のすたるぢや: 萩原朔太郎写真作品 詩人が撮ったもうひとつの原風景 (フォト・ミュゼ)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106024030

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  • 「僕の心の中には、昔から一種の郷愁が巣食ってる」と書き、その郷愁をたぐり寄せるために立体写真を撮った詩人、萩原朔太郎。
    ということで、朔太郎が撮影した写真が60数点収録されている。

    ”立体写真”というところには、さしたる意味はない。
    中には、立体視して見てみると、奥行きの際立つ作品も、2,3点はある。その他、たいていは、3Dカメラを使って撮った意味が、あまり見いだせないものが多い。

    とはいえ、その画面の切り取り方が、いい。詩的と表現することもできるが、時間の経過という淘汰を経た日本の風景が、実に味わい深い。

    「きのふまた身を投げんと思ひて
     利根川のほとりをさまよひしが」

    という「利根川のほとり」という一文の脇に、その利根川河畔で撮られたであろうセルフポートレート(なのか?誰かに撮ってもらったか?)を添えれば、それだけで味わい深い。
    「憂鬱の川邉」と題された一文には、青焼きのような小さな野の川の風景が切り取られて置かれてある。ピントもあってないような鮮明でない写真がまるでモネか東山魁夷の絵のようだ。

    「その器械の光學的な作用をかりて、自然の風物の中に反映されている、自分の心の郷愁が寫したいのだ」

    その企図は、少なからず成功していると思われる。

  • 詩人、荻原朔太郎は写真が趣味であった。現実であるのに現実でないロマンチックな思慕の世界、自分の心の郷愁、侘びしおりを楽しんでいた。

  • ブックカーニバルinミサキで購入
    古い東京の写真に驚き。大森駅付近の複線未電化の東海道線とか、看板建築の並ぶ商店街、切り通しの坂(今のどこらあたりになるのだろう?)など。
    あとは立体視写真の多さにも驚き。視覚的変化とか考えると猫町につなげて考えたくもあるが、まあ違うだろうな。
    (購入当時考えた)詩人が撮る写真に詩的性な物があるかどうかは判断できず。今後の宿題。

  • 図書館:郷愁をステレオスコープによって表現。

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著者プロフィール

萩原朔太郎
1886(明治19)年11月1日群馬県前橋市生まれ。父は開業医。旧制前橋中学時代より短歌で活躍。旧制第五、第六高等学校いずれも中退。上京し慶応大学予科に入学するが半年で退学。マンドリン、ギターを愛好し音楽家を志ざす。挫折し前橋に帰郷した1913年、北原白秋主宰の詩歌誌『朱欒』で詩壇デビュー。同誌の新進詩人・室生犀星と生涯にわたる親交を結ぶ。山村暮鳥を加え人魚詩社を結成、機関誌『卓上噴水』を発行。1916年、犀星と詩誌『感情』を創刊。1917年第1詩集『月に吠える』を刊行し、詩壇における地位を確立する。1925年上京し、東京に定住。詩作のみならずアフォリズム、詩論、古典詩歌論、エッセイ、文明評論、小説など多方面で活躍し、詩人批評家の先駆者となった。1942年5月11日没。

「2022年 『詩人はすべて宿命である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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