諜報の天才 杉原千畝 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036736

作品紹介・あらすじ

国難をいち早く察知する驚異の諜報能力。この男にソ連は震えあがり、ユダヤ系情報ネットワークは危険を顧みず献身した-。日本の「耳」として戦火のヨーロッパを駆けずり回った情報士官の、失われたジグソーパズル。ミステリアスな外交電報の山にメスを入れ、厖大なピースを70年ぶりに完成させた本邦初の快挙。日本が忘れ去った英知の凡てがここにある。

感想・レビュー・書評

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  • ヒューマニストとして知られる杉原千畝の別の側面。インテリジェンスオフィサーとしての彼の功績と、それを役立てなかった日本、歴史の真実を見ることができた。

  • ヒューマニストとしてだけでなく、諜報のスペシャリストとしての杉原千畝の姿が描かれていて、とても興味深かった。
    また、戦前から戦中にかけて、日本でも諜報活動に命を賭けた人たちが存在していたのを知ることができたことも、とても有意義だった。
    若干、著者の思い入れが強い感じはあるけど……

  • 「六千人の命のビザ」を読んだのが、確か高校生の時で、それで杉原氏を知った。
    しかし、彼が情報を扱うスペシャリストだったということは、この本の話を聞くまで全く知らなかった。
    ソ連から入国拒否、ナチスドイツからも名指しで警戒されていたほどのキレ者。
    読めば読むほど、何なんだこの人は!と畏怖の念が湧く。
    しかし、杉原氏だけでなく、数名の情報スペシャリストがおり、様々な有益な情報も掴んでいたのに、彼らが活かされなかったことに胸が痛む。
    歴史にifは厳禁だけれども、それでももしかしたら、死なずに済んだ人もいたのではと思ってしまう。
    それを直接引き起こしたのは、情報の扱い方がわかっていなかった(もしくは故意に無視した)当時の上層部だろうが、間接的には世の流れも加担していたのだろう。
    今の世に重ねても、思うところの多い本だった。
    それを抜きにしても、とても読みやすく、丁寧な調査に裏打ちされた一冊。
    杉原氏一人のことだけでなく、第二次大戦の背景も整理出来る。
    また読み返したい。

  • 外交官として任地に赴き、時には独自の情報網を構築・駆使しながら国へ貢献するという、インテリジェンス・オフィサー(諜報員)という面から、杉原千畝を解説した本。杉原自身の軌跡をたどるには、当時の時々や他の外交官の状況とも合わせて考察する必要があり、本書も、杉原氏以外の、日中戦争〜第2次世界大戦中で活躍した外交官の働きも知ることができる。外務省留学生時代から退省まで。

  • 杉原千畝について、客観的にかつ詳細に調べられているなという印象でした。ヒューマニストとしてではなく、インテリジェントオフィサーという観点からのスポットにすごくこだわってます。

    6000人の命を助けたヒューマニストのイメージを持たれやすい杉原千畝の新たな一面を知ることができます。

    筆者の推測も多分に入っていますが、その考察もなるほどありうると思わせるものばかりです。杉原千畝は、本省からの指示を単に無視していただけではなく、アリバイ工作をしながら入念にことをすすめていたのだなぁと感心しました。

    第二次世界大戦の背景を知っていれば、より理解も深まる本です

  • 映画の杉原千畝を見てから、興味がでて、読みました。

    当時の情報収集が、どんなに大変だったものか、通信手段が電報ということ、その中で、家族も危険かもしれない中、命をかけて取り組んでおられた様子が、垣間見えました。

    第二次世界大戦の日本の様々な判断ミスは、有名ですが、これほどの人が日本人として、情報収集していたのに、活かされなかったのは、本当に、残念な思いでした。

    他の関連本も読みたいと思いました。

  • [心のみならず理も]迫害に追われた多くのユダヤ人に対し、「命のビザ」を自らの判断で発給し続けたことで名前が広く知られる杉原千畝。そのエピソードの故に、ヒューマニストとしての側面が強調される一人の外交官の姿を、卓越したインテリジェンス能力という側面からもあぶり出していこうとした意欲作です。著者は、杉原千畝に関して大学時代から研究を続けてきたという日本外交史の専門家、白石仁章。


    少し白石氏の筆に熱がこもり過ぎている感は否めませんが、本書のおかげで杉原像はより鮮明、かつ実像に近いものになったように思います。カウナス勤務に至るまでの杉原氏の歩みと合わせ、今まであまり語られてこなかった「命のビザ」に関する謎の解明にも具体的に踏み込んでおり、大変読み応えがありました。


    日本ではあまり知られていない、第二次世界大戦期における東欧事情を学ぶことができるのも本書の魅力の1つ。特に、バルト3国と言われるエストニア・ラトビア・リトアニア、そして独ソ不可侵条約で日本とともに多大なマイナスの影響を被ると当時指摘されたポーランドに関する情報は、それだけで何冊もの本が書けるのではと思わせてくれるほどでした。

