発酵は錬金術である (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035579

作品紹介・あらすじ

泡盛の蒸留廃液に黒糖を加えた健康飲料「もろみ酢」、米糠から「天然うま味調味料」、削りカスから「天然液体かつお節」…生ゴミや廃棄物から生み出したヒット商品は、数知れず。その他、糞尿や灰を活用した日本古来の知恵、ゴミを一切出さない中国の究極のリサイクルなど、柔軟かつ大胆、ユーモアと遊び心にあふれた、経済効果抜群の発想法のすべてを公開。

感想・レビュー・書評

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  • 人間には個性がある。それと同じように
    発想にも個性があるのだ。
    その個性を生かすことも発想には大切である。

    ⚪︎マイナスをプラスに変える発想。
    性質をよく見極めて発想してみる。

    ⚪︎ユニークな発想
    樹に実ったワイン
    ワイン酵母を注射したブドウ
    遊び心とユーモア。

    ⚪︎江戸時代の人たちの
    「逆転の発想」
    捨てる灰→利用する灰へ(肥料など)
    甘酒を夏に冷やして飲む(飲む点滴)

    ⚪︎資源循環型の発想
    生ゴミを完熟堆肥へ
    この土を使った農作物なら
    安心、安全 、おいしさが保証されている。

  • ノンアルコールビールとかの元を作った教授の本。
    ものすごく大学教授っぽい書き方だけどサクサク読めて中身は面白い。
    物は考えようだと言うのがよくわかる。
    ご本人も相当ポジティブな人なんだろう。
    あるあるネタの硝酸カリウムの作り方など元ネタを探し出してくれた感じ。

  • ほんとに錬金術だな。もろみ酢も考案されたとのこと。
    小泉先生すごい。微生物の可能性もすごいし、発想もすごい。開発する時に物語性を作るというのはなるほどと思った。

  • 東京農業大学名誉教授であり、各種マスコミなどでも有名な著者の専門である発酵・発酵食品に関する本。

    以下のように、ユニークな例を紹介し、発想を柔軟にすることでいくらでもビジネスチャンスがあることを説いています。

    コメで作ったチーズ、「ライスチーズ」
    麦から酢を作った、「麦出酢(むぎです)」
    米ぬかから作った、「天然アミノ酸」
    鰹節の削りかすから作った、「天然鰹節フレーバー」
    流行を追った「どろどろ醤油」
    売れ残りの野菜で作った、「野菜醤油」
    ワインの搾りかすで作った、「天然アミノ酸」
    ワインのおりをふんだんに入れた「濁ったワイン」
    酵母を房についている果実に入れ発酵させた「樹に実ったワイン」
    空気中に飛散した天然フレーバー
    泡盛の蒸留廃液で作った「もろみ酢」
    福神漬けの漬け汁を入れて作った「カレー」
    梅干しと日本酒で作る、「煎酒」
    唐辛子に米麹と柚子を加え発酵させた、「かんずり」
    生ゴミを発酵させ完全堆肥にする「ハザカプラント」
    沖縄の泡盛を福島で貯蔵し、熟成させた泡盛

    「くさいはうまい」でも感じましたが、著者の発想力・行動力にはいつも驚かされます。

    個人的には、煎酒を出す「都寿司」、大分県大山のオーガニック農園に訪れたくなりました。

  • 発酵、特にお酒にまつわる発酵アイディアが多く紹介されている。あと香料ビジネスの幅広さにも驚かされた。いずれにせよ何か食べたくなる。

  • 一見失敗のように見える時こそ、諦めずに立て直す姿勢も大事なんだなぁと、‘発想の転換’思考は大変勉強になります。

  • 今週おすすめする一冊は、東京農大教授で、「食の冒険家」として
    有名な小泉武夫氏による『発酵は錬金術である』です。小泉氏は、
    大学教授らしからぬ、軽妙で洒脱なお人柄と文章ゆえに、主婦から
    ビジネスマンまで、幅広い層に人気のある方ですね。

    最近、井上は、発酵の力というものの凄さに改めて感服しています。
    農学部出身ながら、発酵や醸造の勉強はほとんどしなかったのです
    が、発酵の世界を知れば知るほど、なんでもっと早くこの世界のこ
    とを学んでおかなかったのだろう、と反省します。それくらい魅力
    的だし、可能性のある世界だと思います。

    本書の中でも述べられているとおり、バイオテクノロジーに頼る前
    に、発酵微生物に頼ったほうが、ずっと効率的で、自然にも人にも
    優しいものを生み出すことができます。ゴミ問題、エネルギー問題、
    食糧問題等、今の日本が抱えている問題の多くも、発酵微生物の力
    をうまく利用することで解決できるかもしれない。そんな希望を抱
    かせるくらい、発酵の世界は奥深く、可能性に富んでいます。

    全て人工で解決しようとすると無理があるけれど、うまく発酵の力
    を使えば、思ってもみなかったことが実現できる可能性がある。発
    酵の世界の奥深さを知れば、そういう見方ができるようになります。
    つまり発酵が発想を広げてくれるのです。

    小泉氏自身、「壁に突き当たった時は、発酵微生物が解決してくれ
    る!」ということを鉄則として生きているようです。このため、氏
    の発想はとてもユニーク。おまけにそれが見事にお金を生み出すこ
    とにつながっています。

    本書では、そんな発酵を使った発想の錬金術の数々が紹介されます。
    その多くは小泉氏自身が関わったものなので、自画自賛の感がなき
    にしもあらずですが、どれも楽しく、嫌味のない口調で書かれてい
    るので、純粋に楽しめます。日本や中国に伝わる発酵術も紹介され
    ているので、発酵を上手に取り入れてきた人間の暮しの知恵の凄さ
    にも驚嘆させられることでしょう。

