- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106027727
作品紹介・あらすじ
中学最後の春、東京からの転校生で、クラスの人気者だった桑島佳史が無惨な姿で発見された。それが、撓田村連続殺人の発端だった。しかも、犠牲者たちの下半身は、村の伝承をなぞるように、噛み切られたかの如き傷跡を残して消え失せている。やがて一連の出来事は、三十年前の忌まわしい事件と同じ様相を呈し始めた-。
感想・レビュー・書評
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面白かったです。
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小憎たらしいまでの、平然とした異常性。
逸脱した人々と、正統なミステリの融合。
連綿と繋がる血のもたらす狂気と秘密、過去から現在へと深くきつく互いを縛り付けあって生きてきた小さな山間の村、不気味な伝説、黒魔術、かつて起きた殺人事件、そして、揺れ動く恋情と欲情の絡まり合い。
一定区間で増えすぎたねずみたちは互いを攻撃しあうと言います。血と土が凝りすぎた閉鎖空間でもまた、ひとは些細な波紋ひとつで互いを疑い、傷つけ、排斥しあうようになるのだと、その異常な様が整然と組み立てられた物語。 -
サブタイトルが「iの遠近法的倒錯」とかいうので、めちゃめちゃに警戒してたんだけど(笑)。危惧したような小難しい論理だとかが出てくることもなくひと安心。ちょっとおどろおどろしたものが漂う本格、ってな感じで、かなり好み。
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ミステリーを紹介した新聞の書評でお薦めされていたので借りた本。
田舎の山村で起きた連続殺人事件は村の伝承がからんだり、何十年も前の事件が関係していたりと、横溝正史を思わせるものになっています。また、その事件の真相が何度もひっくり返ります。これが真相だと思われたその後で、実はこうだったと。探偵役の推理ですら、一部は外れます。
でも、この話の本質はミステリーではないと敢えて断言。
これは、主人公の中学生智明の大人への一歩を描いた青春小説です。
中学最後の年、彼に起こった友情と恋と大人への視線の変化。殺人事件はそこに投げ込まれた石みたいなもの。それが起こした波紋が、変化のきっかけとなるだけで、本の主題からすれば殺人事件はおまけみたいなもの。むしろ、事件のごちゃごちゃしたところとか、被害者が彼と同じ中学生だということからくるやりきれなさが邪魔になるくらい。
智明くんだけを追ってよむと、いっそさわやかと言ってもいい小説でした。
ミステリーとして傑作とは言えないけれど、青春小説として読めばいい本だと思います。 -
朝霧家に引っ越してきた親戚の桑島家
中三の長男圭史の上半身が森のぶらさがる
元駐在の藤枝が県警から警部補として捜査
行方不明になっていた朝霧の老婆、八千代の腐乱した上半身が
犬塚に放置されていた。
静が自殺。すべて、自分の娘と八千代自分がやったと遺書を残す。
智明は、隣人の出戻り千津が交際しているのを見つける
同級生の朝霧将晴がいた。
山田ゆりから相談されて将晴と取り持っていた
圭史の妹琴乃も下半身を切られ惨殺。
次に殺されるのは、智明と寺島が連絡。朝方、散歩に出たところを声をかけてきた山田先生が襲ってきた
犯人は山田先生。琴乃との関係をばらすと脅され圭史を殺す。黒魔術にかぶれヘロイン中毒にされていた同級生が
死体を悪魔に見立て木にくくりつけた。
婚約者、千津の存在で関係をばらすと脅された琴乃を呼び出し殺害。犬の呪いにみせかける。
将治が関係を知っていると思われて殺害を試みるが、藤枝警部補が気がつき助かる。
山田は、学生時代、千津が教師と関係した場面を見てしまったことがトラウマとなり、琴乃と関係してしまう。
智明の祖父は元特高。寺泉は祖父の依頼した探偵だった。
アカ狩りのガセネタで、犬丸家皆殺しの責任を感じていた
八千代は無膣病で子供のできない体。女中の静に子供を生ませて跡継ぎにしたが家の中では偽者扱い。
静の子供、腹違いの妹と知り、真理子とつきあい殺害。
女将の高橋静の飯屋で住み込みで働く寺沢響(祖父が依頼した探偵、銃不法所持と覚醒剤で前科あり)が真犯人を見つける
将晴の父、一馬が当時の恋人高橋真理子を殺害。全裸にしたのはクリスマス用服装をして殺害現場に来たのを隠す為。
子供を生めない体の八千代を殺し。納屋の土蔵に隠し、腐乱してから下半身を切り離し、犬塚に放置。
動機は、偽者をなじられ続けていたから。 -
岡山件の山奥の村で事件は起きた。
東京から転校してきた中学生が死体で発見され、
しかもその死体は木の上にあり、両足が切断されていた。
その後も、村の名家である朝霧家の周辺で被害者が続出する。
猟奇的な殺人を犯す犯人の目的は何か?
この村では、過去にも忌まわしい事件があり、それと関係があるのか?
横溝正史の世界を彷彿させる
不気味でおどろおどろしい雰囲気が楽しめるミステリー。
「撓田村(しおなだむら)」と聞いただけで、
なにやら怪しげな雰囲気を感じたのは私だけだろうか。。。
横溝正史の「八墓村」を想像し、ドキドキ、読みすすめたのでした。
変な探偵もどきが出てくるのも、面白いし、登場人物も個性的で楽しめました
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クライムノベルの最終兵器の小川勝己の青春小説。
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重いよ…。横溝的道具立てを現代に持ち込んだかなりガチガチなミステリでありながら青春小説でもある。青春の部分はかなり重い。中学生がこういうことに直面するのは辛いんじゃないかと思う。ミステリの部分でもかなりよく出来てると思う。見立て、過去の事件との関連、動機、そして最後の真犯人との探偵役の対決とどれも高水準。面白かったけど重いって。