説き語り 日本書史 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036941

作品紹介・あらすじ

鑿で刻る書に始まる三千五百年の厚みをもつ中国の歴史に楷行書の時代になってから途中乗車し、いち早く近代化することによって、中国書史から途中下車したのが、日本書史である-三筆、三蹟、俊成、一休、良寛、さらには明治の元勲まで。古代から近代にいたる日本書史のダイナミックな流れを一望に収める。思索する書家がやさしく語る日本書史の入門編。

感想・レビュー・書評

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  • 日本書史が判りにくかったので、もう一冊。こちらは「思索する書家」石川九楊による日本書史解説。独自の筆蝕理論に基づいて藤原俊成、藤原定家の書を日本書史の一つの到達点としたり、御家流の中で生まれる良寛の書に近代の批判性を見い出すなど、実際の作品に触れてその書きぶりから考察する書史感が素晴しい。が、その書きぶりを読み取る眼力は自分には当然ないので、ふむふむと思って読むのみ。

  • テーマ史

  • 楷書を、中国思想(政治)の反映と見て、それを拒むところから日本の書史が立ち上がった、という。

    筆者の述べている、日本の書の歴史は、ざっとこんな風に理解したらよいだろうか。

    平安前期の三筆は、楷書には収まりきれなかった「雑書」を学ぶことで、独自の方向へ歩みだす。
    三蹟は、筆を斜めにする「和様」の書を打ち立てていく。
    筆者は、日本の和歌の書の可能性の極致を、藤原俊成・定家父子に見ているようだ。
    そこからは、筆者によれば、見るべきもののない「流儀書道」の時代(中世)がやってくる、と。
    江戸期は、お家流が成立するほか、唐様、僧様と、唐様が散文化した江戸市民の書が生まれ、明治がやってくる。
    明治には、世界標準としての中国の書法が入ってきて、現代の書の基礎が築かれる。

    図版が多くて、それぞれの時期の書の特徴をつかむのには大変ありがたかった。
    また、日本の書の歴史について、おおよその見取り図が出来たのもよかった。
    とはいうものの、日本文化史のおおよその見取り図(平安期に国風化し、その後独自の道を歩み、明治期に大変革を遂げる)と大きく違うわけではない。当たり前なのかもしれないが・・・。

    『二重言語国家・日本』を読んでいないけれど、本書にもおそらくその考え方(漢字の受容による、複線的な字の理解)が見られるようだ。
    99年に出たときは、日本語学を専攻する同級生たちが違和感を表明していたので、なんとなく食わず嫌いをしてきたのだが・・・機会があったら読んでみようか。

  • 書の歴史をなぞりながら、日本の文化についても語られている。

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著者プロフィール

書家。京都精華大学客員教授。1945年福井県生まれ。京都大学法学部卒業。1990年『書の終焉 近代書史論』(同朋舎出版)でサントリー学芸賞、2004年『日本書史』(名古屋大学出版会)で毎日出版文化賞、同年日本文化デザイン賞、2009年『近代書史』で大佛次郎賞を受賞。2017年東京上野の森美術館にて『書だ!石川九楊展』を開催。『石川九楊著作集』全十二巻(ミネルヴァ書房)、『石川九楊自伝図録 わが書を語る』のほか、主な著書に『中國書史』(京都大学学術出版会)、『二重言語国家・日本』(中公文庫)、『日本語とはどういう言語か』(講談社学術文庫)、『説き語り 日本書史』(新潮選書)、『説き語り 中国書史』(新潮選書)、『書く 言葉・文字・書』(中公新書)、『筆蝕の構造』(ちくま学芸文庫)、『九楊先生の文字学入門』(左右社)、『河東碧梧桐 表現の永続革命』(文藝春秋)、編著書に『書の宇宙』全二十四冊(二玄社)、『蒼海 副島種臣書』(二玄社)、『書家』(新書館)、作品集に『自選自註 石川九楊作品集』(新潮社)、『石川九楊源氏物語書巻五十五帖』(求龍堂)などがある。

「2022年 『石川九楊作品集 俳句の臨界 河東碧梧桐一〇九句選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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