてなりたくない。全部忘れてくれたらいいのに…と思ってしまう。それでも忘れられない、いや忘れたと思っても、心のどこかで生きていくのが「愛した」記憶なんだと思う。

  • 性は、生でもある。
    自由とは、他人に何事をも
    強要しないこと―

    この本には哲学が詰まっています。
    下手な哲学書よりも多くのことのね。
    で、この本の主人公であるヤスミンは
    黒人という一種の差別を受ける側。
    だけれども~だから~とは言わない人。

    彼女たちにかかわる人物は
    コンプレックスを持っていたり、
    黒人がゆえに苦悩していたり…
    だけれども一人だけは違うわね。
    あれはすべてにおける悪。

    その穢れにヤスミンはあたり
    死への道へ進むことに…

    ぐさっとくる言葉として
    一種のマウンティングに対する
    批判の言葉があります。
    差別主義者はそれを無意識にやっているわけで。
    だけれどもだれがイライザの母を
    笑えるかな?

    そしてフレディのような
    偏見の塊を笑えるかな?
    完全無欠な人?
    ありゃあしないね。

    人は自由はあらかじめ与えられています。
    たとえ障害があってもね。
    だけれども、先入観が
    それを鈍らせるということ…

  •  なんや、結局よくわからんかった。
     ブラッディが結局何者なのか、いいものなのか、悪いものなのか、それすらもよくわからなかった(ёзё)プゥ
     それでも、ヤスミンのすごさだけはよくわかった、のと同時に。
     実際には、そんな人はいないよなぁ……ってこともわかった(苦笑)

     まぁ、ヤスミンみたいな生き方はうらやましいと思う。
     流れるように生きて、何もとらわれない生き方。

     あー……でも、あれか。
     それでも決して死からは逃れられないってことが書きたかったのかな。

     わかんないけど。

  • 10年以上ぶりに読み返しました。

    語り部が主人公?ヤスミンの血液に寄生してる微生物という設定がなかなか新鮮。

    でも・・・山田詠美の言いたいことをヤスミンとブラッドに言わせ過ぎだな~
    発刊当時は気にならなかったけど、一度山田詠美節がお腹いっぱいになると
    鼻についてしまって、そこは色あせない彼女の美しい文章を味わうのに邪魔になる~。

    婚約者を殺めてしまったトラビス、ブルーを拾ったジェインの夫ラリー、
    白人を憎むフレディとその妹アニータとその恋人の白人のマックス、
    フレディの車での事故を介して出会ったジャックとポール、夫とのセックスが苦痛なスージー、
    弁護士のウィリアム、ひったくりで出会った少年ソウル、
    ジャズミュージシャンのリッチ、女教師ミズ・オフィーリアと娘イライザ
    中国人のトニー、差別主義者のメル、
    兄を白人に殺させた南部出身のヴィクターとその兄にレイプされ妊娠したノーマ
    気のいい女友達アンジェラ、

    そしてブラッドとブラッディ、ジュニア。

    他沢山の登場人物がいる大長編。

    最後まで印象深かったのは「いったい、性は、人間に何を与え続けてきたのか」
    という問いであった。
    最後の一文、フリー・アット・ラースト、ついに自由。
    は初めて読んだ時から今までずっと覚えていた。

  • とってもとっても厚くて持ち歩きに困った記憶。厚いけどあっという間に読んじゃいました。
    決してスラスラ読める文体ではないけれど、山田詠美さんらしい表現が散りばめられた興味深いストーリーでつい一気読みしちゃいます。
    *今読むとさすがに時代背景に古さを感じるかなぁ。

  • 素晴らしい。この中に全てが詰まっていて、もう私には何も言うことがありません。

  • 高校入学前の春休みに図書館で見つけた。
    ベッドシーンが多くて少し動揺した が、
    さらりと描かれていて逆によかった。やらしくない。

    最後感動する。おすすめ。

  • 再読。差別と区別、日本に住んでたら感じ方も薄いんだけど絶対に存在するもの。それを見極めて、見えない大切なものを守っていきたい気持ちを読むたびに強くする。

  • ヤスミンってかっこえーーなーー。


  • この本、他の山田詠美著のお話に比べて有名じゃないけど

    私のなかでは大分お気に入りです。

    話自体は長編ですが、とてもおもしろいです。

    私は彼女のエロスを匂わせるような描写がすごく好きな人間なので、この本すごく読み応えがありました。

    逆に、そういった描写が苦手な方は無理かもしれません。

    でも、山田さんのそういった描写は生々し過ぎず、かといって爽やか過ぎず、絶妙な甘ったるさを感じます。

    苦手な方でも是非トライして頂ければと思います。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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