自爆する若者たち: 人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036279

感想・レビュー・書評

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  • ずいぶん過激なタイトルだと思ったが、確かにありうる話だし、統計的に有意だとしたらとんでもないことだと思った。若者が多すぎると火種になるとは。この火種をうまく活用できれば経済成長が望めるんだろうが、政治が不安定だと、破壊力に繋がってしまう。しかし、出生率が何で決まってくるのかはわからなかった。
    出生率の低さで苦戦している先進国は何が問題なのだろうか?

  • 大分、未来は悲観的

  • 人口に占めるある世代の割合が一定以上に膨張する(=ユース・バルジ)と、その世代は権限や居場所を求めてテロや革命を起こすという、人口と暴動の関連性に着目した書籍。テロの原因は貧困という風に思っていたが、欧米の決して貧乏では無い若者がISに参加したり、人口爆発を起こしている国で社会が不安定なのは、この説を裏付けているのかも。日本の団塊の世代はこれに当てはまらない程度の膨張だったが、それでも学生闘争は活発だった。居場所がないという意味ではオウム真理教に走る若者がいたのは最近のことだ。この法則だけではないのだろうが、これで世界を眺めてみると興味深い。子供や若者の数が少なくなれば、戦力を維持することが難しくなる。若者を死なせることができない軍隊になる。アメリカはまさにこの状態。この限りでは、将来の中国はそれほど危険ではないと言えるかも。新たな視点をくれる一冊。

  •  かつてのヨーロッパの覇権、現在も続くテロリズムの影には「ユース・バルジ(過剰なまでに多い若年人口)」がある。
     ヨーロッパは、初期重商主義により「人口の多さ=富の多さ」とし、「宗教」の権威を用いて堕胎や嬰児殺しを禁止した。
     かつて、魔女迫害が行われたが、これはこの関連と考えられる。
     「魔女」として糾弾されたものは産婆も多く、彼女たちが人口調整の手段を持っていたが、迫害されたことでそれらはほぼ壊滅的な状態となり、ヨーロッパは人口爆発を迎える。
     ユース・バルジ(過剰なまでに多い若年人口)、わけても、植民地の拡大に大きく影響した。
     貧富にかかわらず、三男坊、四男坊は親からの財産や土地を相続することは期待できず、「自力で」居場所を確保するしかなく、それが外に向かって爆発した結果、ヨーロッパは全世界を席巻した。

     現在もテロリズムや紛争が絶えない地域では「ユースバルジ」が往々にして見られる。

    <感想>
    日本でも「団塊の世代」でよくいわれることだが、世代の人口の多さが社会に影響を与える。
     当然の帰結なのかもしれないが、改めて考えたことがなかった。この本で世界規模で論じられていたので、とても新鮮に感じた。
      

