天才の栄光と挫折: 数学者列伝 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035111

作品紹介・あらすじ

ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ。いずれおとらず、天才という呼称をほしいままにした九人の数学者たち。が、選ばれし者ゆえの栄光が輝かしくあればあるほど、凡人の何倍もの深さの孤独や失意に、彼らは苦悶していたのではなかったか。同業ならではの深い理解で綴る錚々たる列伝。

感想・レビュー・書評

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  • 9人の数学者の生身に迫る、感動的な物語である。
    数学者である著者が畏敬の念を抱いて選んだ9人、それぞれの人生の軌跡を確かめるべく、現地に脚を運び、そこで知ったことや感じたことをもとに、当時の空気感を持って、文章に現出させる。文章の言い回しが心地よい。タイトルに凝縮されているように、天才は峰が高いほど谷底も深く、それ故に、輝かしい栄光の裏に、底知れぬ孤独、挫折や失意があった。本書を通じて、痛切に伝わってくる。多くの数学者が挑み、挫折していった'フェルマー予想'の超難問を証明したワイルズ、この偉業に、3人の日本人(岩澤,谷山,志村)の理論が大きく寄与していたことを知ることができた。

  • 筆者は御茶の水女子大学の名誉教授で数学者である。図書館蔵書以外にも著作はあるが、中でも一番有名なのはベストセラーになった「国家の品格」であろう。古くから知っているファンとしては正直面白くない。私は「若き数学者のアメリカ」を特に勧める。アメリカへ留学した時の体験記である。留学の孤独・異文化・人間・学問などを、ユーモアを交えて鋭い視点で分析している。しかも、易しい言葉で書かれていて、文章ってこんなふうに書くのかという書き方まで学べる。さらに、マンガのようにゲラゲラ声を出したと思いきや、涙しながら一気に読んでしまう恐ろしい本である。(注意)藤原正彦中毒にならないよう、読んでいただきたい。

    文学部 T.A


    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000328620

  • 数学者、藤原正彦氏による、古今の数学者たちの偉業とその生き様を紹介する本。趣旨は後に書かれた「心は孤独な数学者」と同じ。存命の数学者も含めた伝記である。
    著者の表現がとても心地よくて、また数学者という想像を超えた頭脳を持つ人たちへの尊敬もあり、とても楽しめた。著者の意図は、どんな偉大な数学者だって悩んだりする人間なんだということ。彼らの業績がいかにすごいかは、一般人よりも、自身も数学者の藤原氏の方がもちろんよく知っている。紹介されている数学者のうち、ラマヌジャンなど4人分は他の著書で読んでいたので飛ばしたが、それ以外もとても面白かった。3世紀半誰も解けなかった、フェルマーの最終定理を見事に証明したワイルズ博士の章も楽しめた。サイモン・シンの著書に比べると、苦悩の部分が薄いが。
    とにかくおすすめの本。

  • 410

  • 最後のアンドリュー・ワイルズのところだけ図書館で立ち読み。
    フェルマーの最終定理は名前くらいしか知らなかったけど、解けたはずの超難問の解に欠陥があるかもしれないと分かってからの苦悩と、それが解決した時の喜びは、なんか仕事上の課題の解決策が見つかりそうな時の感覚に似てるなと思った。
    まあレベルは違うけど。
    ただ、あとがきにあった、天才は神ではなく人間だという言葉が分かる気がした。

  • 「博士の愛した数式」のインスピレーションとなった一冊だそうです。

    天才数学者たちの孤独や苦悩と、おそらくその反動で生まれたものでもある驚異的な数への執着がもたらした理論の数々。理論については理解不能ですが、人間ドラマとして非常に興味深かったです。

    なかでもナチスの暗号エニグマを解いたチェーリング、フェルマーの定理を証明したワイルズの物語が印象深いです。

  • 数学大嫌いだけど、数学者の人生ってドラマありすぎで読み物としては惹かれます。この本は著名な数学者の人生を、実際に現地に訪れた様子と合わせ書いているので、紀行文としても楽しました。
    文系と理系と切り離して考えがちですが、これを読むと詩を書いたり絵を書いたりしている数学者もいるので、本当の天才は文理融合しているもんなんだなと思いました。私にはどちらもないけど。

  • 天才科学者は美しい街から出現する。と言うような内容があるとの事。街と人との係わりに興味あり。

    ・・・・・・
    数学者の著者が、歴史に名を残す数学者の「人」に注目して、出身の地を訪れ取材する。

    天才と呼ばれた人も一人の人間であり、悩み嫉妬し時には要領良く生活していくこともある。ただ共通点は、人生の高みが高ければ高いほど、反対に深い谷も存在している。この様な著者の推察と流れるような文章が数学者でありながらエッセイストとして俊逸なところを感じさせます。

  • 取り上げられている天才たち、といっても数学者は詳しくないのでニュートンしか知りませんでしたが。
    非凡な人たちの生涯が筆者得意の主観交えた解釈で書かれていて楽しめました。
    頑張らな、って感じになって良いです。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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