自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

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制作 : Gunnar Heinsohn  猪股 和夫 
  • 新潮社 (2008年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036279

自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

  •  江戸時代、武家の三男坊とかになると士官先もなく、嫁の来手もなく、惨めな生活をしていたというドラマだったかを昔見たことがあって、なるほどなあと思ったものである。しかしこの武家がおそ松くん並みに兄弟が多ければ、長男おそ松くんはいいとして、弟たちは能力もあり教育も受けていても社会の中に正当な地位を得ることができず、大変鬱屈した生活を送ることになるだろう。やがては社会、すなわち幕府を恨むようになり、そこに「尊皇攘夷」論などが吹き込まれると、彼らは名誉のため命知らずのテロリストになるのである。そこに吹き込まれるイデオロギーは「聖地奪還」でも「アーリア人の優位」でも「イスラム原理主義」でも時代と場所に適合すれば何でもいいのである。本書『息子たちと強国──上昇志向におけるテロと国家の没落』(原題)の主張を応用するとこんなことになる。

     「戦闘年齢」といわれる15歳から25歳(あるいは29歳)の人口(これをユース・バルジと称する)が人口の30%を超えたとき、社会に居場所を与えられないが上昇志向をもった二男坊・三男坊によって内乱、革命、テロ、戦争などが起こるという主張であり、15世紀以降、ペストで人口激減したヨーロッパが人口を盛り返して世界制覇した歴史、開国した日本が膨張してようやく原爆によって止められる歴史など実例が豊富に挙げられる。目下の脅威はイスラムの人口爆発である。

     他方、先進国では人口の減少に悩む。人口増加のためには女性に生んだり生まなかったりする選択権を与えないような抑圧された地位を与え、避妊・堕胎・嬰児殺しを厳しく取り締まるとともにそのような知識を持った産婆を殲滅するのがいい。魔女狩りはそうやって産婆と彼女らが持つ女性医学の知識を殲滅し、ここに大航海時代が開けていくという解釈はなかなか見事だ。しかしもはや先進国ではそんなことはできない。だからといって人口の増えた他国の人々を受け入れても国内に摩擦が起こるだけでうまくいった事例はごく少ない。

     著者ハインゾーンは解決策を示せない。わずかに多民族国家として成功しているモーリシャスの事例を挙げる程度である。しかしここまで論考を進めれば、世界平和のための論理的帰結は2つ。ユース・バルジ分を火星移民に送るか、挙児権なり挙児義務を制定して厳格に女性一人あたりの出生率を2.1に保つ超管理社会を作り上げるしかない。いずれもディストピア小説が描いてきたようなことである。ああ。

  • 人口統計学について一冊くらい読んでおこうと思い立ち,評判&タイトルで9月に本書を購入.10月にはいろいろあって一冊も本を読めなかったことから,11月に読書習慣を取り戻すべく手元で一番読みやすそうな本書を手に取った.

    前半はタイトルにある人口学に沿った内容であり,期待通りで申し分ない.しかし,後半に見られる現時点での社会分析については,首をかしげざるを得ない箇所が随所に見られた.当初は書かれたのが2003年と12年前なのが原因かと思ったが,どうもそれだけではなさそう.違和感を覚えて読み進められなくなったので,ふと表紙を見直したところすぐに判明.著者はドイツ人なのですね.ドイツ関連の最近のイシューと言えば移民とVW不正だが,関連して語られるドイツ人の特徴と先の違和感を組み合わせると朧げながら正体が見えてきた.それは私が人口統計学の本に期待するものとは相性が悪いだろうなぁと.まぁ訳者の影響もあるだろうから何とも言えないけれども.

    以上より,★3つが妥当な評価に思える.読書のリハビリとしてはあまり良い選択ではなかったが,今月は積読本を大いに片づけていきたい.

  • 政治哲学者のハンナ・アーレントは自身の著「全体主義の起源」の中で、ユダヤ人迫害や植民地支配の発生要因を、自国内であぶれた「余計な者たち」のはけ口、生きる道の顛末として考察した。しかしそこには「余計な者たち」がなぜ生まれるのかまでには言及していなかったが、まさかそれを人口学という異分野で説明できるとは思いもよらなかった。ペスト流行による人口減少で危機に瀕していた中世ヨーロッパ。その反動で出生爆発が起き、ユースバルジという問題が起こる。ユースバルジは戦争やテロにはけ口を求める。したがって、世界の均衡を保つには人口抑制が欠かせない。だが一方で、抑制しすぎると少子化問題が起き、国家存続の危機につながる。人口統制とは国家にとって最も厄介であり難しい舵取りを求められる。

