未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037054

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  • 井上毅が独裁国家ができないように権力の分散化・多元化なされるように明治憲法を制定した。よって日本ではファシズムが未完に終わったという論旨。結果的に「持たざる国」が「しらす」型組織の無責任体質に陥り、玉砕思想に至ったのは必然とも言えるのかもしれない。逆に言えば、所謂「日本は精神論的」と呼ばれるものは文化的なものではなく、制度的かつ物質的なものが要因であるとも言えるのではないだろうか。

  • 持たざる国のジレンマと、近代日本の陸軍を取り巻く思想。

  • 大正期の健全な軍事ドクトリンが存在した日本陸軍がいかに変容して堕ちていく様を、実に分かり易く紹介されてますな。酒井鎬次みたいなマイナーだけど超有能な将官とかの紹介があるのは実に面白い。

  • 石原莞爾 「持たざる国日本の世界戦略」満州国を育て世界最終戦争に備える
    満州でソ連経済をモデルに高度成長を実現 日本の資源・産業基地

    明治政府の制度設計の誤り
    元老による属人的な国家運営 組織ではなく個人に依存 
    兼務体制 伊藤博文 東條英機

    シェリーフェン戦略(独参謀総長) 短期決戦主義→早期講和に持ち込む 
    ロジステックは必要ない 長期戦になれば敗北 国力の小さい方が不利
    山本五十六の真珠湾攻撃・早期空母艦隊決戦を求めたのも同じ考え

    その時代のロジックがあった
    それをきちんと整理しないと反省も教訓も得られない 誤りを繰り返す
    日本の風土 官僚主義・無謬主義

  • 日本が戦勝国として関わった第一次世界大戦を起点に「なぜ日本が勝てるはずもない戦争に飲めりこみ滅びたのか」を読み解く。

    未完のファシズムという意味は、明治日本は天皇中心の国家を築こうと試みたにもかかわらず、天皇以外にはリーダーシップをとれる仕組みがなかったこと。

    確かに日本のヒトラーと言われる東條英機も独裁者だったか?というとNO。この「本気で意見が一致してひとまとまりになり誰かの指導や何かの思想に熱烈に従うことは、いついかなるときでも、たとえ世界的大戦争に直面して総力をあげなくてはならないときでも、日本の伝統にはない」「幕末維新は尊皇派も佐幕派も開国派もいたからこそかえってうまく運んだ。いろんな意見をもつ人々が互いに議論したり様子を見合ったりして妥協点を探る。一枚岩になれない。逆にぎくしゃくしながらすすむ。・・・のが日本の伝統だ」

    今のコロナ禍の日本にも通ずるところがあるな!


    勇猛果敢な突撃で大国ロシアを打ち破り世界を驚かせた日本は、第一次世界大戦での欧州の戦闘から時代は砲兵・工兵の時代と見抜く。そこから「持たざる国」日本がどのように世界で生き残るかの模索が始まる。

    持たざる国を持てるに国変えようとした石原莞爾ら統制派、タンネンベルクの戦いや桶狭間のように寡兵でもって大軍を打ち破る短期決戦を目指す皇道派。しかし結局いずれもできない泥沼の日中戦争・対米戦争へと走り出してしまう。

    最後に残ったのが「精神で勝つ」ほとんど宗教的狂気に感じられる中条末純の「戦陣訓」。

    この物凄く不合理な飛躍を丁寧に読み解いているのだが…それでもやっぱりここの狂気への跳躍は理解できない。

    しかし…理解できないが…。アッツ島での玉砕、米軍従軍記者が恐れた日本の滅びの美学には、同意できないと100%言い切れないところが怖い。自分の心のどこかの片隅に、えも言われぬ誇らしさのようなものがあり、恐ろしい。絶対に繰り返してはならない悲劇なのに。命令に従わざるを得ず母や妻、子供のことを考えながら死にたくなくても死なざるを得なかった祖父のような人たちがいっぱいいたはずなのに!

  • なぜ第2次世界大戦のときの日本は、勝ち目のない戦争に突入し、精神論を振りかざして、玉砕や特攻などを美化して破滅に突き進み、戦後は戦争責任がどこにあるのか分からない状態になっているのか。子どものころから疑問だった。わたしと同世代の著者は、第一次世界大戦に衝撃をうけた軍人たちの反応にルーツはあるとにらみ、当時の政治体制が中途半端なファシズムであったからだ、と考察する。その原因は明治の政治システムにあるという。天皇は自分の意思をもたず示さず鏡に徹して、権力が集中しないように、つまり誰も責任をとらないように分散させていた。精神論を鼓舞させたのは、「持たざる国」が窮鼠猫をかむ状態だったのか?いや死をも恐れぬ様子を見せて、戦意喪失を狙ったのだと!?おおまさか!それが作戦!?

  • ☆今だに「持たざる国」だな。

  • 日本のファシズムはファシズムではなかった、という。

  • 誰も本気で勝てるとは思っていなかった戦争へ、なぜ引きずり込まれていったのか?
    そこが知りたかったが、前提となった諸要素の解説に留まり、知りたいことが、もう一つ明確になっていなかった。戦争の直接の要因については書かれているものは他に多いため、違う切り口でのアプローチをされたのであろうと推測する。
    私は第二次世界大戦について書かれたものについては、ほとんど読んだことがなく、また知識もないため、今後知識を得ていくことにより、後日この本を再評価したい。

  • 【要約】


    【ノート】

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著者プロフィール

1963年生まれ。政治思想史研究者、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(いずれもアルテスパブリッシング、吉田秀和賞およびサントリー学芸賞)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞)、『鬼子の歌』(講談社)、『尊皇攘夷』(新潮選書)ほかがある。

「2023年 『日本の作曲2010-2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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