新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036484

感想・レビュー・書評

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  • 大和総研のアナリストによる日本経済を統計データで読み解いた本。一般に流布している情報には、統計的な裏付けのない情報が有り、統計データを分析してみると違った結果になる場合がある。
    例えば、国の財政上、人口減少が問題だと言われて少子化対策が行われているが、統計では人口減少よりも高齢化の方が問題で、高齢者が増えることによる財政負担の影響の方が大きい。高齢者優遇の制度を改めることのほうが、少子化対策よりも効果的というのが、統計データから得られた結論となる。マスコミなどが取り上げる情報には、データの裏付けが無いものがあるので、論旨の基となった情報をきちんと把握する必要がある。
    この本を読んでいて、ところどころ論理の飛躍がある分析もあり、違和感を感じることがあった。例えば、外車の販売台数で所得の地域格差を測ることができると筆者は述べていますが、外車は必需品ではなく嗜好品であり、お金があっても買わない人がいる。また、日本全国に均一に外車販売店が分布していれば、筆者の言うように地域格差の測定もできると思いますが、販売店の無い地域の人達はお金があっても外車が買えないわけで、やや現実とは違和感のある考察であるように思った。
    統計の観点から、いろいろな日本社会の見方があることを教えてくれるとても面白い本ですが、同時に統計データの解釈の難しさも感じました。

  • 社会通念となった事実を経済学の目で分析する
    連載ものをまとめたので、一貫したテーマはない
    日本はなぜ貧しい人が多いのかという問の答え:ジニ係数は貧しいひとが多いと格差が大きく出る。日本はとびきりの大金持ちは少ないが貧しい人は多い。日本の市場所得格差は比較的低いが、社会保障による給費が少ないため所得再配分後の所得格差では米についで格差の大きい国になっている。公共事業を通じた所得再配分は効率が悪い。

  • 私をすっかりかの施策の信者にした「ベーシック・インカム」の著者。
    ということで期待して手に取ったが、あちらのほうが新著だった。内容は安定の、淡々と事実で殴っていくスタイルなのだが、いかんせん数字が古いのはこのジャンルでは致命的。しかし、刊行当時はたいそう有用な啓蒙書だったろうと思われた。

    2018/11/25~11/26読了

  • まあ普通かな

  • 日本はなぜ貧しい人が多いのか。
    それは日本の所得再配分が、個人への支給が限られた人だけにとどまり、公共事業のように組織に通してなされるから。
    こういったことを、データを積み上げながら説明する。
    少子化は経済成長があり、年金制度を改革すれば、別に困ることではない、という主張だったか。
    理屈としてはそうなのか、と思うけど...。

    経済学の素養がないので、その論証が正しいのか自分で確認することができない。
    完全にこちらの問題だけど、もどかしく思った。

    個人的には社会的な問題を扱った第一章が面白かった。
    もちろん経済学のアプローチの特性というか、限界もある訳だけど。
    なお、本のカバーにある「日本の地方に豪邸街がないのはなぜ」については、本文に明確な答えは出されていないように思う。
    データにより地方に豪邸街がないことは明らかにされ、アメリカの住宅供給事情と比較され、日本の富裕層間の競争が起こらないことを指摘しているが、なぜないのかは説明していない。
    まあ、それが経済学のアプローチなのだろうと思う。
    というわけで、カバーの惹句には気をつけなくちゃ。

  • 正直タイトルと内容は関連しない、副題が正しい内容。

    巷に流布している都合の良い真実。それらは全て誤りである!(帯から)
    の示す通り、一般的に言われている事を統計資料をしっかりと読み込んで判断したらこうなりますよってのを個々丁寧に解説がなされている。

    数字は嘘をつかないが数字を使って嘘はつける。
    この手の本全般に言えることだが、こういう物の見方、手法が大事であって、結論部分を数字の意味を理解しないままうのみにするのは大変危険。
    そういう意味で大変難しい本でした。

  • 【感覚ではなくデータ】
    話が細切れになって、つながりがなく、ストーリーがよくわかりません。
    しかし、データで客観的確認する、すばらしいです。

  • 通説に対してデータから説明した本。
    経済政策によって国の行く末が決まる。
    こうすれば日本は良くなるといった内容が書かれていた、自分には理解できなかったが…

  • いろんな「定説」に対して、数字をもとに考えてみよう、という趣旨の本。
    ドイツワールドカップで日本が敗退したのは、ストライカーがいないからではなく、守備が悪いからでは?というのは面白かった。たしかに他の国と比べても失点が多くなっていた。
    ストライカー産業の育成はどうすれば良いのかわからないから、インフラ系の投入産業のコストを削減することで、ストライカー産業への良いアシストをするのが大事なのでは?という観点は面白かった。コストは低ければ低いほど色々できるからな。
    生活保護:給付総額はOECD平均の8分の1だが、非扶助人数は10分の1で、一人あたりは高額になっている。より広く薄く配分すべきであって、審査を厳しくすべきではないだろう。
    日本の年金給付額は世界一高く、児童手当は先進国中一番低いというのは、ほんとうにもうクソジジイのクソジジイによる、クソジジイクソババアのための政治だなぁと。。。
    医療費増大というけれど、質が向上するのであればそれは負担が増えるわけでもないだろう、という指摘。ただし、コスト削減のための試みはもっとあってしかるべき。

  • 著者はいろんな世間一般で言われていることは、
    真実ではないと主張する。

    たとえば、
    「高齢化により医療費が増大する。」
    これも増大はするが、GDPが2%づつ成長するので、
    GDP比はむしろ減るので、心配することではない。
    と語っている。

    本当にそうか?
    GDPが伸びても我々国民の収入が増えなければ、
    やっぱり負担が増えるので問題なのではないだろうか?

    全体にわたって、なんかだまされ感が残った本だった。

著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学農学部卒業。学習院大学博士(経済学)。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、日本銀行政策委員会審議委員などを経て、現在、名古屋商科大学ビジネススクール教授。著書『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本国の原則』(日経ビジネス人文庫、石橋湛山賞受賞)、『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書)、『ベーシック・インカム』(中公新書)、『デフレと闘う』(中央公論新社)など多数。

「2021年 『コロナ政策の費用対効果』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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