  • ■書名

    書名:自爆する若者たち
    著者:グナル・ハインゾーン

    ■概要

    団塊の世代のように突出して数が多く、居場所のない「ユース・バ
    ルジ」。この指標を手がかりに、暴動と人口の「隠れた法則」をあ
    ぶりだす。イスラム自爆テロの本質は何か、中国は危険なのか、ア
    メリカの覇権の行方は?さらに、魔女狩りや大航海時代、日本の戦
    後復興など、世界史の特異な現象をも読み解く。海外ニュースが全
    く違って見えてくる知的興奮の書。
    (From amazon)

    ■気になった点

    ・職にあぶれた者に残された道は4つだ。
     ・国外への移住
     ・犯罪
     ・クーデター
     ・革命
     ・集団殺人
     ・植民地を創る

  • 犯罪者はなぜ犯罪を犯すのかを考えた結論は「暇だから」。というツイートを思い出した。

     ジェノサイドが起きるのは、社会が抱えきれないほどの若年人口がいる時である。
     働き口のない次男、三男、四男はそのエネルギーのはけ口が見つからない。だから既得権益者を引きづりおろそうと必死になる。そして、本当に死を以て社会に訴え出る。

     現在、人口爆発で多くの若年人口を抱えるイスラム諸国家は、火薬庫である。もうすぐ若年人口が減少するのでイスラム国家も鎮火すると言われているが、そうだといいね。

    ____

    ● 中世の大航海時代、ヨーロッパのユースバルジは新大陸で植民地を経営し、生きがいを見つけた。


    ● 人は飢餓から逃れるために戦う。のではない。飽食の時代でも、生きる場所がなければ戦うのだ。世界平和のためには、何をしていかなくてはいけないか。考えろ。

    ● 現代の先進国の若者は高い失業率に苦しめられている。でも、爆発しないのはやることがあるからだろう。パソコンがあれば引きこもれるし、世界平和が訪れるかも。

  •  「人間が闘争を行うのは「飢餓」からの脱出、物的な充足を求めるためであり、したがってそれらが満たされれば世界には平和が訪れる。」というのがマルサス主義以降一般に信じられている平和論ではなかったろうか。
     しかし著者はそれらを「愛らしくも無邪気な幻想」と斬って捨てる。なぜ人は戦うのか。それ以前に「どういった人間が」戦いに及ぶのか。そういう視点から歴史を見ると意外な構造が見えて来た、本書はその構造を解析したものである。そのキーワードは『ユース・バルジ』バルジとは人口ピラミッドの突出した部分のことをいい、多くの国家が歴史的な戦争/侵略を行った時期はその国の人口構造が10〜20代に極めて突出した時期に合致するというものだ。
     もちろんそれは戦闘要員が多いという単純なモンダイで片付くことではない。突出した多勢の若者たちは自分たちが手にする社会資源が相対的に少ないことを知り、その上で力を「外」に向けるのだ。また国家も戦闘要員を「消費材」と考えた場合、遠慮なくこれを消費しようとする。
     人類は本能的に自分たちの社会に「適当な」人口構成というものを理解しており、いろいろな形での「産児制限」を行ってきた。それらの中には現在の規範ではゆるされざるものもあったが、社会を維持する手段として暗黙のうちに認められていたのである。
     ところが、コロンブス以降、ヨーロッパ人は「人的要因」の増大に迫られた。女は産めるだけの子を「生産」しなくてはいけなくなった。そこで産児制限のプロであった当時の助産師たちは「魔女」とされ社会から抹殺された。と同時に人口ピラミッドは今までにない構造を取るようになる。そしてその若者たちは生まれ育った場所では手に入らないものを求めて「新世界」で略奪の限りを尽くし、その動きは19世紀まで続くのである。
     それらが終演した1940年代以降、女たちは産むのを止めた。おそらく動物的本能として「母性」からくる出産欲というものはひとりかふたりでいいものと見え、19世紀に覇権国家としてならした国々のほとんどが、今や『シニア・バルジ』を抱える状況になっている。
     では今『ユース・バルジ』を抱える国家はどこにそのはけ口を求めるのか?!それが世界各国で見られる局所的なテロの原因だと著者は分析する。彼らは『自分の社会的位置』を求めるため「既存のもの」を壊そうとするのだ。9・11の実行犯たちがいずれも移民したアラブ系の若者であり、つまり物的には決して飢餓の状態にはなかったこと、それが何よりの証拠だろうと著者は示している。
     論調がかなりアグレッシヴで、俄には信じ難い部分もあるけれど、かなり興味を魅かれる内容ではあった。面白さという点ではなかなかのものだと思う。 

  • 15~29歳の人口に占める割合が30%を越えると戦争とかテロ、犯罪が増える。→行き場を失った若者が地位や富を求めて戦闘にエネルギーを注ぐため。
    古代ローマ、ギリシャや15~16世紀ヨーロッパの植民政策に始まり現在のアフガニスタンまでその現象は繰り返されている。
    人口学的には2050年頃までアメリカの独走は続くだろう。
    (中国やインドが周辺国と同盟組んだり支配したら覆るだろうな…)
    韓国と北朝鮮が統一されたら、韓国の強い経済と北朝鮮の核を持った強国になる、というのはなぜ今まで考えなかったのだろう…

    とにかく学び考えることが多い良書でした~

  • テロは、本当に民族・宗教・貧困のせいなのか?

