ダレカガナカニイル (新潮ミステリー倶楽部)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106027277

感想・レビュー・書評

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  • 何十年ぶりかの再読。人の記憶はこんなにもあやふやなものか、と驚いた。記憶にあった物語の結末とまるで違っていたからだ。いやはや本当に驚いた。ダレカガイツノマニカカキナオシテいませんか?これ。僕の中の物語は、吉野桃紅の意識が葉山晶子へ飛び込んで、それに突き飛ばされた拍子に晶子の意識が西岡悟郎の中に入ってしまった、という設定だったのに。そして最後は、それが明らかになりながらも晶子の意識が徐々に消えていくという悲しくも暖かなお話だったはずなのに。
    井上夢人さんの小説は、本当に小説的な小説だといつも感じている。この本もまさにそう。殺伐とした展開の部分はあまり好きではないけれど、発想と丁寧な表現が、ああ今小説を読んでいるなあ、と感じさせてくれる。大好きです。
    もしもできるなら、僕の記憶の中のダレカガナカニイルも書いてくれないかなあ。

  • タイトル通り、火事が起こった日から誰かが頭の中にいるみたいに声が聞こえてくる話。そんな状況になったら私もパニックになるわ、と思いながら読んでたけど終盤そしてラスト、予想外過ぎてそうくるか、と。流石の一言!

  • 顧客を盗聴していたことが会社にばれてしまい、山梨にある「解放の家」という新興宗教団体の警備に左遷された西岡。初警備の晩に突然衝撃を感じて倒れ、それから誰かの「声」が聞こえ始める。更にその晩、施設で火事が発生し、1人の遺体が発見されるー。

    かなりテンポが良く、最後まで一気に読める作品。最後の最後まで、「声」が誰なのか確証が持てなかった。「病識がない」という状態なのか、本当に誰かが中にいるのかがずっと分からない。ポワという単語や山梨という地名からオウムを連想させます。なかなかのどんでん返しでした。

  • 声とのやり取りなどにくすっと笑える要素があったりして、なかなか面白かった。結末はうーんとうなってしまう感じだった。ただどうしても宗教団体というテーマだとな、偏見を持って読んでしまうよな。

  • 新興宗教の施設の警備に行った男の中に「何か」が入ってきて、奇妙な暮らしが始まり……というお話。

    平成4年に初版が出たが、随所に時代を感じさせる単語「カウチ・ポテト」「とらばーゆ」が出てきて高校のときはそういう時代だったかなあと思った。
    このときはまだ「気違い」を連発していい時代だっただろうか。

    それよりも、もし2年後に地下鉄サリン事件が起きるのだが、発売時期がが重なっていたら間違いなく日の目を見なかったと思われる。なにせ山梨の山奥に修行場があるし、「ポワ」が主要キャラの特技になっているのだから。

    言うなれば「循環型小説」で、SFの部類に入れてもいいぐらいだが、このトリックを使って何か書いてみたいと思わせた。

  • 面白い!流石!

  • 分厚い本なのに、かなりサクサク読める。ミステリーだけどSFというかオカルト分野を50%足した感じ。前半は宗教法人が雇った警備員と宗教法人を排除しようとする方々とのゴタゴタが描かれる。どうしてもオウムを連想してしまうが、発行は1992年なので、明らかに影響は受けているのでしょう。


    面白いが、ラストが理解出来ない。西岡の中にいたのが晶子なのなら、最後の押し問答は...?

    西岡のナカニイル記憶を失った晶子と生身の晶子が、愛する西岡を賭けた戦いをしているというわけですか?自分自身との戦いだから、双方とも引かない?故に切ない?

    「あんまりだ。晶子、こんなのは残酷すぎる。」というのは、それをも意味していると?

    読み返すと前半で記憶についての記述がある。これはナカニイル者の記憶がなければ本当は晶子であったとしても晶子の母として振る舞、自分自身と戦えてしまうと言うことへの伏線なのかな。

    西岡にとっては傍迷惑以外の何者でもない。黒こげになってしまうし。

    一途な恋心というのは怖いよねぇというラストという解釈でOKなのだろうか?

    なんというか、救いがありませんな。
    モヤモヤ感が残る。うーむ。そう言えば、岡崎二人の頃のクラインの壺もモヤモヤ感が残った気がする。そう言う作風なんでしょうか。

  • 読み終わり全てを理解すると、凄く切なくなるはず。。

  • 岡嶋二人を解散して、初の単独での作品です。岡嶋作品は、物語が動き出す中盤位からがやっと面白くなるという感じだったので、この作品もそれを期待して退屈なのを我慢して読み進めましたが、苦痛でしかありませんでした。カルト的な要素が強い上、とにかく長い。宗教の修行の話、「声」との堂々巡りの会話、病気の説明。最後のどんでん返しは主人公より先に気付きました。面白い展開だけど、いいの?そうなると、同じ時間、同じ空間に同時に存在してる事になるけど?って感じでした。

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著者プロフィール

昭和25年生まれ。昭和57年に徳山諄一との岡嶋二人名義で第28回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。平成4年に『ダレカガナカニイル……』(新潮社)で再デビューした。代表作に『ラバー・ソウル』(講談社)など。

「2020年 『平成ストライク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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