団地の時代 (新潮選書)

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著者 : 原武史 重松清
  • 新潮社 (2010年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036576

団地の時代 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

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  • 1950~1970年代の日本の団地、あるいは団地文化は唯一無二で今後二度と出現しないだろう。
    同じコンクリート製の集合住宅であっても、今のマンションとはちょっと違う。
    いわゆる街づくりなのだ。それまでの歴史から独立した自由で便利なニュータウンが団地だった。しかも、ほとんどが小さな子どもがいる同年代で、収入もほとんど同じ画一的な家族が入居している。
    団地の構造・構成は、その頃強い影響力を持っていたソ連の社会主義の影響を受けており、民間でなく、公営の住環境の提供という、最も成功した社会主義国と言われる日本の面目躍如たる側面だろう。資本主義であるがゆえに、社会主義勢力の批判を意識したと考えられる。
    筆者らは、団地の住人が革新勢力として東京の美濃部革新都政を支えた、画一的な思考が形成された等の考察を行っている。確かにあるかもしれない。総中流社会の形成にも一役買っていた可能性もある。

    当初の団地は、水洗トイレの完備や最新電気製品の生活への憧れから、最先端の住環境であり、新婚の皇太子夫妻や現役の佐藤栄作首相が見学に訪れるほどであったことは、驚きだった。外国の要人にも自慢して見せていたらしいが、そのときに「日本人の住居はウサギ小屋のようだ」という名言?が出たらしい。

    今となっては、間取りの狭さや当時のように旺盛な住宅需要はないことから、高齢化が進む一方であるが、家賃の安さ等から外国人が多く入居する状況もあるようだ。
    団地を作っているときには、建て替えずに何年持つか、とか高齢化が進んだらどうなるかとかは、全く考えていなかったろう。
    ある意味、日本全体が「今」が永遠に続くであろうという「夢」を見ることができた時代だったのかもしれない。あるいは、「終戦」の最悪の状況から抜け出す努力でそれどころでなく、一段落して目先の満足に飛びつくことに忙しかった時代かもしれない。

    最近、日本のデベロパーが東南アジア(マレーシアやベトナム、カンボジア)でニュータウンづくりをしているが、同じ「夢の住居」であっても、当時の日本の団地よりも商売の性格の強いマンションに近い気がする。香港の住宅政策は官主導の団地の匂いがするが、高層住宅群の風景は、画一的な公園や緑のある日本の団地の風景とはちょっと違う。当時の日本の団地とは微妙に違うのだ。

  • 本書は、いわゆる団地について、その来し方行く末を団地にゆかりのある識者の2人が対談形式で論じていくもの。団地がどのような背景で作られ、現在どのような課題があり、将来的にはどうなっていくのかが語られる構成がまずもっておもしろいと思いました。しかし、両者は団地を主として現在のURが建設したものと捉えている点が非常に気になるところであり、公営住宅団地も戦後の住宅不足に貢献してきた歴史があろうと思われるのに、公営住宅にはほとんど触れられていないのは残念でした。

  • 東京郊外で育った政治学者と、西日本から上京した作家が団地を語る。

    かつて団地は憧れであり、天皇陛下がひばりが丘団地の視察もした、というのが印象的。今だと団地はあまりイメージが良くないですが、イメージというのは変わるものですね。今はやりのタマワンのイメージも、きっと数十年たったら変わるのでしょうね。50-60年代、団地は憧れの存在で、その要因の1つは水洗トイレだそうです。

  • 合併だってある面、街の建て替えみたいなものじゃないですか 阪急は何に一番力を入れたかっていうと、エスカレーターやエレベーター、スロープの設置などのバリアフリー化と、自動改札やラガールカードの導入などの自動化カード化なわけですね コミュニケーションに支えられているまなざしは「見守り」になるけど、機械に任せると「見張り」になると思うんですよね

  • <目次>
    まえがき
    対話の前に 重松清はなぜ『滝山コミューン一九七四』に嫉妬したのか
    対話Ⅰ   東京の団地っ子と「非・東京」の社宅の子
    対話Ⅱ   団地の西武、一戸建ての東急
    対話Ⅲ   左翼と団地妻
    対話Ⅳ   団地と西武が甦る時
    あとがき

    <内容>
    近代政治史の原武史が同年代の作家の重松清との対談。1970年代の団地をキーワードに(原は東京都東久留米にあった「滝山団地」で小学校時代を過ごした)、現代の社会を語っていく。
    面白かったのは、団地のコミュニティの問題と鉄道による思想の違い〈西武と東急という形で紹介されている)。さらに「団地」と民間「マンション」の違い。そこにはコミュニティがあるかないか、プライバシーの濃淡、などの違いが見えること。さらに70年代までに開発された「団地」と80年代以降総合的に開発された「ニュータウン」の比較。バス利用か車かの違いが、町の形成に大きな違いを生んだなど、面白い見解が次々と出てくる。また、団地の再生に話しでも、建て替えるよりも悪いところだけを直していくスタイルの方がいいとか、古い分家賃が安くなると若者が入居して、新しい風が吹いてくることか、団地の従来のコミュニティは「孤独死」を防げるのではないか、なども参考になるのでは…。発刊から5年もたっているので、参考にする人はとっくに参考にしていると思いますが。
    それにしても、自分も小学校低学年で経験していた「団地」も歴史や社会学の研究ジャンルになることに驚いた。

  • 少年時代の思い出を大人に成長してからの視点で検証する。

  • 原武史『レッドアローとスターハウス』『団地の空間政治学』からそんなに変わらない印象で、図書館で借りるので済ませて良かったとは思うものの、対談を通すことで割と瑣末なことだったり、読者として踏み込みたかったことだったりが載っていたのはよい収穫だった。

  • 基本的には原の団地観を重松が聞くという形だが、重松が提出する、地方出身者の団地観、団地暮らしの性生活、マンションとの対比などの視点が対談を豊かなものにしている。

    原『団地の政治空間学』も併せて読むと、原の団地観が一層理解できるだろう。

  • 戦後の高度経済成長、バブル経済、バブル経済崩壊、そして少子高齢社会の進展する現在へと、社会・経済、家族構成などもめまぐるしく変わっていった日本。その時代時代に応じて変わってきた「住まい」、とりわけ都会およびのその郊外における「住まい」そして「沿線」の住宅に注目し、「団地」の果たしてきた役割と盛衰、「団地」と「一戸建て」の分布・推移などについて論じられており、非常に興味深い1冊。

    ただ、具体的な東京近郊の団地名・沿線名を聞いても、地方在住者には、いまひとつピンとこない部分があるのは否めない。

  • 感想未記入

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団地の時代 (新潮選書)の作品紹介

高度成長期に先進的な住まいとして憧れの的だった「団地」。その輝かしい歴史と老朽化した現在、ニュータウンやマンションとの比較、団地文化が花開いた西武沿線と一戸建て中心の東急沿線…さまざまな対照から浮かび上がるのは、戦後日本の姿と、少子化・高齢化社会の未来だった。「住まい」や「沿線」を見つめ続ける政治学者と作家による熱い思いに満ちた対話。

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