血の味

著者 :
  • 新潮社
3.35
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本棚登録 : 171
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106006661

作品紹介・あらすじ

著者は少年時代に一本のナイフを持っていた。それは小さなものだったが常にズボンの中に入れてあり、ポケットに突っ込んだ手で握りしめていることが多かった。握りしめていると不思議に気持ちが落ち着いたのだ。著者にとってそのナイフは、揺れ動く自分の精神の安定を保つための錘りのようなものだったのかもしれない。しかし、なぜ少年にそうした錘りが必要だったのか。その記憶を辿るところから、この小説は書きはじめられた。中学三年の冬、私は人を殺した。

感想・レビュー・書評

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  • 「中学の三年の冬、私は人を殺した。」
    という書き出しから始まる作品。
    高校を卒業した頃に、この書き出しを何かで見て、
    衝撃を受け、初めて自ら読みたいと思った本です。
    なかなか読む機会がなく、だいぶ経ってしまいましたが…。


    ふとした瞬間、刑期を終えて社会復帰した男の脳裏に、当時の情景が襲ってくる…。

    この時期、特有の葛藤や無謀さを独特な表現で描いているので理解できないところが多かった。
    でも共感できるところもあった。
    それを実行するかは別として。

    ニュースとか見ていると、
    なぜ、殺害してしまうのかと、
    何かと理由を求めてたり、あってほしいと思うけど、
    この本を読んで、この手の少年犯罪は本人でさえ、
    犯行の動機が、わからない事例が多いのかもしれないなと感じました。

  • なぜ殺人を犯したのかよく分からないが、なんとなく遣り切れなさは感じる

  • 中学三年生の時に人を殺した少年が主人公。
    優等生として過ごした少年院を出てから勉強を重ね、現在は 公認会計士として働いている。
    妻と娘は彼のもとを出て都心にある実家に帰ったばかりだ。
    家庭裁判所から帰る電車の中、地下から地上へと出ると目も眩むほどのまぶしい夕日が窓から差し込んでくる。そして それが 彼が長い間押し込めてきた記憶の蓋が開けられる鍵になったのだった。

    あとがきの著者のことばによると、9割は15年前から10年前に書き上げ、残りは書けずに放ってあったと言う。それが 他の作品を書いている時に 今までに書かれていた9割に本当に書かれていたことが何か、残りの1割で何を書くべきかを悟り、1ヶ月ほどで書き上げたのだという。
    物語の中でも 謎は謎として解き明かされない部分も多く、どうしてももどかしい感じが残るのだが、これを書き上げたことで軽くなったという著者の心のありようもまた 私にはよく読み解けなくて 高まった感情をどこに着地させればいいのかいささか迷うのである。

  • かなり以前に読んだ深夜特急以来の沢木作品だったが、人の心の奥に潜む闇の描写に不自然さがなく、読みごたえがあった。
    2022/8/30読了

  • 2022.6.30-533

  • 沢木耕太郎作品では珍しい純文学小説。
    殺人を犯した少年の話であるため、重苦しいものかと思えばそんな事はなく、文体も非常に読み進めやすい。
    しかし、読後に感じるある種の喪失感は、この本で書かれていることを理解しよあとする好奇心と同居し、暫く思い馳せられる。

    あくまでも、ひとりのひとつの解釈ではあるが、冨岡幸一郎の解説には納得させられた。

  • 読みたくない
    進みたくない
    と思いつつ・・・
    みんなが哀しい

  • 人が罪を犯す。
    何故そうなったのか、環境か、性質か、相手の問題は、悲惨な事件ほど何故?と解明したくなるけど、誰にも本当の事はわからない。
    きっと本人もわからない、何かの流れに流されるように罪を犯してしまう。
    誰にでもおこりそうなこと。でも、多くの人はどこかで流れを断ち切る。はどめをかけるのは何なのか?
    いろいろ考えさせられる作品でした。

  • 大切な一冊になると思う。
    人を殺すこと、生きることと死ぬことの意味を内包している物語を、私は捨て置けない。

  • ひさびさの沢木さん。しかも今回はフィクション。確かなものをかんじました。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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