野の鳥は野に―評伝・中西悟堂 (新潮選書)

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著者 : 小林照幸
  • 新潮社 (2007年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035890

野の鳥は野に―評伝・中西悟堂 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

  • 私は平成のトキの野生復帰運動に対し「偽善」という思いがぬぐえない。
    なぜなら、トキ絶滅の一番の原因は他ならぬ人間で、農薬使用や開発などの人間の勝手によるためだからだ。
    まるでドメスティックバイオレンスで女性に激しい暴力を振るった後に、一転優しく接する男のよう。人間側が本当に改まらなければ、DV同様、同じ結果の繰り返しだと思うが。

    そもそも「列島改造」などとたわ言を吐いていた日本人が、自然を愛し、自然の一員である野鳥を大切に扱い敬意をもって接することができるのか。
    心もとない。しかし、この中西悟堂の評伝を読めば、そうでもないと考えを改められる。

    著者は1968年生まれで、生前の悟堂と接してはいないと思われるが、おそらくある日、悟堂の思想に出会い深く共感したのだろう。この本では悟堂の生誕から終生を、その自然観やライフスタイルを細部まで調べて記述し、著者自身の自然への思いと重ね合わせているように感じた。

    悟堂も「鳥と友達になりたい」と思ったものの、最初は野鳥をカゴで飼っていたようだ。だが「豊かな生活は自然との調和」という考えから、自分自身が自然のなかにあることを理想とし、鳥を家の中で“放し飼い”にするようになった。そしてついには家の扉を開け、鳥が自由に出入りするようにした。
    カゴとの大きな違いは、鳥はあくまで自然のなかで自生し、“客”として人間を訪問する。ここでは鳥と人間は、自然の一員として対等である。鳥の生態を詳しく知りたいのなら、私たち人間は“客”として山野へ探鳥しに行けばよい。

    最近も「自然を大切に」と言う人は増えているが、そんな人たちの多くは自動車を乗り回し排気ガスを鳥の生息環境に振りまいて平気である。どうも自分に都合よく自然保護という言葉を使っているように見える。

    悟堂のように徹底して自分の価値観を自然の方に歩み寄せられれば、エセナチュラリストは淘汰されても、本物ならば周りから同調し共感する人が集まり、一つの運動の流れとなって太く長く残っていくと感じた。
    そして、トキや野鳥も、人を自然のなかでともに生きる仲間として受け入れてくれるだろう。
    (2009/1/25)

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野の鳥は野に―評伝・中西悟堂 (新潮選書)の作品紹介

明治28年に金沢市に生まれ、10代で仏門に入り、30代で3年間の木食菜食生活を経験。「野鳥」という言葉を広め、「探鳥会」を初めて行ない、ヒートアイランド対策のための屋上樹林を考え出した。カスミ網の禁止、空気銃の追放などに尽力し、鳥獣保護法の基礎もつくった。文明大国へとひた走る日本に対し、戦前から自然保護を訴えた孤高のエコロジストの一生。

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