宇宙に果てはあるか (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035760

作品紹介・あらすじ

ビッグバン以前には何が起こったのか?ブラックホールはいかにして蒸発するのか?アインシュタイン、ハッブル、ホーキングらの原論文にそくしながら、宇宙の深遠に挑んだ科学者たちのスリリングな謎解きのプロセスを解き明かす待望の一書。わたしたちは今、宇宙のどこにいて、どこへ向かって生きているのだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 天才がなぜそう考え、どうやってそこへ到達したのか... というのは、どう頑張っても凡人には推し量りえないものなのだろう。が、結果だけを見る分には、難解な部分が省かれていて読み解きやすい。

  • タイトルから創造するに,宇宙の話を誰でも簡単に理解できるように書いている本と思いきや大違いで,理論物理学や素粒子科学などの基礎知識がなければ全部を理解することは無理。しかし,我慢して読み進めていくと,ところどころそうした知識を必要としない部分もあり,おぼろげながらも,この難解な世界の入り口を垣間見る程度の理解はできた。

    空間の歪み,素粒子などといった概念はやはり凡人にはそうそう理解できなことが理解できた。無知であること知るとはこのことであろう。

  • 星がどうやってできたかとか、宇宙ができる理論とか知的好奇心がくすぐられる面白い点がいろいろあった

  • 様々な仮説が議論を闘わす中で、正確度のより高い現代宇宙論が確立されてきた経緯が詳しく明かされている。宇宙物理学史として、非常に興味深い本だ。

    索引、論文リスト、人物事典、索引と巻末も充実している。

    結論もドライで、ロマンのかけらもないが、今という時に、「宇宙の誕生から死にいたる壮大な歴史を垣間見ることができた」ことの有意味を説く面白さ。

    ・アインシュタインは球面上宇宙(3次元球面の空間)というアイデアのために、宇宙項を導入した。
    ・仏教の倶舎論の三千世界でさえ、恒星を2000~4000億個含む銀河系に比べるといかにも小さな世界である。
    ・インフレーション理論の中で、インフラトン場の正体をはじめとして、何か本質的な点で理解が欠けているという見方も根強い。
    ・ブラックホールの形成がエントロピー増大に即応するのだとすれば、宇宙史における「始まりの秩序」とは、単に「初期宇宙には何ら構造がない」という消極的な内容ではなく、「ブラックホールがほとんど存在しない」という積極的な主張を意味する。

  • 宇宙物理学について書かれた一冊。宇宙の組成や歴史、恒星が輝くメカニズム、ブラックホール、元素はどうやって作られたか、等々の話題を扱っている。それらを数式を使わず、また現在主流となった見方が発展してきた歴史をたどる形で語られている。

    科学の歴史は単線的なものではなくて、仮説の立案とその検証の繰り返しだ。アインシュタインをはじめ、いかに天才的に見える科学者でも様々な誤りがある。特に宇宙物理学のような、実験の難しい領域では突拍子もない様々なアイデアが出され議論される。この著者の書き物の特徴の一つは、そうした誤りの過程を丁寧に辿ることだ。それは単に奇妙なアイデアを嘲笑するためではなくて、そうした中からこそ定説は生まれてくるからだ(p.10-13)。

    というわけで、例えば三次元球面でのアインシュタイン方程式を巡り、遠回りな計算をするアインシュタインの話(p.39)やガモフの犯した誤り(p.92)などの話が出てくる。また、ほぼ水素しかない原子の宇宙から恒星の中でどうやって各元素ができてくるのかについては、他書で読んで興味をもったものだが、本書でも興味深く書いてある。

    自分自身、素粒子物理学ほど宇宙物理学に興味が薄いのか、話題が単発的でややまとまりを欠くのか、はたまた最近興味が失われているのか。ちょっと薄い読書となった。

  • われわれはどこにいるのか、宇宙に果てはあるのか、宇宙は変化しているのか、宇宙はとれほど大きいか、宇宙はどのように始まったか、ビッグバンは本当にあったのか、星はなぜ輝くのか、ブラックホールとは何か、世界はいかに形づくられたか、われわれはひとりぼっちか、ビッグバンの前に何があったか、われわれはどこへ向かっているのか、まるで哲学や文学のようなテーマについて、アインシュタインからホーキングまで原論文を調べて、宇宙探究の歴史を語る本書。数学が宇宙を語る言葉には違いないが、その前に語る内容が大事。

  •  宇宙論に関するエッセイを、12編。相対性理論以降科学の分野としてその地位を確立し、この百年ほどで一気に進歩してきた「宇宙の見方」を概観する。適度に専門的な知識を盛り込み、噛み砕きながら進む。難しい数式などはないけれど、思考の過程が丁寧に追われていて、特に仮説と検証のプロセスが、すごくわかりやすい。
     宇宙が始まる前は一体どうなっていたのか、というところまで踏み込み、そしてまた宇宙はどのようにして終わっていくのか、ということまで明らかにしようとする、壮大なスケールの物語。それは想像力を起点におきながらも、数学そのものの自走的な動きによって、ダイナミックに運動していく人間の思考の営みであるに違いなく、そのことに思いを馳せるだけでも、どこかロマンティックな気分に浸れると思います。
     しかし、最新科学の世界は、随分SFに接近しているのですね。まだ決して十分に実証的とはいえないにせよ、SFの世界が現実のものとなりつつあるのには、わくわくを感じずにはいられません。下手なファンタジー小説より、ずっと面白いですよ。

  • 太陽系や銀河の形成からビックバン宇宙論やブラックホールまで宇宙に関する学術研究を、幅広く紹介しています。過去にあった論争などを通して現代の宇宙論が発展していく様子を追うことで宇宙に対する理解が深まることでしょう。

  • [ 内容 ]
    ビッグバン以前には何が起こったのか?
    ブラックホールはいかにして蒸発するのか?
    アインシュタイン、ハッブル、ホーキングらの原論文にそくしながら、宇宙の深遠に挑んだ科学者たちのスリリングな謎解きのプロセスを解き明かす待望の一書。
    わたしたちは今、宇宙のどこにいて、どこへ向かって生きているのだろう。

    [ 目次 ]
    われわれはどこにいるのか―大銀河説と島宇宙説
    宇宙に果てはあるか―相対論的宇宙モデル
    宇宙は変化しているのか―動的宇宙論
    宇宙はどれほど大きいか―ハッブルの法則
    宇宙はどのように始まったか―ビッグハン宇宙論
    ビッグバンは本当にあったのか―背景放射の発見
    星はなぜ輝くのか―恒星進化と元素の起源
    ブラックホールとは何か―重力崩壊の理論
    世界はいかに形づくられたか―太陽系と銀河系の形成
    われわれはひとりぼっちか―地球外文明の探索
    ビッグバンの前になにがあったか―インフレーション宇宙論
    われわれはどこへ向かっているのか― 宇宙のエントロピー

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 他の本でもお馴染みのビッグバンやブラックホールの解説だけど、理論を発表した科学者の間違い等の紆余曲折を説明することで思考過程を辿る点が特徴かも。アインシュタインも万能では無かった!

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著者プロフィール

1956年三重県生まれ。大阪大学理学部物理学科卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専攻は、素粒子論(量子色力学)。東海大学と明海大学での勤務を経て、現在、サイエンスライター。 著書に、『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』(講談社ブルーバックス、2020)、『量子論はなぜわかりにくいのか 「粒子と波動の二重性」の謎を解く』(技術評論社、2017)他。

「2020年 『談 no.117』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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