共犯者 (新潮クライムファイル)

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著者 : 山崎永幸
  • 新潮社 (1999年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106028311

共犯者 (新潮クライムファイル)の感想・レビュー・書評

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  • ブログ「キース・リチャードになりたい」で紹介されておりそれをきっかけに読む。
    実際に起こった「埼玉愛犬家連続殺人事件」の共犯者である山崎永幸の執筆になるノンフィクションだ。
    映画《冷たい熱帯魚》のモチーフになったということで評判なのか絶版の本書でアマゾンの中古価格は3500円になっている。

    動物の売買を商売にしている関根元の犯罪の顛末を書いているのだが、死体を解体し、骨は燃やし(粉になる)肉の部分は川に流してしまう。死体がないので犯罪を構成しにくい。関根はそのことを「透明にする」と表現する。

    悪人モノのもつおぞましさと、それがゆえに目が離せないどきどきの展開だ。この感覚最近もあったなと思ったら「悪の経典」だ。けれどあちらはフィクション。ノンフィクションで悪人モノというのは例が少ないのではなかろうか。

    ノンフィクションの欠点もある。文章はかなり達者でゴーストライターが噂されている。たぶんそうだろうといううまさだ。けれど聞き取りであってもいいように思う。
    また共犯者の執筆意図というものもあるだろう。殺人を目撃したら告発すればよかったのだが、その勇気が持てない状況であったという論点があるのだろうかなり感情的に書いている。『関根元は、ただの殺し屋じゃない。人間でさえない。奴が地獄に落ちたら、地獄だって扱いに困るだろう。』という調子だ。
    執筆者は基本的に中立的立場になるので、性格が伝わってこない。まさに透明な存在である。実際はそういうことはないだろうからどのくらいバイアスがかかっているのか分からない。もしゴーストライターの手になるのなら、ルポライターのような第三者の話にしたほうがよかったのかもしれない。

    話はとにかく面白い。犬の売買は値段がないようなものなので詐欺を働きやすいという裏事情や関根元の表の顔、裏の顔やくざとからむ話など本当の話ならではの描写が興味深い。「鬼平犯科帳」が好きといったどうでもいいようなエピソードも本当のことが持つ重みだ。

    人間って何だろう。人間性の底辺はどこにあるのだろうと思いを馳せる点でも興味深い本でした。

  • 1993年、ペットショップ「アフリカ・ケンネル」を経営する元夫婦、関根元と風間博子(共に確定死刑囚)が金銭トラブルなどにより4人を殺害した、いわゆる「埼玉愛犬家殺人事件」。
    遺体の肉や臓器は細かく切って川に棄て、骨は灰になるまで焼いて山に撒いたため、「遺体なき殺人」と言われた。
    本書は、その惨たらしい事件で死体損壊・死体遺棄の罪に問われ、懲役3年の実刑判決を受けた共犯者・島永幸が、満期出所後に"山崎永幸"という筆名で事件を記したものである。

    当事者が書いた事件の深層は概ね歪んでいて、真実が描かれていないことが多い。
    本書も例外ではなく、著者が事件に巻き込まれ「共犯者」になる以前、たとえば、主犯・関根の病的な嘘つきぶりを嘲笑しているにも関わらず共同経営者として手を組んだくだりなど、理解しがたい箇所も多い。

    ただ。
    「共犯者」となってからのリアリティは他に類をみない。
    事実は、想像を遥かに超えて残虐で、「ここで警察に駆け込んでいれば罪を重ねることはなかったのに」という正論は通じない。
    本性を目の当たりにしてからというもの、貶すことを忘れ、関根の一言一句に怯えるが故、次々と犯罪に手を染めてしまう著者の様は、ただただ惨めだ。

  • 「冷たい熱帯魚」観賞後に図書館で入手。
     映画(の前半)は思ったよりこの本に忠実なのが意外だった。
     とはいえ映画は映画。どれだけ血が流されようとそれは血のりだと頭の隅では了解しているが、それをいざ事実と思って読むと、気が遠くなるような出来事と関根節の連打に打ちのめされる。

