文明が衰亡するとき (新潮選書)

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著者 : 高坂正堯
  • 新潮社 (2012年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037092

文明が衰亡するとき (新潮選書)の感想・レビュー・書評

  • 文明が衰亡する原因は何か。
    ローマ帝国の場合は、①蛮族の侵入、②ローマを発展させたエリートの減少と奴隷解放による活力と進取の気象の欠如、先見と常識の不足、道徳的・政治的活力の弱体化、③雨に恵まれたよい気候が悪化し乾燥することによる農業の弱体化やマラリアの蔓延、④繁栄をもたらした福祉国家が、逆に税を重くし、社会の担税能力を超える福祉国家化、である。
    ヴェネチアの場合は、①新航路の開拓の失敗、②新進気鋭で商業的であった文化の衰退から乱伐からくる木材の不足、である。
    現代のアメリカに目を転じると、①都市計画の失敗、②拡大路線に対する諦め、③政府の拡大からくる政府の疲弊など、衰亡の兆候が表れ始めている。
    通商国家は、異質の文明と広汎な交際を持ち、さまざまな行動原則を巧みに使い分け、調和させて生きている。しかし逆に自信やアイデンティティを弱め、道徳的混乱が起きる。通商国家は、成功に酔い、うぬぼれると同時に、狡猾さに自己嫌悪を感じる。その結果、社会は分裂し、より平穏な生き方への傾向を求め、ネットワークの瓦解と変化への対応弱める。通商国家である日本がこれらの文明と同じ轍を踏まないようにするには、変化に対する対応する姿勢を持つ必要がある。

  • 古代ローマから海洋国家ヴェネツィア、現代のアメリカまで大国の歴史を事例に上げつつ、繁栄と衰退の要因を探った内容。刊行は1981年。書かれたことは今から振り返ると古いものが多い(特にアメリカについて書かれた章)。が、示唆に富む。
    人であれ国家であれ、時代・環境の変化に対応できない柔軟性や開放性の欠如、活力の減退は、どの大国においても衰退原因である。が、一番印象に残ったことは結局その国の繁栄をもたらす強みは弱みにもなるという重い事実だった。盛者必衰は世の真理という達観が何事も必要らしい。

  • パートナーシップ、有限会社はそのひとつ(欧州文明の特徴的様相)である。家族のようあ血縁共同体でもなく村のような地域共同体でもなく、ある目的のために何人かの人が集まって団体を作るという制度は、近代社会の発展を可能ならしめた重要なものだが、それはヴェネチアで始まった。

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/4063690.html

    ローマ帝国、通商国家ヴェネツィア、現代の超大国アメリカの衰亡の歴史について述べられている。これらの国の歴史から現代の日本を読み解いている。

    この本は1981年に出版されているが、現代の日本にも通じる部分があると感じた。今後、歴史・国際政治の専門的な知識の勉強に加え、阪神・淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件、同時多発テロ、被害市日本大震災につながる部分があるかどうか確かめながら読み進めたい。

  • ■文明衰退

    A.昔から今まで人々は、種々の角度から、文明の衰亡を論じて来た。中でも、ローマ帝国の衰亡については、多種多様の説がある。例えば ――
    ・蛮族(ゲルマン民族)の侵入によって亡ぼされた。
    ・ローマを発展させたエリートたちの家系が絶滅し、それに代わって秀れた新エリートが出現しなかった。
    ・気候の変化により、農業が衰頽した。
    ・強さの源泉である共和政が崩れ、専制政治が出現した。
    ・経済の中核である奴隷制大農場の存続が難しくなった。

    B.経済的な要因に、ローマの衰亡の原因を求める説は多く、それは今日における支配的な説と言える。

  • イギリスには恒常的な同盟国はない。恒常的なイギリスの国益があるのみである
    イギリスでは官僚出身の政治家はまずいない
    通称国家は常に新しい変化に対応する姿勢をもつ

  •  新潮社が復刊して、おもわずなつかしくて、職場の本屋で購入。

     役所に入った30年くらい前にとってもはやって、自分も本だなに昔あった記憶がある。今読み直しても、新鮮。(ただ、記憶力が悪いだけか?)

     高坂さんは海洋国家のなんとかという本もだしているが、やはりヴェネチアの衰亡の話がおもしろいし、日本に参考になる。

     ヴェネチアの衰亡の原因のいくつか。

    (1)ギルドが存在していて、イギリスなどが新しい品質の毛織物を輸出しだしたのに、既得権に固執して新しい技術を導入しなかった。(p161)

     通商国家だから、どんどん海外に競争相手がでてくる。それに勝つためにはイノベーションが必要。それを阻むもの。日本だと業界団体とかなんとか協同組合のたぐいか。

    (2)木材が不足して、ヴェネチアの造船業が割高になった。その一方で、保護主義的な措置をとって安いイギリスやオランダの船を購入するのを抑制した。(p157)

     時代に遅れた自国の産業を保護するつもりが、自国の文明自体を衰亡させてしまう。

    (3)パドゥウ大学の自由な雰囲気(同じテーマで同時に競争講義をするなど)が失われ、カトリックの不寛容な精神が押し寄せてきたこと。(p167)

     ガリレオが地動説を唱えたとき、パドゥウ大学にいたが、次第に居づらくなって1610年の当大学を去ったらしい。

     自由闊達な議論や異論を許容する雰囲気は今の日本社会やいろいろな組織にはあるだろうか。幸いにも、国の役所にはまだその雰囲気があるように思うが、それが続くように願いたいし、自分も努力したい。

     もう古典になっているこの本を読むと、しかし、日本は岐路に立っているな、こころしないといけないと思う。

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文明が衰亡するとき (新潮選書)の作品紹介

なぜ文明は衰亡してしまうのか?本書では、巨大なローマ帝国が崩壊する過程や、中世の通商国家ヴェネツィアの興亡を検証。繁栄そのものの中に衰亡の本質はあり、その原因には多くの共通項があることを説く。そして現代、膨張し続ける超大国アメリカにも、すでに衰亡の萌芽が…。人類の栄光と挫折のドラマを描く、必読の文明論。

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