    〜史料が語る杉原千畝の姿、それは従来語られてきた偉大なヒューマニストの姿を否定するものではない。むしろ、偉大なヒューマニストの側面に、稀代のインテリジェンス・オフィサーの姿が加わってこそ、より鮮明に杉原千畝という人物を描き出せるのではないかと思う。〜

    日本で公開中の映画『杉原千畝』(そして同時にヒットしている『海難1890』)を観てみたい☆5つ

  • 千畝さんについて知りたくてやっと手に入れた本。
    大まかな話は知っていたけど実際にどんな仕事をしていたのかが分かる一冊だった。
    千畝さん以外の周りの動きもよくわかる!
    千畝さんのところだけピックアップして読んでもいいかも。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー“ビブリオバトル”で登場。
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/highlight/02.html


    早稲田大学 法学部 山口帝名イチオシの1冊として紹介したのが白石仁章による「諜報の天才 杉原千畝」

    「日本のシンドラーとして働いてた杉原千畝さんの人生を通して
    未来を自分の都合のいいように無理矢理ねじ曲げるのではなく
    今ある情報を集めて分析し、
    未来にとって最善の方法は何かそれを考えることが
    人生においてすごく重要ではないかを表現している本で、
    若者から中高年まで幅広い人に見てもらいたい」
    と時間内にまとまったプレゼンをしました。

    しかし結果は……惜しくも敗退。


    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/teaser.php

  • 杉原千畝と言えば、第2次世界大戦時、外務省の命令に反し約6000名のユダヤ人にビザを発行して彼らの命を救ったヒューマニストとしてご存じの方も多いかと思います。

    本書は、その杉原千畝氏をインテリジェント・オフィサー(諜報要員)として評価した本です。

    本書の内容に簡単に触れると、

    杉原氏が息子を医者にしたかった父の意向に逆らい、勘当同然の身で現在の早稲田大学教育学部に進学した学生時代に始まり、ハルビンでのソ連相手の諜報・外交活動、ヨーロッパ赴任、退官後の去就など、杉原氏の経歴とその当時の世界情勢についての解説が載っています。

    特に外交官としてのキャリアを歩み始めたハルビンにおいて、対ソ連諜報網を構築し、ソ連側と厳しい駆け引きを行った事や

    ソ連に対して重大な関心を抱いていた当時の外務省により、杉原氏が対ソ諜報戦の最前線である北欧諸国に派遣された事。

    そして彼がポーランドとの密接な関係を通して様々な情報を入手していた点などが興味深かったです。


    また、当時の国際情勢の解説では、ソ連の思惑に気づくことなく、その表面的な態度に振り回され、最終的に併合されてしまったバルト三国の事などが解説されており、それらを読んでいくと

    「ソ連の真意を読み間違えていなければ・・・」と思わずにはいられ無かったのが正直な所です。


    他に、

    「記録では2139枚しかビザを発行していないはずなのに、杉原氏が約6000名の人命を救ったと言われているのはなぜか」

    と言う疑問に迫っており、その過程において、杉原氏が外務省を欺く形でビザの発行を続けていた事実が浮き彫りにされています。



    相手の真意を見抜く諜報活動の大切さと(少なくとも戦前の日本では)外交官自身がその一翼を担っていたと言う解説が印象的な本書。

    本書に書かれている当時のソ連とさほど違いがあるように見えない現在ロシアの事を考えると、

    本書は、ただ単に杉原氏の業績を振り返る本と言うだけでなく、

    ロシアに対処するには彼らに対する諜報活動が必要不可欠

    と言う現実を指摘している本にも見えます。


    色々と考えさせてくれる本ですので、一読をおすすめします。

  • 1939年、ドイツのポーランド侵攻を機に、欧州大戦が勃発した。リトアニアには多くのポーランド系ユダヤ人が逃れており、反ユダヤ思想の強いソ連において非常に危険な事態におかれていた。その状況下において、日本を通過してアメリカなどに逃げれることを希望した避難民に、数千通もの通過ヴィザを発給した人物、それが杉原千畝である。後に「命のヴィザ」と称されたその功績は、国際的にも高く評価され、イスラエルから日本人として唯一の勲章が贈られたという。本書はそんなヒューマニストとして名高い杉原千畝を、諜報家としての側面から分析した一冊である。

    ◆本書の目次
    プロローグ:杉原の耳は長かった
    第一章  :インテリジェンス:オフィサー誕生す
    第二章  :満州国外交部と北満州鉄道譲渡交渉
    第三章  :ソ連入国拒否という謎
    第四章  :バルト海のほとりへ
    第五章  :リトアニア諜報網
    第六章  :「命のビザ」の謎に迫る
    第七章  :凄腕外交官の真骨頂
    エピローグ:インテリジェンス・オフィサーの無念

