ヒトはなぜ拍手をするのか: 動物行動学から見た人間 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036699

感想・レビュー・書評

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  • 三つほど良いのがありタイトルはそっちも良いかも

  • 4なぜというらしい。
    「その行動は、どのような刺激によって、体内でどのような変化が起きて発現したのか」
    「その行動は、個体の生存や繁殖にどのように役だっているのか」
    「その行動は、その個体の成長の過程で、どのようにして発達してくるのか」
    「その行動は、それをまだ行わなかった祖先種の行動がどのように変化して、現在の種で行われるようになったのか」
    始めはなんだかさっぱりだったが、読み進めると興味深かった。

    威嚇は肩を上げる、毛を逆立てる。
    行動の男女差には骨格が大きく影響を与えている。
    低い声は威嚇、高い声は親和。拍手するのは代用。
    ミラーニューロンによって相手の動作をなぞる。
    上位者にはエネルギーを使い、下位者には簡素かする。
    サングラスは威嚇時のポーカーフェイス。
    ポケットに手は肩を張った威嚇のポーズ。
    葛藤状態では抑制された行動が発現する。頭を掻く、爪を噛む。意図運動では初期動作を取る。
    怒り喜び笑いは声の高低で理解できる。低い声=顔を下げる、怒り。
    言葉は身振りから生まれたため、電話で誤る時も頭を下げる。
    笑いはリラックス→意外な出来事→了解→再リラックス(利益があれば笑いは増す)という流れで起こる。
    遊ぶと酸素を必要とし、口を広く開けてハッハッと呼吸する→笑いへ?
    男女の行動差には狩猟と採取の歴史が。動物を見て世話をするのは女が多く、征服しようとするのは男が多い。
    人類は緑で安らぐ。病気も早く治る。
    視覚情報は視床経由で扁桃体へ行くルートと視床から大脳皮質の視覚野経由で扁桃体へ行くルートがある。直接扁桃体は危険察知、早合点。大脳皮質経由は理性的な理解。直接情報が増すと、大脳皮質経由情報が軽んじられることも。振り込め詐欺。パニック。
    恐怖症は暗所、閉所、高所など動物的なものにはあるが、銃な現代的なものでは怒りづらい。
    映画やテレビを見たがるのは、火事を見たがるのと同じ。危険等に対する知識を得ようとしている。モビング行動。
    巨大な脳は他個体の心を読み取るため?ミラーニューロン。
    快い風景は種に取って快適な生活空間だが、ヒトは日本人であってもサバンナのような風景を快いと感じる。女性は身を隠す建物を求めたがり、男は狩猟に適した環境を求める。
    リズムは空間を規則性で把握するように物差しとして利用している。理解できるものを美しいと思う。

    非常に面白かった。
    また読み返すだろう。

  • 上司はなぜ、椅子に座って部下を呼びつけるのか?
    並んで歩くカップルは、なぜ女性が左側になることが多いのか?
    日頃の何気ない行動が人類の進化に関係していたとは驚きでした。

  • 新潮社のPR誌「波」に連載されている「ヒト、動物に会う」が面白いので、同じ著者にの著作を読んでみようと思った。

    ●:引用

    ●8 なぜ電話で謝るときにも頭を下げるのか?
     「言語はもともと、手振りや身振りで相手に情報を伝えるという行動から発達したのではないか」(略)祖先人類において、まず、たくさんの単語や、”文法”的な構造を備えた”手振り・身振り”語が発達する。それを引き継いだ初期型ホモ・サピエンスから、われわれ現世人類とほぼ同じ後期型ホモ・サピエンスへの移行の過程で”手振り・身振り”の一つ一つが発声に代わっていった。(略)そうはいっても、完全に”手振り・身振り”による言語が消え去ってしまったわけではない。それらは、口の動作へと変わっていった言語の”保護者”あるいは”後ろだて”のようにして控えており、口の動作へと変わっていった言語をいつもサポートしている。
    ●9 上司はなぜ、椅子に座って部下を呼びつけるのか?
     動物の行動に関する統一原理は、「動物は、自分の遺伝子が後の世代に、より多く伝わるように振舞うであろう」というものである。そのために、少ないエネルギー消費で、より多くの餌を効率的に獲得しようとし、少ないエネルギーで消費で、捕食者から効率的に逃れようとする。(中略)さて、以上の特性は、基本的にはヒトでも同じである。(略)つまり、敬語や丁寧語、謙譲語は、とにかく、通常語より長く、その分、発声のために余分のエネルギーを使う。その余分なエネルギーの使用が、相手に対し「私はあなたのためなら多くのエネルギーを費やすことを厭いません」「私はいつもあなたの利益になるように振舞う用意があります」というメッセージになっていると思うのである。このことは英語でも言えることであろう。(略)「下位者による、上位者の利益につながるエネルギー使用」という現象は、そのような対人間関係の一戦略であり、人間はいろいろな場面でこの戦略を用いる。
    ● 10 なぜ赤ん坊は「高い、高い」で笑うのか?
     最も起源の古い遊びは、2個体が激しく体を動かすような身体的遊びだと考えられる。そのような遊びでは、しばしば、たくさんの酸素を呼吸しようとして口が大きく開けられ、息をする「ハッハッハッ」という音が発せられる。この動作の特性が、信号として、より目立つように強調され、笑い独特の表情になったのではないかというわけである。
    ● 11 デート中でも、男がきれいな女性を見てしまうのはなぜか?
     人類史のほとんどを占める狩猟採集という社会環境の中で、女性は、居住地やその周辺で、女性同士頻繁に会話を交わしながら協力し、子供の世話や食物の採集を行ってきた。必要とされる能力の中で、とりわけ、子供の顔や体にあらわれる健康や心理の変化を敏感に感じ取る能力、衣食住に関わるこまごまとした物事の変化に反応する能力が大切であったと考えられている。進化の過程で形成された、このような女性の観察力が、男性の観察にも用いられるのである。
    ● 13 病院への見舞いに、なぜ花を持っていくのか?
     自然の重要性は、ともすれば経済的価値や環境保全などの物理的な面が強調されるが、われわれの精神の鋳型としての重要性も忘れてはならないと思う。というのも、脳が遺伝子に書かれた原因にしたがって発達していくときには、的確な刺激を与え、その発達を適切に推し進めてくれる鋳型が必要である。もしその鋳型である自然が無くなったり歪んだりしたとき、精神もまた健康な発達を遂げることはできないからである。

著者プロフィール

1958年岡山県生まれ。
岡山大学理学部生物学科卒業。京都大学で理学博士取得。
岡山県で高等学校に勤務後、2001年鳥取環境大学講師、2005 年教授。
2015年より公立鳥取環境大学に名称変更。
専門は動物行動学、進化心理学。
これまで、ヒトも含めた哺乳類、鳥類、両生類などの行動を、動物の生存や繁殖にどのように役立つかという視点から調べてきた。
現在は、ヒトと自然の精神的なつながりについての研究や、水辺や森の絶滅危惧動物の保全活動に取り組んでいる。
中国山地の山あいで、幼いころから野生生物たちとふれあいながら育ち、気がつくとそのまま大人になっていた。
1日のうち少しでも野生生物との"交流"をもたないと体調が悪くなる。
自分では虚弱体質の理論派だと思っているが、学生たちからは体力だのみの現場派だと言われている。

「2023年 『先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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