消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)

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著者 : 岡部伸
  • 新潮社 (2012年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037146

消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)の感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦中にスウェーデンで欧州情報を担当した今で言うインテリジェンスオフィサーの陸軍の小野寺信少将の記録である。杉原千畝を配下にしていた人だ。ソ連の対日参戦という極秘情報を入手打電したのに大本営で握り潰されたのを本人が知ったのは、なんと1983年だそうだ。筆者は、その後に公開された米英資料や、本人の家族に語った証言テープなどを渉猟し、どのように戦時下の異国で情報入手ルートを作り上げたかを克明に記している。本書の出だしはクドイ部分もあったが、しだいに筆ものってきてグイグイ引き込まれた。当時の日本に第一級のインテリジェンス能力があったのがよく分かる。でも、それを使いこなせないのは、変わらないのかもしれない。筆者は新聞記者だが、別の出版社が出したところにも、本書に対する熱い意欲が感じられる。力作である。

  • 2012年刊。著者は産経新聞編集委員。第二次世界大戦の日本の戦争指導につき、一部の単発・例外事象を除き、情報保秘と活用に決定的問題のあったことは従前言い尽くされ、本書もこれを追認。ただ、従来資料に加え、新規に公開されてきた英国秘密文書を新基軸に、エストニア、スウェーデンから的確な情報を送信し続けた武官小野寺信の足跡を辿る。エストニアでの杉原千畝との邂逅、ポーランド情報担当者に貫いた誠、高いインテリジェンス能力は驚異的。ちなみに、本書は日本の参謀本部戦争指導班へのコミンテルンの浸透につき興味深い仮説を提示。
    班員だった瀬島龍三はもちろん、戦争指導班長種村佐孝大佐は要注目すべき人物。本書で触れられるが、戦後、種村は本当に日本共産党に入党したか? また本書はいう。戦況不利の中、日本の軍人指導部らは顕著な英米嫌悪、ソ連擦り寄りの心性と。ただそれが中立条約締結相手国だからか、他の要素はなかったか? こういう疑問も湧く。ソ連対日参戦決定のヤルタ密約だけでなく、独ソ戦開始、独軍戦況不利、それゆえの対米参戦回避打診、緒戦から終結模索打診、P宣言受諾直前の天皇制保持容認の方向性など、小野寺提供情報は実に特筆すべき。
    ただし、些か穿った書き方になるが、「誠」とはいえ、小野寺も、多聞に洩れず、多額の資金・機密費を投入しており、貧者の誠、紐付きのない誠、というわけではない。また、小野寺が的確な情報提供者だから、他の情報担当者との繋がりが出来た面も。これらは、ある意味当然のことだが、著者の小野寺贔屓を一歩引いて観察すべきことを示唆すると言えようか。とはいえ、クロスリファレンスや他書への目配せもきっちりした本書は、内容十分の重厚な書と言ってよいだろう。

  • この本からできたドラマ「百合子さんの絵本」を見ました。ドラマを見ての感想ですが、海外に送り出された閣下は情報を得ては、日本へ暗号化した手紙を出すが手紙は常々無視され敗戦し、原爆投下に至る。
    もっと日本が情報に耳を傾けていればと悔やまれるし、そんなずさんな対応に耳を疑いたくなるような信じられない出来事でした。

  • ヤルタ密約電を封印した売国奴は

  • 第二次世界大戦中、帝国陸軍のストックホルム駐在武官であった小野寺信少将の非合法活動について、取りまとめた本(2012/08/25出版)。

    本書は、アメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、ソ連のスターリンの三国首脳がソ連のヤルタで会談を行い、「ソ連はドイツの降伏より三ヶ月後に対日戦へ参戦する」と云う緊急機密電を日本の大本営参謀次長宛てに打電したが、その情報は上層部に伝達されていなかった謎について、元産経新聞の記者である著者の推測にもとづいて書かれています。

    一見、ソ連・ドイツ・イギリス・アメリカ等と肩を並べる日本の諜報機関が存在し、知られざる諜報活動や破壊工作について、赤裸々と書かれているように見えましたが、注意して読むと矛盾点も見られるため、かなり疑問を感じる内容となっています。

    例えば、日本はおろか、日本の暗号解読に成功していたイギリスやアメリカ等、当時の機密文書を調べても見つからないにも関わらず、知りえる筈の無い大本営の末端の参謀がヤルタ機密電を見たと云う不確かな手紙を根拠にしていたり、何故か海軍の駐在武官である藤村中佐が陸軍の参謀本部に会談のことを打電しているとか、イギリス・アメリカ・ポーランド軍による史上最大の空挺作戦マーケットガーデン作戦(本書ではアーネム作戦と書かれている)についての情報をドイツが小野寺少将から事前に入手し、実は何の役にも立っていなかったにも関わらず一矢報いていると評価をしている等々...

