韓国併合百年と「在日」 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036583

作品紹介・あらすじ

1910年8月の韓国併合から1世紀、なぜ「在日」は生まれたのか…併合の原点から振り返り、戦前、戦中に海峡を越えた彼らが日本に住み着いた理由、戦後、総連(朝連)・民団が生まれてきた経緯、「北朝鮮帰還運動」と日本人妻の実態、高度成長とパチンコ産業、総連の衰退と新しい世代等々、在日二世の著者が、自らの体験を踏まえ、100年の「在日」史を総括する。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は在日二世のジャーナリスト出身の作家である。2010年5月発行、韓国併合百年関連書籍は多く出たが、在日問題に切り込んだ書物はこの書が最も纏まっているかもしれない。100年の歴史を一通り満遍なく著していると思う。戦前の歴史に関しては、何度も韓国の博物館に通ったお陰で目鼻はつくのであるが、戦後の在日の歴史は初めて知ったようなことが多かった。

    しかも、単純な話では無く、かなり込み入っている。きちんと書けば一冊要するような事柄が2pくらいで収まっている事が多いのである。特に、朝鮮総連と日本共産党や北朝鮮の関係、民団と韓国政府や日本政府との関係は、まだまだ検討史料が足りないと感じた。また、在日の資産家がのし上がっていく過程もよくわからない。

    一通りの問題の所在マップを作るには良い本かもしれない。つまり、在日問題というは、それ程にまだまだ明らかにされていない事が多いということにのだろう。

    特に直近の問題で、一番の課題は在日の人たちの参政権問題である。民主党政権誕生時には、一挙に実現の可能性が出たようだ。参政権に関して世論は政権交代後の調査で、付与賛成派が多数派になっている。しかし、恐らく安倍政権のもとにどん底まで冷え込むだろう。2008年現在、在日人口は58万9239人、日本国籍取得在日人口はそれを遥かに上回っている。三世、四世を考えれば、日本とも朝鮮半島とも違ったアイデンティティを抱えた「在日」の意見は貴重である。

    これから「アメリカと共に戦争をするのは当然の国の責務だ」というは論調が上って来るだろう。その時、日本に永住している在日の意見を聞かないのは、片手落ちであると私は思う。
    2012年12月21日読了

  • 韓国併合から100年。歴史に「たら」「れば」はタブーだが、併合がなかったら朝鮮は南北分断もなく平和な世の中が続いていただろうか?ふと考えてしまう。日本がしてきたことを肯定も否定もできないが、事実はちゃんと知るべきだ。

  •  現在でも「在日」という言葉は、様々な軋轢を思い起こすほどに日本社会でいまだに複雑な問題を含んでいると思っていたが、日本と韓国関係を冷静に俯瞰した本書を読んで、あらためてその複雑な歴史に驚嘆する思いをもった。
     日韓の歴史については、現在においても様々なイデオロギー的視点から、それぞれの勢力から極端な主張があるが、本書のように冷静にひとつひとつ事実を追いかけて体系的にまとめた本は数少ないのではないだろうかと思えた。
     「植民地支配の幕開けと在日」を読むと、1910年の日韓併合条約調印の強行は、あまりにも強引としか言い様がない。
     現在から見るとありえないような国家行為が強行された背景には当時の国際関係があったのだろうが、歴史をあとから見るとやはり誤りであったとしかいいようがないと思うが、当時別の選択肢はなかったのだろうか。
     韓国国内での日本の植民地支配反対の「義兵闘争」での義兵の死者17779人とは、まさに内乱ではないか。
     このような抵抗を押しつぶして強行された韓国併合の結果、1945年の日本の敗戦時には200万人の朝鮮人が日本にいたとは! もちろん悲惨なのは朝鮮の人々ではあるが、「歴史の悲惨さ」としか言い様がないと思った。
     本書では、日本の植民地支配とはどのようなものであったのかが具体的に詳細に記載されている。
     単に「収奪」というような単純なものではなく、朝鮮を日本の経済圏に組み入れるために朝鮮半島全体の国家システム・社会システムを根本から変革し、その結果として食えなくなった朝鮮人が日本に流れ込む結果となったことがよくわかる。
     また、「植民地支配の終焉と在日」を読むと日本の朝鮮半島を含めた国家経営が1945年の敗戦によって破綻し、その結果生じた歴史がよくわかるが、200万人の朝鮮人のうち約130万人が玄界灘をわたって帰還したとは実に凄まじいとしか言い様がない。
     そして残った在日の人々は戦後7年間で国籍が「帝国臣民」から「開放国民」「日本国籍保有者」「外国人」と4度にわたって変わったという。なんと歴史に翻弄された人々であることだろうか。
     そして本書で驚いたのは現在の「在日の婚姻問題」である。「1955年在日の結婚は81.4%が同族同士の結婚であった。それが・・・2007年には9.6%」とは! これは、すでに日本と「在日」は融合しているということなのではないだろうか。
     本書は、日本と朝鮮の過去をよく知ることができると共に、現在をも深く考えさせられる良書である。本書を高く評価したい。

  • 在日が一番多かったのは敗戦直後の200万人で最大だった。
    関東大震災で殺害された朝鮮人は日本では230人と発表したが、実際には832人。
    日本のあらゆるところに朝鮮人部落があった。とてつもなくひどい環境だった。
    1925年までは納税額が一定でない人は選挙権がなかった。1925年に男子のみに選挙権が与えられて在日も選挙権が与えられた。
    しかし戦後彼らは外国人になるとそれも奪われた。
    日本の大企業はGHQの調査が入る前に朝鮮人労働者を帰還させようとした。戦時中の悪事がばれると困るから。しかしそんなことができたのは一部の大企業だけで、他の中小企業ではそんなことすらできなかった。

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