ブリューゲルの世界 (とんぼの本)

著者 :
  • 新潮社
3.72
  • (5)
  • (12)
  • (11)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 147
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106022746

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ブリューゲルのファンは日本に多いと聞いた。私もその一人である。
    近々、ブリューゲルの絵を西洋美術館に見に行こうと考えていて、手に取った本。
    子どもがピアノを習っており、その先生から「ブリューゲルの絵にある農民の踊りのようなイメージで弾いて」と言われたことがあり、まだ小さい子どもにその絵を見せたことがある。楽しげにどこか熱中したように踊る、農民。素朴な感じだ。
    しかし、このブリューゲルの描く農民は実際にはいない。(という話だ)中野京子の「怖い絵」で得た知識だが、領民は貧乏でほとんどが痩せている。しかし領地が豊かであることを示すために、ふっくらした農民で描くとか。描いた絵から農民の画家と呼ばれるブリューゲルだが、画家で生きていける農民はいない。ちょうどスペインの圧政の時代、農民の味方する画家が大成するわけがない。
    フェルメール、デホーホ、レンブラント、とネーデルラントの画家はとても好きだ。ゴッホはそこまでではないが。
    しかしブリューゲルの絵の所蔵数はウィーン美術史美術館が一番多いようだ。ブリューゲルの間があるらしい。行ってみたい。

    ブリューゲルに影響を与えたであろう、ヒエロニムス・ボス。彼の「快楽の園」を見れば影響を受けたことは一目瞭然。ブリューゲルの「悪女フリート」で描かれる頭に直接、足のようなクリーチャー。ブリューゲルは新しいボスと呼ばれた。

    「怖い絵」でみた「ベツレヘムの嬰児虐殺」の絵。「怖い絵」では、このような傑作を回復不可能なまでに絵を変えてしまうことが、怖い、ということだった。
    私が怖い、と思ったのはその点だけではない。この嬰児虐殺は聖書の話だし本当かどうか分からない。しかしそのようなことを本当にやりかねない人間の存在の怖さだ。生きている人間が一番怖いのだ。

    ブリューゲルの絵は広場形式という構図が多い。この構図は後の世代のネーデルラントの画家にはあまり見られないように思う。「ネーデルラントの諺」や「死の勝利」、「子どもの遊戯」など細部を細かくみたくなる絵が多い。なんとなくだが北斎の絵に共通するものを感じる。

    家系的にも絵に優れていたようで、5世代にわたるらしい。ヤン・ブリューゲルは花の絵で有名だと思う。5世代はなかなか、画家ではあまりいないように思う。バッハは何代続いた音楽家なのだろう。

    「ナポリの港の景観」青の色彩がとても美しい。ブリューゲルは雪の日やグレーっぽい色彩、もしくは農民の衣装の赤(この赤も特徴があると思う)が目につくが、ナポリの絵は少し緑がかった青が美しい。

  • 85個の諺と91個の遊び...ブリューゲルの絵画を見に行く前に予習すべき内容だった。
    数年前にウィーンの美術史美術館で、ブリューゲルの『子どもの遊び』(子供の遊戯)を見る機会があって、
    その時に予習してなかったので、なかなか数えなくて、とても残念だった。

  • 農民の生活に暖かな目を向け、勤勉なカトリックの1人の男が生み出した絵画群。当時の生活を知る貴重な資料としても見られる描写力の高さ。
    それにしても書き込みの細かさよ。

  • 細かい解説付きで書き込みの凄いブリューゲルの絵にはとてもありがたかった。「ネーデルラントの諺」の85個や「子供の遊戯」の91個を全て文字化しているのはこの本くらいなのでは…。文字と絵を読みこむのに時間はかかるが、まさに世界が分かる解説本だった。巻末のブックガイドの本も読んでみようと思う。

  • 初期「新しきヒエロニムス・ボス」と讃えられたが、怪物路線から人文主義的寓話的主題をパノラマで描く達人に進化。大航海時代らしく『東方三博士』は三大陸を代表し、アフリカ代表は黒人という神話が定着しつつあった。新約聖書テーマが多いが種々の根拠でプロテスタントでなかったと考証されている。神を恐れ勤労に励む新教に相応しからぬテーマ『バベルの塔』も『ベツレヘムの人口調査』も当時のネーデルラントのシチュエーションが盛り込まれてる/おそらく40代半ばで死去。長男は5歳(?)だったが、父の模作・版画化などで父子の名を挙げた

  • この秋に
    「バベルの塔」展覧会に行った。
    いつものことだが
    「バベルの塔」の前は
    十重二重になっていたので
    その作品をじっくり鑑賞することは
    すぐに あきらめた

    でも、順路の前の方に
    (ブリューゲルの)版画が何十点かが展示されており
    そのコーナーは比較的人が少なかったので
    そそくさと戻って
    空いているところから
    自分のリズムで
    じっくり、ゆっくり観ることができた

    絵を見る楽しみ は
    展覧会から戻ってきて
    本書のようなものを参考に
    再び 自分の中の残像と
    照らし合わせること

    あぁ そういうことであったのか
    を 改めて 知ること
    これも また 
    絵を観ることの楽しみの一つである

著者プロフィール

明治大学名誉教授/ネーデルラント美術史

「2018年 『ネーデルラント美術の誘惑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森洋子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
なかむら るみ
中野 京子
村田 沙耶香
村上 春樹
劉 慈欣
米澤 穂信
エラ・フランシス...
宮下奈都
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×