科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036958

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  • ・第Ⅰ部…ネイチャーとサイエンスの違い
    ・第Ⅱ部…2誌を巻き込んだ科学史上の事件
    ・第Ⅲ部…日本の科学のあるべき姿とは
    ・特別鼎談…(天文学)中川貴雄・(生物学)中垣俊之・著者

    「新潮45」に連載された「科学の興亡 ネイチャーVS.サイエンス」を加筆修正したもの。メッセージ性の強い書名で少し腰が引けてしまうが、実際のところ評論と言うより科学エッセイに近い。
    読者自身に科学的な視点で物事を考えてもらうことを目標に据え、常に中立的立場から率直な物言いがなされているところが評価できる。

    私は幼少時代に「子供の科学」を買い与えられていたものの、結局ほとんど手をつけなかったような科学嫌いだが、本書は抵抗なく読めた。全篇を通じて科学ネタが満載で、「実現可能なタイムマシン」や「粘菌レーダー」の件には興味をそそられた。また、鼎談で生の研究者の声を聞けるのもよい。「科学は(もしくは自分の研究は)何の役に立つか?」という問いに対する各人の回答が興味深い。
    本書の白眉は、2誌の違いを歴史から運営方針まで丁寧に解説した第Ⅰ部だと思う。私は仕事上「ネイチャー」や「サイエンス」を扱うが2誌の違いはわからなかったので、第Ⅰ部は非常に役立った。第Ⅰ部・第Ⅱ部は、とくに理系学生に強くお薦めしたい。

    <メモ>
    『ネイチャー』
    英・商業誌
    発行元:出版大手のマクラミン社→独・ホルツブリンク社(サイエンティフィック・アメリカン誌の親会社)の傘下へ
    編集長:個性的
    特色:批判的主張やニュース記事など、ジャーナリズム色が強い
       日本語コンテンツ→ネイチャー・ジャパン社「ネイチャー月刊ダイジェスト」
    態度:寛容・余裕

    『サイエンス』
    米・会員誌→同人誌的色彩
    発行元:科学振興団体のAAAS
    編集長:優等生
    特色:アメリカの科学政策を導くという壮大な理念
    態度:合理性

  • タイトルと内容が解離気味に感じたが、とても興味深かった。特に印象的だったのは、日本における英語公用化の流れに対する意見を述べていたところ。なるべく中立に客観的な視点で論ずる姿勢に好感を抱いた。

  • やはりこの著者は科学エッセイがおもしろい。「バカヤロー経済学」は、正直結構首をかしげざるを得ないところが多かったのですが、この本は文句なくおもしろかったです。唯一、タイトルが内容とあまり合っていないように思える点だけが不満でしょうか。
    この本は、元々月刊誌に連載された「科学の興亡 ネイチャーvsサイエンス」というエッセイ集をまとめて書籍化したものだそうで、そのため各章の内容が完全に独立していて、いわば11本のエッセイ+巻末鼎談という構成になっています。そして、内容も、題名から想像されるような日本の科学教育を弾劾するようなものでは全くなく、イギリスの科学誌「ネイチャー」とアメリカの科学誌「サイエンス」を対比させつつ、現代科学や学会の様々な話題について、切れ味よくわかりやすく述べてくれているもので、肩肘張ったところは全くありませんでした。
    いろいろおもしろいところはありましたが、僕として実は一番印象に残ったのは、科学の部分ではなく、日本における英語の使用に関して述べていたところでした。
    社内英語公用化に関して、「人間の論理的思考の大部分を司る言語は、付け焼き刃でこなせるほど甘いものではない。(中略)英語が堪能でない日本人社員同士が、拙い英語でしゃべり合っていては、その英語力に見合った想像力しか発揮できないのは、火を見るより明らかだ。日本企業が世界と伍して戦うために必要なのは、写真全員が拙い英語を振り回すことではなく、高度な能力を備えた通訳を必要な人数だけ雇い入れることだと私は思う」との意見が書かれていましたが、自分自身の経験に即しても全面的に同感しました。
    原発についての意見についても説得力がありましたし、勉強になること代でした。また、日本語で読める「ネイチャー・ダイジェスト」の存在も、これを読んで初めて知りました。早速購入してみましたが、これは確かにお値打ちです。
    久々に読んだ甲斐のある本でした。

  • 1-1 科学論・科学史

    ・ネイチャーとサイエンスの違い
    ・韓国人はなぜバカにされるか?
    ・粘菌の動きと微分方程式
    ・トリウム原子炉と衆愚と集合知
    →竹内薫『「ネイチャー」を英語で読みこなす』
    →量子コンピュータ
    →宇宙エレベータ

著者プロフィール

たけうち・かおる サイエンス作家。1960年生まれ。東京大学教養学部教養学科、同大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻、理学博士)。フリースクール「YES International School」校長も務める。著書に『99・9%は仮説』(光文社新書)、訳書に『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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