  •  「人間が闘争を行うのは「飢餓」からの脱出、物的な充足を求めるためであり、したがってそれらが満たされれば世界には平和が訪れる。」というのがマルサス主義以降一般に信じられている平和論ではなかったろうか。
     しかし著者はそれらを「愛らしくも無邪気な幻想」と斬って捨てる。なぜ人は戦うのか。それ以前に「どういった人間が」戦いに及ぶのか。そういう視点から歴史を見ると意外な構造が見えて来た、本書はその構造を解析したものである。そのキーワードは『ユース・バルジ』バルジとは人口ピラミッドの突出した部分のことをいい、多くの国家が歴史的な戦争/侵略を行った時期はその国の人口構造が10〜20代に極めて突出した時期に合致するというものだ。
     もちろんそれは戦闘要員が多いという単純なモンダイで片付くことではない。突出した多勢の若者たちは自分たちが手にする社会資源が相対的に少ないことを知り、その上で力を「外」に向けるのだ。また国家も戦闘要員を「消費材」と考えた場合、遠慮なくこれを消費しようとする。
     人類は本能的に自分たちの社会に「適当な」人口構成というものを理解しており、いろいろな形での「産児制限」を行ってきた。それらの中には現在の規範ではゆるされざるものもあったが、社会を維持する手段として暗黙のうちに認められていたのである。
     ところが、コロンブス以降、ヨーロッパ人は「人的要因」の増大に迫られた。女は産めるだけの子を「生産」しなくてはいけなくなった。そこで産児制限のプロであった当時の助産師たちは「魔女」とされ社会から抹殺された。と同時に人口ピラミッドは今までにない構造を取るようになる。そしてその若者たちは生まれ育った場所では手に入らないものを求めて「新世界」で略奪の限りを尽くし、その動きは19世紀まで続くのである。
     それらが終演した1940年代以降、女たちは産むのを止めた。おそらく動物的本能として「母性」からくる出産欲というものはひとりかふたりでいいものと見え、19世紀に覇権国家としてならした国々のほとんどが、今や『シニア・バルジ』を抱える状況になっている。
     では今『ユース・バルジ』を抱える国家はどこにそのはけ口を求めるのか?!それが世界各国で見られる局所的なテロの原因だと著者は分析する。彼らは『自分の社会的位置』を求めるため「既存のもの」を壊そうとするのだ。9・11の実行犯たちがいずれも移民したアラブ系の若者であり、つまり物的には決して飢餓の状態にはなかったこと、それが何よりの証拠だろうと著者は示している。
     論調がかなりアグレッシヴで、俄には信じ難い部分もあるけれど、かなり興味を魅かれる内容ではあった。面白さという点ではなかなかのものだと思う。 

  • 世界各地の暴力行為を人口爆発という観点から読み解く。ユースバルジの危険性を指摘した良書。
    ラテンアメリカを調べる中で、ヨーロッパ人たちが危険を冒してまで新大陸を目指した理由、またその新大陸であそこまで残虐になれた理由が不思議だった。しかし、行き場のない若者の力の爆発だったという指摘に非常に納得した。
    (若者が少ない日本ではその恐ろしさというのはなかなか感じられないが。)

    人口が急増する途上国にいると、この恐ろしさをまじまじと感じる。

    過去の歴史研究にも、未来の予測にも役立つ。
    文体がちょっと重めで悲観的すぎるのが☆マイナス一つの理由。

  • テロが起こるのは、貧困や飢餓からではなく、若年層の人工過多から、パワー溢れる若者達が、数少ない社会的地位やポジションを求めて、「暴走」してしまうからだ。

    新しい切り口から、世界を分析した人口学。

  • 若年世代の人口、正確には相続できない次男坊以下の存在が戦争や侵略などの世界を動かす役割を果たしていることがよくわかる。ただ、個々人にとっての誘因は飢えなどではなく、野心を満たすことができる社会的地位だという点については、平和ボケしている人間だからなのかピンとこない。著者もハンチントンを批判しているが、宗教や文明などといった枠組みは、学者などが世界の現象を都合よく説明する道具でしかないと思えてくる。まさに世界観が変わる内容だった。

    15世紀末から19世紀にかけてのヨーロッパの人口爆発の歴史もよく説明されている。ユースバルジが大航海時代や新大陸への移民、世界の植民地化の原動力となったわけだ。魔女裁判は人口増加を意図したものであり、出産を抑制する行為を厳しく禁止することにあったという(避妊、堕胎などは死罰)。

    5章以降は飛ばし読み。

    ・16世紀、17世紀初めのヨーロッパの人口爆発の源泉は15世紀の第4四半期に求められ、中でも1475年から1485年の間である(p.128)
    ・その後、19世紀末まで西ヨーロッパのほぼ全域で、一人の女性が一生に産む子供の数は5〜6.5人でほぼ一定している(p.129)
    ・ヨーロッパの人口爆発のピークは1770〜1870年(p.142)

  • 若者が占める割合により社会が不安定になることがわかった。
    数年前に読んだ本

  • 若者が人口構成に占める割合の一定線を越えると、暴走するということか、ある意味納得。 若者なら、不満はマグマとなり爆発する。 テロ、暴動、政権転覆、戦争、確かにそうかもと思える。 

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