     関根元はある種の天才なのだろう。
     山崎という人も、これまでの関根の共犯者のなかでは、早くから関根の恐ろしさと自分のおかれた状況を理解していたという点で突出した人物だったのだろう。そこが映画との最大の違いだ。それゆえ振り回されながらもギリギリで逃げ切り、運も味方し自分と家族をの命を守ることができた。
     平素の関根ののどかな小悪党ぶりこそがその陰にある希代の殺人者の像を覆い隠した、という考察にはただ頷くのみ。
     安い探偵小説のような一人称のニヒルさは、この事実の衝撃を受け取るための緩衝剤なのではと思う。

  • 埼玉愛犬家連続殺人事件が好きすぎて、純粋に読み物として評価できないので、評価しませぬ。
    好きすぎてって部分で、もう何かおかしい通り、以下、不謹慎な発言も垂れ流しますので、ご注意を。



    当時のことは劇中でも語られているように、オウム事件と阪神・淡路大震災によってほぼかききえてしまっているんだが、一つだけハッキリとした記憶がある。
    「愛犬家」といういかにもとっつき安そうな名前に続く「殺人事件」というちぐはぐさが、当時少坊だったおいらの頭に深く突き刺さったのだ。

    園子温の『冷たい~』を鑑賞し、久々に「埼玉愛犬家――」のことを思い出すと同時に、吹越タソの名演から共犯者であるとされた志麻とは一体どんな人物だったのか、妙に気になり本書を手に取った。

    ざっくりと総括すると、気付くと関根が出てくるところしか真剣に読んでなかったし、気を抜けば市橋ギャルならぬ関根ギャルと化しそうな自分が一番恐ろしかった。
    何を言っているんだ私は。


    初めは思っていた以上に客観的かつ冷静な書き方、文章力の高さに唸ったが、徐々に「俺が俺が」という志麻の独白調が強まり、スタンガン辺りからは「あれっ、こいつやっぱり関根の精神攻撃で狂っちゃったのかな」と思い始め、だが後にその正体が(埼玉県警の刑事さんも口にしたようだが)「ただのチンピラ臭」だったのかもしれん、というところに落ち着いてしまい、文章を読むごとに志麻という男から気持ちが離れてしまった。

    わかりにくいな。。。

    それまで関根という男にしか興味がなく、ネットなどで調べれば調べるほど自分の中に深く入り込んで、ともすれば親しみまで覚えてしまうほど心酔していたんだが、本書を読むことにより、志麻のチンピラ臭が強まるたびに、関根に更に惹かれていくというとんでもな感じに……ってやっぱりわかりにくいな。

    とはいえ、あんまり文章が上手いんで、ちょこちょこ調べてみたら、何だかゴーストライターの存在が噂されているようですな。
    確かに、これは素人の文章ではないような気がします。文章に長けた人がわざと素人風に書いたという感じ。
    特に冒頭~中盤にかけては、果たして共犯者に仕立て上げられた本人が本当にこんな風に客観的に、人を楽しませるような文体でもって描写できるものか、と思わざるを得ないほど上手いです。
    普通に読み物として楽しめてしまいます。

    どこまで本当か、本当のところは分からないけれど、まあ恐らくほぼ志麻の目に映り、体験したことだと思うので、やはりそう考えると関根の一言一句、所作などのリアリティがウィキなんかで見るより全然違います。博子も然り。当たり前だが。

    解体の素早さや異様なところで発揮される潔癖症、それから特に川崎さんを毒殺する過程の異常さ、ヤクザ+あんちゃんこ殺害~解体シーンなど、鳥肌が立ちます。
    『冷たい熱帯魚』ででんでん演じる村田や黒沢あすか演じる愛子、エンターテインメントなラストに不完全燃焼だった方なんかにゃまさにオススメです。

    今となっては、所々で「通報できたんじゃねえの?」という疑問が生じる箇所で、突然志麻の口調に「おめえらにはわかんねえと思うけどマジ通報とか無理だから通報とか言っちゃうのはトーシロのそれだから俺はそんな次元より遥かに超えたところで地獄を味わったから言えるんだからな!」とでもいうような言い訳が混ざる感じが、当時の裁判の様子とかを鑑みる辺り、そう書くことでの影響を狙ってる感を想像させられて面白かったかな。


