年をとって、初めてわかること (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
3.88
  • (2)
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 25
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036125

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「自分の老化を面白がってみている。これも一徳」「(目がかすんできたのに)目が少し見えてきた」ポジティブな生き方、いいなと思います(^-^) 立川昭二 著「年をとって、初めてわかること」、2008.7発行。32人の作家が語る豊穣で神秘な老いの世界が紹介されています。川端康成「山の音」「眠れる美女」、三島由紀夫「天人五衰」、幸田文「台所のおと」、川上弘美「センセイの鞄」、湯本香樹実「夏の庭」、耕治人「どんなご縁で」「そうかもしれない」、深沢七郎「楢山節考」など。

  • 年ひとつ加ふることも楽しみとしてしづかなる老に入【い】らまし
     吉井 勇

     新たな一年。
     年を重ねて、初めてわかることもある。そんな生活実感を、文学作品の鑑賞とともに紹介した立川昭二の著書が味わい深い。
     たとえば歌人の吉井勇について。吉井は1886(明治19)年、東京生まれ。若き日には、北原白秋らと耽美【たんび】派の会を結成したことでも知られている。酒の歌、女性の歌、京都祇園の日々などを歌い、伯爵である吉井家の嗣子という華やかな境遇にもあった。
     だが、華族同士の最初の結婚はうまくゆかず、スキャンダルにも巻き込まれてしまう。家運は傾き、すさんだ生活の果てに爵位を返上。しばらくは、四国で息をひそめて暮らしていた。
     けれども再婚後、転機が訪れた。京都に移り住み、精神的にも安定。晩年も穏やかな暮らしぶりであったようだ。掲出歌も、老境を嘆くような暗い印象はない。
     しかし、時に心は激しく動く。

      しづかなる老と思ふに時ならぬ心たぎちのありておどろく

     「たぎち」は激流の意。華やいだ青春の日々を、ふと思い返す時間があったのだろうか。また、最晩年には病院のベッドで次のような歌も書き付けていた。

      京に老ゆ年をわすれて気も艶【えん】に都踊の歌詞もつくれる

     依頼された都おどりの歌詞を作り、あでやかな心を保とうとしていたのだ。その後、1960年に京大病院で没。享年74。最期の言葉は、「歌を…。歌を…」であった。

    (2013年1月6日掲載)

  • [ 内容 ]
    老いがもたらすものは喪失と寂寥ばかり?
    いや、老いたからこそ知る自己発見の驚き、人と分かち合う喜びが、そこにある。
    心と体。
    エロス。
    孤独。
    共生。
    愉しみ。
    看取り―思いもよらなかった「老い」の豊饒な世界を、斎藤茂吉『白き山』から青山七恵『ひとり日和』まで、名作文学のなかにしみじみと読み味わう。
    いまこそ、この作品を読もう。

    [ 目次 ]
    第1章 老いの自覚
    第2章 老いと欲望
    第3章 老いの情念
    第4章 女の老い・男の老い
    第5章 老いとエロス
    第6章 老若の共生
    第7章 老いの価値
    第8章 老いの美学
    第9章 老いと看とり
    第10章 老いの聖性

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

著者プロフィール

1927-2017。東京生まれ。早稲田大学文学部史学科卒業。1966-97年、北里大学教授。後に同大学名誉教授。主に文化史、生活史の視座から病気、医療、死を考察した。1980年『死の風景』でサントリー学芸賞受賞。著書:『日本人の病歴』、『病いと人間の文化史』、『明治医事往来』、『いのちの文化史』、『生と死の現在』、『養生訓に学ぶ』、『生死のあわい』他多数。

「2018年 『日本人の死生観』 で使われていた紹介文から引用しています。」

立川昭二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×