    氏の発想の根本には、何にでも興味をもって面白がる好奇心と観察
    眼があります。そういう子供のような心を忘れないことの大事さを
    改めて教えてくれる一冊でもあります。是非、読んでみてください。

    =====================================================

    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    「壁に突き当たったら、発酵微生物が解決してくれる!」。これが
    私の考えの鉄則である。微生物の働きにはすばらしいものがある。
    大豆を納豆にしたり、醤油にしたり、牛乳をチーズにしたり、汚れ
    た川を綺麗にしたり、抗生物質のような薬までつくってくれる。あ
    る意味では魔法使いだ。マジシャンだ。

    私が現在たずさわっている仕事は七つある。一、大学教授。二、食
    の冒険家。三、エッセイスト。四、作家。五、発明家。六、コピー
    ライター。七、造り酒屋の共同経営者、以上である。

    この発想(注:樹になったままのブドウでワインをつくること)の
    根底に流れているものは、子供っぽさのある遊び心、そしてユーモ
    アの感覚である。いつも心を快活にさせて、そして広く楽しい心を
    持っていると、時として、このような新鮮な発想を生むことができ
    る。とにかく、発想する者にとって、遊び心とユーモアは、発想を
    閃かせる栄養剤となることを忘れてはならない。

    たとえば臓物料理でも、大阪の言葉で、「こんなものは食えない、
    放るもん(ホルモン)だ」といわれていたのが、逆にその言葉が生
    かされて、ホルモン料理になったといわれる。食べてみたらとても
    おいしいということになって、料理として定着したのである。同じ
    ように捨てるものはみな宝物だ、資源だと考えながら、足元をよく
    見て、諦めずに、とことん発想していくようにしなくてはいけない。

    小便を原料にして爆薬を作る。これは江戸時代に、越中(今の富山
    県)の五箇山地方の村民が行った、現代の科学者も顔負けの驚くべ
    き発想で、大変な錬金術であった。

    発想の原点というのは、実は小さな発見なのである。どんな小さな
    出来事にも興味を持つこと、そして、自然の中で起きている何かを
    見逃さないことが大切なのである。

    日本人は昔から、擬きもの(似たもの)を作るのが得意で、雁の肉
    に似せた「がんもどき」やソーセージに似せた魚肉ソーセージなど
    も作っている。

    新しい試みを実践する場合、大切なことが四つあると思う。一番目
    は「独創性」が必要であること。そして、二番目は「理論武装」が
    必要であること。三番目は「受け皿」があること。そして四番目は、
    そこに「物語性」があることである。(…)その他にも、意外に気
    づかれない重要なポイントがある。それは、タダの資源を使えとい
    うことである。

    発想というのは、多くの人に、夢と希望をも与えてくれるものでも
    あったのだ。

    地球上には無数といってよいぐらいたくさんの微生物が生息してい
    て、それらの微生物は、個々に特別の性質を持っている。私たちは
    まだ、それらをほとんど利用していないのである。

    ほんの小さな生命現象、ささいな自然現象でも見落としてはいけな
    い。絶えず目をキョロキョロさせていなくてはいけないのだ。逆に
    いうと、錬金術のヒントは、観察次第でどこにでも転がっていると
    いうことである。

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    ●[2]編集後記

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    昨日、生まれて初めて駐車違反のステッカーを貼られてしまいまし
    た。

    ブックオフに古本を出しているちょっとの間の出来事。40冊売っ
    て4千円になったのに、違反代で吹き飛びました。でも、お金が問
    題なのではなく、こんなことで点数を引かれるのが悔しい。ここ何
    年も無事故無違反だっただけに、余計にショックです。

    何で昨日に限って付近の駐車場を探しにいかなかったのだろう、と
    悔やんでみても、後のまつり。起こってしまったことをいつまでも
    悔やんでいてもしょうがないのですが、自分の阿呆さ加減に腹がた
    ってしょうがなかったです。

    金曜日に、昨年からずっとかかりきりだった仕事をようやく終え、
    土曜日は、オフィスの引っ越し。それで心身共に疲れ果て、虚脱症
    状に陥っていた、というのはあります。やたら眠いし、何だか色々
    なことが面倒で、そのせいか、駐車場を捜しにいこうという発想す
    らわきませんでした。

    こういうマタニティブルーのような虚脱症状に陥っている時は、車
    の運転とか危ないんだよな、と思っていた矢先のことで、そういう
    意味では、駐車違反ぐらいで済んで良かったとも言えるのですが。

    今年は厄年だし、ほんと、色々なことに気をつけないといけないな
    と反省させられた一件でした。

  • 皆からゴミだと思われて廃棄されていたものも、発想の転換で利益を生むものになる。その閃きが大事だと、自身の今までの成果をもとにわかりやすく語ってくれる。自画自賛もユーモアに包まれているので面白く読めた。

  • ★森永製菓「甘酒」《甘酒の歴史・栄養を紹介するサイト》
    http://www.morinaga.co.jp/amazake/

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著者プロフィール

小泉武夫(こいずみ・たけお):1943年、福島県の造り酒屋に生まれる。東京農業大学名誉教授。専門は醸造学・発酵学・食文化論。専門的な話を、分かりやすく伝える達人。また食の未来を中心に、日本が抱える多くの大問題に挑んでいることから、「箸(★正字)を持った憂国の士」と評される。140冊を超える著作があり、小説も『猟師の肉は腐らない』、『魚は粗がいちばん旨い』など、専門的な知識に裏付けられた独自の作品が多数ある。


「2023年 『熊の肉には飴があう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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