    「諜報」とはインテリジェンスの和訳であり、「地道に情報網を構築し、その網にかかった情報を精査して、未来を予測していく。そしてさらに一歩踏み込んで予想される未来において最善な道を模索する」ということである。「謀略」と誤解されることが多いが、「謀略」は未来を都合の良い方向へ強引にねじ曲げるものであり、「諜報」とはむしろ正反対にある。

    杉原を一躍有名にした「命のヴィザ」については、今を持って謎が多いという。外務省と杉原との電報のやり取りに不可解な点があまりにも多いのだ。数の不一致、一度ヴィザが発給された人物への謎の照会、返信までの間隔の開き。そして、その謎は、当時ドイツとの同盟関係にあった日本の外務本省を欺くための「アリバイ工作」であったことが本書によって導かれる。彼のインテリジェンス活動の本領は、自国の官僚組織に対して発揮されたのである。

    それにしても、そこまでの危険を負いながらも、杉原をビザ発給へと決断させたものは何だったのだろうか。重要なヒントが「決断 外交官の回想」という手記に記されている。

    曰く、全世界に隠然たる勢力を有するユダヤ民族から、永遠の恨みを買ってまで、旅行書類の不備とか公安上の支障云々を口実に、ビーザを拒否してもかまわないとでもいうのか?それが果たして国益に叶うことだというのか?

    この文面が示すのは、杉原がユダヤ人というものの未来を的確に予測し、最善な道を模索したということに他ならない。省益より国益を考え、個人でリスクを取って決断した杉原千畝、その恩恵は百年近く立った今でも、我々が預かっているものである。百年先の国益を考えた決断ができるか、個人でリスクを取った判断ができるか、今こそ、彼のインテリジェンスに学ぶところは大きい。

  • 『消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い―(新潮選書)』で言及されていた杉原氏の活躍を知りたいと思い、手に取った本。

    他の方のレビューにもあるように、著者の杉原氏に対する熱い尊敬の念がほとばしりすぎているきらいもあるが、一国の首相が「欧州情勢は複雑怪奇」とさじを投げた当時の情勢を、杉原氏に関係するところだけ(まぁ、それが重要な部分なのだが、)うまく切り取り、氏のインテリジェンスオフィサーとしての働きを丁寧に描写していて、知的好奇心が刺激される1冊である。

    インテリジェンスの活動は、そもそも後世に残せない活動が多いため、どうしても推察を含むこと多くなるが、本著者はその推察にもできる限り状況証拠を基に描こうとしており、その意味でも安心して読み進められた。

  • 白石仁章著『諜報の天才杉原千畝 (新潮選書)』(新潮社)
    2011.2発行

    2016.10.23読了
     杉原千畝といえば、第二次世界大戦中に外務省の命令を無視して、ユダヤ人に日本通過ビザを発給し続けた人道の人というイメージがあったが、杉原千畝はヒューマニストの側面だけでなく、インテリジェンスオフィサーとして諜報の天才であり、いち早く独ソ開戦の情報を掴むなど日本のために命がけで奮闘していた。杉原千畝は日本では知名度が低く、戦後も旧外務省関係者から非難されていたようだが、その理由は日本の国益よりユダヤ人を優先する人物と勘違いされていたからだろう。
     国籍や人種に囚われず、人を救うことに国益は関係ないはずなのに。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000011126321

  • 諜報のスペシャリストとしての側面から、杉原さんの辿ってきた道を丁寧に説明されている。少し難しいところはあったが、コツコツと気の遠くなるような緻密な作業を重ねながら、日本のためになる情報を集めていたことが理解できた。たくさん地名が出てくるので、ところどころに地図が掲載されていたらもっとわかりやすかったなと思う。

  • 現実と組織のルールの間で、なんとか命のビザを発給し続けた姿が描かれている。
    インテリジェントとはなにか、情報をどう活かしていくかという命題は、戦時中でなくとも、むしろ情報過多の現代にこそ生かすべき教訓であると考える。
    人道一辺倒ではなく、かと言って冷徹な官僚でもない、人間杉原の姿が垣間見える本だった。

  • ☆インテリジェント・オフィサー

  • 【要約】


    【ノート】

  • ナチスから6000人の命を救った命のビザで知られる杉浦は、実際には一にスターリン、二にヒトラーといった感じでドイツよりもソ連を恐れていた。

  • 前々から読もうと思っていた本を、映画を見る前に読んでおこうと思って図書館で借りた。独断で通過査証を発給し続けた話は有名だが、ナチスではなくソ連から逃れるユダヤ人のためだったとは知らなかった。優秀な外交官だったのだろうと漠然と想像していたが、その情報収集能力を恐れたソ連が入国を拒否するほどとは思わなかった。大使、公使ならともかく、二等通訳官が好ましからざる人物として入国を拒否されるなど、前代未聞のことだったそうだ。
    (2016/04/08追記)
    今の日本の外交官もこういう情報収集活動をしているのだろうか。ちょっと想像がつかない世界だと思った。

  • 2015.3

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著者プロフィール

2022年2月現在
外務省外交史料館職員

「2022年 『命のビザ 評伝・杉原千畝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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