  • 世界各地の暴力行為を人口爆発という観点から読み解く。ユースバルジの危険性を指摘した良書。
    ラテンアメリカを調べる中で、ヨーロッパ人たちが危険を冒してまで新大陸を目指した理由、またその新大陸であそこまで残虐になれた理由が不思議だった。しかし、行き場のない若者の力の爆発だったという指摘に非常に納得した。
    (若者が少ない日本ではその恐ろしさというのはなかなか感じられないが。)

    人口が急増する途上国にいると、この恐ろしさをまじまじと感じる。

    過去の歴史研究にも、未来の予測にも役立つ。
    文体がちょっと重めで悲観的すぎるのが☆マイナス一つの理由。

  • 衝撃的で面白い。

  • 人口増加と大量殺戮や社会の変革を結びつけた点は大変興味深いものであった。
    しかしながら、上記のような本書の筋の他にアメリカやイスラエルを贔屓し、ヨーロッパ、特にドイツを下げるような姿勢が見られるが、本書を読むだけではその根拠を得ることはできなかった。
    また東アジアのことについても、少々記述されているが、そのいくつかは疑問を抱かざるを得ないものであり、資料が海外文献も多いため、容易に確認できないのが残念だ。
    しかし、現状への適用はまだしも、その歴史的な説明自体はやはり一考に値するものであるため、このワルサスのものとは違う人口学もより精査に研究を進められて欲しいと思う。

  • ユースバルジというコンセプトは新鮮。確かに色んなことが説明しやすくなる。ただ全部ではないけれども。

  • テロが起こるのは、貧困や飢餓からではなく、若年層の人工過多から、パワー溢れる若者達が、数少ない社会的地位やポジションを求めて、「暴走」してしまうからだ。

    新しい切り口から、世界を分析した人口学。

  • テロ、内戦、紛争、戦争が起きる原因を人口構成にあるとする。
    ユース・バルジ、相対的に若年層が多い国は、その若年層の為の居場所、ポストを確保できない。故に社会が不安定化し、外に出る圧力が強まる。

    子供が1人の母と7人いる母、彼女らの戦死に対する捉え方は違うだろうというのは納得。

    ご多聞に漏れず、いつまでも若年層が膨らむ訳はなく、その後は急激に減る。

    今の不安定地域もほうっておけば落ち着くと考えると時間の力はすごいかも

  • 若者が占める割合により社会が不安定になることがわかった。
    数年前に読んだ本

  • 若者が人口構成に占める割合の一定線を越えると、暴走するということか、ある意味納得。 若者なら、不満はマグマとなり爆発する。 テロ、暴動、政権転覆、戦争、確かにそうかもと思える。 

  • 自尊心を満足させる仕事がない若者が増えることで、治安の悪化を招くらしい。

    なら、平均寿命が長くなり、グローバル化による安定した仕事の減少、核家族化による親子関係の希薄化などから、日本においても移民の有無に関わらず治安の悪化が懸念されそうです。

  • 人口統計学、特にユースバルジ(若者の飽和)からみた戦争から経済活動などの社会現象を紐解く。
    戦争などの暴力行為に思想や宗教、主義、主張の影響は大きくないことを主張している。
    納得できる内容が多く、考えさせられる。特に日本は少子化が叫ばれて久しいですが、
    本書の内容のように事実を踏まえたうえで検討しているのか甚だ疑問である。

  • 一人っ子だから たった一人の男の子だから 死んだら困るし たくさんいる息子の一人なら死んでも困らない っていう風なことは ないとは思うけど たくさん生まれている世代は 競争に慣れているってことはあるのかも知れないねぇこの本に書いてあることが本当なら 次の火種は アフガニスタンなどの隣。。インドとか イランとかに なっていくんでしょうかね。

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自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)の作品紹介

団塊の世代のように突出して数が多く、居場所のない「ユース・バルジ」。この指標を手がかりに、暴動と人口の「隠れた法則」をあぶりだす。イスラム自爆テロの本質は何か、中国は危険なのか、アメリカの覇権の行方は?さらに、魔女狩りや大航海時代、日本の戦後復興など、世界史の特異な現象をも読み解く。海外ニュースが全く違って見えてくる知的興奮の書。

自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)はこんな本です

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