- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106036125
感想・レビュー・書評
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「自分の老化を面白がってみている。これも一徳」「(目がかすんできたのに)目が少し見えてきた」ポジティブな生き方、いいなと思います(^-^) 立川昭二 著「年をとって、初めてわかること」、2008.7発行。32人の作家が語る豊穣で神秘な老いの世界が紹介されています。川端康成「山の音」「眠れる美女」、三島由紀夫「天人五衰」、幸田文「台所のおと」、川上弘美「センセイの鞄」、湯本香樹実「夏の庭」、耕治人「どんなご縁で」「そうかもしれない」、深沢七郎「楢山節考」など。
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年ひとつ加ふることも楽しみとしてしづかなる老に入【い】らまし
吉井 勇
新たな一年。
年を重ねて、初めてわかることもある。そんな生活実感を、文学作品の鑑賞とともに紹介した立川昭二の著書が味わい深い。
たとえば歌人の吉井勇について。吉井は1886(明治19)年、東京生まれ。若き日には、北原白秋らと耽美【たんび】派の会を結成したことでも知られている。酒の歌、女性の歌、京都祇園の日々などを歌い、伯爵である吉井家の嗣子という華やかな境遇にもあった。
だが、華族同士の最初の結婚はうまくゆかず、スキャンダルにも巻き込まれてしまう。家運は傾き、すさんだ生活の果てに爵位を返上。しばらくは、四国で息をひそめて暮らしていた。
けれども再婚後、転機が訪れた。京都に移り住み、精神的にも安定。晩年も穏やかな暮らしぶりであったようだ。掲出歌も、老境を嘆くような暗い印象はない。
しかし、時に心は激しく動く。
しづかなる老と思ふに時ならぬ心たぎちのありておどろく
「たぎち」は激流の意。華やいだ青春の日々を、ふと思い返す時間があったのだろうか。また、最晩年には病院のベッドで次のような歌も書き付けていた。
京に老ゆ年をわすれて気も艶【えん】に都踊の歌詞もつくれる
依頼された都おどりの歌詞を作り、あでやかな心を保とうとしていたのだ。その後、1960年に京大病院で没。享年74。最期の言葉は、「歌を…。歌を…」であった。
(2013年1月6日掲載) -
[ 内容 ]
老いがもたらすものは喪失と寂寥ばかり?
いや、老いたからこそ知る自己発見の驚き、人と分かち合う喜びが、そこにある。
心と体。
エロス。
孤独。
共生。
愉しみ。
看取り―思いもよらなかった「老い」の豊饒な世界を、斎藤茂吉『白き山』から青山七恵『ひとり日和』まで、名作文学のなかにしみじみと読み味わう。
いまこそ、この作品を読もう。
[ 目次 ]
第1章 老いの自覚
第2章 老いと欲望
第3章 老いの情念
第4章 女の老い・男の老い
第5章 老いとエロス
第6章 老若の共生
第7章 老いの価値
第8章 老いの美学
第9章 老いと看とり
第10章 老いの聖性
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