進化考古学の大冒険

著者 :
  • 新潮社
3.91
  • (3)
  • (5)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 77
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036538

作品紹介・あらすじ

地球に生きるヒトの身体の基本設計とは何か?私たちの祖先は縄文時代になぜ土器に美を求め、農耕とともに戦争を始め、紀元後に巨大な古墳を造ろうとしたのか?また、文字の衝撃をどう受けとめたのか?旧石器時代から古墳時代まで-モノを分析して「ヒトの心の歴史」に迫り、日本人の原像をも問い直す考古学の最先端。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • それなりに興味深い項目もあるのだが、本書は巾が広すぎる。
    サル学から倭人、古墳から文字まで。いくらなんでも幅が広すぎる。興味のある所だけつまんで読むのが賢明か。

  • 700万年の生物としての人類の進化のあり方を基軸に据えて、
    考古学者である著者が人類の歴史をわかりやすく構成している
    (旧石器時代~古墳時代まで)。

    昨今、ネオ・ダーウィニズムにおおいに啓蒙されてからは、
    進化学的な視点のないまま「人間とは~」なんて語る本は
    もう絶対鵜呑みにはしない(少なくとも読み手としての私は)、
    と思っていたのだが、
    本書はそういう意味では私の心にぴったりフィットする
    内容であった。

    特に面白いのは第4章の「狩猟革命と農耕革命」。
    農耕社会以前の狩猟採集様式にフィットした
    「楽に遠くに歩ける身体と空間認知に根ざした
     ナヴィゲーションの能力。」
    をいかして、「ストーリーとして狩猟」をしていた
    ヒトの姿がいきいきと描かれる。
    そしてそれがセックスアピールに結びついていたという。
    とはいえ、これが経済的不平等には至らないのが
    狩猟採集時代の特徴である。

    ところが氷河期の終わりによって狩猟採集が成り立ち
    にくくなると、農耕社会の夜明けがやってくる。
    炭水化物社会ともいえる。
    こうなってくると、安定的な農地管理が食料獲得手段となり、
    それはすなわち、人類が長い時間をかけて発達させてきた
    (自然淘汰の中で残ってきた)上述の
    「歩く力」「ナヴィゲーション能力」が発揮される余地がなくなって、
    大脳がヒマをしてしまったのだという(これは西田正規氏の説)。

    さきほどの「見せ場、セックスアピール」の要素は
    農耕社会においては、それを奪う戦闘や、開発という行為に
    引き継がれたという(これは佐原真氏の説)。
    なるほど、たしかに。ただの農耕ではセックスアピールにならない。
    そして戦闘には、経済の不平等性と大きく関わってくるわけである。

    なんと頷ける生物学的な古のストーリーであろう!
    ひっくり返せば、これまでしたり顔で「知識人」たちの語ってきた
    「人間の本質とは~」みたいな考察がどれほど根拠がなく、
    思いつきの域を出ないものであるか。

    ダーウィンとその継承者たちは、神による生物の創造を否定し、
    ヒトはほかの生物の上位種でもなんでもないことを証明した。
    それはすなわち、進化生物学的考察抜きにヒトの営みを
    語るのは、嘘っぱちでしょう、ということでもある。

    といっても、私たち人間自身は内発的にはこの構造を理解することは
    できないから、たとえば地動説なんて想像できないし、
    生物の多様性を神の創造と脳内処理してしまうほうがずっとずっと
    ラクチンである。
    ヒトが社会を作り出して以降、大半をこんな感じの認識で
    ミームを積み重ねてきたといえる。

    科学が、とうとうそれを止めることができるのだ。

    さて相当に脱線してしまったが(笑)、
    本書のコアは実は上述のところではなくて、
    考古学、すなわち人類が歴史の中で作ってきた人工物に
    スポットライトを当てる学問だということである。

    その点では、第6章の「ヒトはなぜ巨大なモノを造るのか」が
    大変面白い。
    世界各地のモニュメントはそれぞれ形が大きく違いながらも、
    その時代における心の動きの普遍性に立脚する共通性、傾向が
    見られるという話で、
    これも本当に「なるほど」と思った。

    著者はほかにもいろいろと精力的に執筆を続けているようで、
    ぜひ他の本も読んでみたいと思う次第である。

    ---------------------------------------------------

    朝日新聞のインタビュー
    http://book.asahi.com/author/TKY201002100203.html

    目次
    第1章 ヒトの基本設計—進化考古学とは何か
    第2章 美が織りなす社会—ホモ・エステティクスの出現
    第3章 形はなぜ変化するのか—縄文から弥生へ
    第4章 狩猟革命と農耕革命—現代文明社会の出発点
    第5章 われら倭人なり—民族の誕生
    第6章 ヒトはなぜ巨大なモノを造るのか—人類史のなかの古墳時代
    第7章 文字のビッグバン—国家形成の認知考古学

  • 着眼点はいままで読んだものと違うが、面白いかと問われると・・・

  • 進化考古学という聞き慣れない言葉。
    それに大冒険。
    なんとも壮大なタイトルの本だが、確かに内容は壮大だった。

    血の共有から始まり、知の共有へと進んでいく歴史に見るヒト社会の様子と、そのことに重要な役割を果すことになる「文字」の発見。

    歴史というものを普段とまったく違うレイヤーで見てみると、卑弥呼も聖徳太子も貴族も武士も出てこない、全く違う物語が浮かんでくる。


    一言で言えば、

    進化とは言葉。

  • 2010/02/24:進化考古学とは土器などの遺物や遺跡の形の変化といったことから人類がどう進化してきたかを考察する考古学とのこと。

  • 2010.02.07 朝日新聞に掲載されました。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

松木 武彦(まつき・たけひこ)
1961年愛媛県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。岡山大学文学部教授を経て、現在、国立歴史民俗博物館教授。専攻は日本考古学。モノの分析をとおしてヒトの心の現象と進化を解明、科学としての歴史の再構築を目指している。2008年、『全集日本の歴史1 列島創世記』(小学館)でサントリー学芸賞受賞。他の著書に『進化考古学の大冒険』『美の考古学』(新潮選書)、『古墳とはなにか』(角川選書)、『未盗掘古墳と天皇陵古墳』(小学館)『縄文とケルト』(ちくま新書)などがある。

「2021年 『はじめての考古学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松木武彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×