    余談だけど……
    決して犯罪を許容しているわけでも犯罪者を好意的に思っているわけでもないですが、関根という男はこの世界に名を残した数多の犯罪者の中でも別格の存在で、ちょっとこの人のことは冷静に語れないのが本当のところです。
    しかし、それだけ長い間、おいどんの心に住まっていた関根が、園子温の神がかったキャスティング、演出により、完全にでんでんで脳内再生されるようになってしまい、嬉しいやら戸惑うやら!
    何が言いたいかってでんでん怖いし 園子温怖い!(本書と全く関係がない……

  • 「冷たい熱帯魚」を観てから読了。
    悪質極まりない凶悪犯罪の当事者の視点で書かれた割には淡々とした筆致であるのは「あくまでも俺は“共犯者”なのだ」という著者(ゴーストライターらしいが)の思いが表れているのかもしれない。
    とはいえ、終盤の検事とのやり取りを見る限りでは著者にも少なからず犯罪者としての素地があったのかなと。
    関根の超人っぷりというか方向の間違ったカリスマ性については「冷たい熱帯魚」に軍配。

  • 最初の部分を読んで失敗したと思う。気持ち悪い。最後の部分の検事とのやり取りを読みまた思う、本当だったらこの検事は最低だと。嫌悪感で読めない。

  • 傑作。関根元の名言「ボディは透明に」が強烈。最強の殺人鬼を自負する関根のキャラに振り回される山崎の姿はどこかコミカル。共犯者というより、パシリ。だが、それが殺人と死体遺棄のパシリだからしゃれにならない。

  • 短編集なのでスラスラと読みやすい。

    意外性のある話が結構多いわーい(嬉しい顔)

    特に「潜在光景」がおもしろかった。最後にこう来たか~って感じで。

    でももうちょっと長く描写しててもいいかも。


    なんか人の弱さを見た感じ。
    「愛と空白の共謀」とかちょっと切ない。

  • 意気地なく犯罪に加担してしまった共犯者の著者は関根に怯えて従順に従うしかなかった。関根の悪知恵と道徳心の欠落は神がかり的である。こういった人と関わったらえらいことになるのはしかたがなかったのかもしれないが、終始気になるのが著者のクソ生意気な文体だ。自分は臆病だと認めるのも嫌だし無慈悲な冷酷者と思われるのも嫌という優柔不断な人間性がこういった書き方になるのだろう。悪にもなりきれないくせに生意気な口調で物語る様が無様だが、文章がうまいと思う。こいつのやったことは許されることではないし、反省の色も見られないし、自分は被害者ヅラして従うしかないことを強調しつつも上から目線が鼻につく傲慢な臆病な男の風上に思置けない被害者を見殺しにしておいて罪の意識もなく恐怖恐怖とばかり繰り返し訴える最低な根性がにじみでている著者だが、作品として関根の恐ろしさは十分伝わった。

  • ”ボディーを透明にする”が強烈な名言ともなった埼玉愛犬家殺人事件の犯人。
    なぜそこまで虚勢を張れないと生きて行けない人生になってしまったのか、女や金も自分が動けば手に入る、しかしそこに心の安堵感はあったのだろうか。
    他に著書もあるという事であえて評価を下げているが、もう少し逮捕後の事も明確に書いて欲しかったのも本音。
    逮捕された時の心情、人には必ず終わりが来るという事を痛感した犯人はどういう気持ちだったのだろうか。
    なぜ愛し合って出来た待望の人間がここまで悪に染まったのだろう。
    心理状態が気になるというのが本音だが、きっと慣れてしまえばたいした事無いのだろうというのをなんとなく悟った。
    殺人鬼、基地外、そういう色々な肩書きを含んでしまうから人は期待をしてしまう。肩書きというのは邪魔な物なのかもしれない。

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共犯者 (新潮クライムファイル)の作品紹介

埼玉愛犬家連続殺人事件。犯人がなかなか挙がらなかったことには、深いワケがある。死体が絶対に現れない方法をあの男があみ出したからだ。俺は雨の音が何よりも嫌いだ。連想させるのだ、人肉に降りかかるシャワーを。眼前から消えないのだ、あの生涯最悪の光景が。「人間の死は生まれた時から決まっているわけじゃない」あの男はそう言った。「そいつは俺が決める。俺が今日死ぬと言えばそいつは今日死ぬんだ」俺は震えあがった。が、逃げれば消される。そう、細かい肉片にされて文字どおり消されるのだ。一体どうしたらいい。

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