    その上、同じ事柄に対し繰り返し記述いるため、先に話が進まず、まどろっこしく文章が読みにくい、語(例えば、ドイツと書いたり、独逸と書いたり等々)が一貫していないところがあったり、所々で時系列が飛んでおり、とにかく読みにくい本です。

    全部が全部、矛盾点ばかりでは有りませんが、微妙に残念な本です。

  • 第一章で終わってるやろ。周知の事実の羅列だけの水増し本だ。ボリュームの割りに価格が安い理由に納得❗️

  • [孤人奮闘]「ドイツの敗戦から3ヶ月後、ソ連は日本に対して攻め入って来る」。日本が敗戦まで把握していなかったとされるそのヤルタの密約を、欧州に張り巡らせた情報の網から入手し、日本に打電していた男がいた。しかし、その電報が届いたという記録は残っておらず、結果として日本はソ連の対日参戦を許してしまう......。インテリジェンスの世界で「神様」と呼ばれた小野寺信という知られざる人物と第二次世界大戦中の諜報の内幕を描ききった衝撃のスクープ作です。著者は、北方領土返還交渉などの取材も務められた岡部伸。


    「ここまでよく調べたな......」というのが正直な印象。岡部氏が綴らなければ歴史の彼方に消えてしまったであろう、小野寺と東欧諸国の密なつながりなどは、読みながらスゴいスゴいと体温が上がっていく感覚を覚えてしまいました。公開情報を湛然につなぎあわせていきながら、情報の網をたぐりよせていく様子は一級のミステリーを読んでいるよう。手に取った瞬間はその分厚さに驚いてしまうかもしれませんが、それに見合った、いや、それ以上の濃い内容であることを保証します。


    小野寺の情報に対する繊細さと打って変わって、日本中枢の情報に対する無頓着ぶりは眼に余るものがありました。「こうあってほしい」という願望に合致するように情報を取捨選択してしまう様子や、作戦が事実に基づかずにくみ上げられていってしまう様子は、怖さをとおりこして諦念すら覚えてしまいました。外交における情報の重要性が声高に叫ばれる今だからこそ、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

    〜自前の情報を持つことこそがインテリジェンスの大原則なのである。〜

    著者の執念に拍手☆5つ

  • もんのすごいおもしろい。
    この一冊で、太平洋戦争関連の話が、二倍興味深くなる。
    説明や経緯が詳細で、今まで読んできた本に、ちらりとしか書かれていなかったことや、まったく書かれていなかったことが満載。
    おもしろくて、情報量が多すぎて、抜粋ですら、とてもまとめきれない。
    これは再読した方がいい。

    米英ソのヤルタ会談では、日ソ中立条約を結んでいたソ連が「ドイツの降伏から三ヶ月後に日本に侵攻する」と。
    これを、情報士官の小野寺信が掴んで、中立国だったスウェーデンから、日本に機密で電報送っている。ドイツの敗色が濃厚になった時期にも、他の重要な情報を非常に多く。
    けれど、これらを大本営で握り潰された。
    「自分たちのシナリオにそぐわない。ソ連が日本に侵攻するわけがない」
    「ドイツは破竹の勢いだ。負けるわけがない」
    「ソ連には和平の仲介を頼んでいるんだ。勝手にスウェーデンと交渉するな」
    などなど……ヤルタ会談の直後に小野寺がこの情報を送っているんだから、それさえちゃんと認識して使っていれば、ソ連に和平仲介なんか頼まず、広島長崎に原爆も落とされず、ポツダム宣言の受諾後にソ連に侵攻されて北方領土を奪われることもなかったろうに……
    (かろうじて、共産党の衛星国にならずに済んだのだけがさいわい)

    この小野寺の働きを、戦後に、嘘で塗り固めようとした瀬島龍三……我が身大事ばかりで、日本は負わなくてもいい負債まで負ったんだ。
    『外交敗戦-130億ドルは砂に消えた-』でも、日本はインテリジェンスを活用出来なくて、とんでもない額の戦費を無駄に支払っているのに。
    (ここらで活躍した情報は、小野寺氏の息子さんだそうだ)

    杉原千畝の「命のビザ」発給は、ポーランドに逃げ込んでいたユダヤ人を、ポーランドと情報交換していた経緯から救った。だから、ポーランドは日本に感謝して、連合国側に回ったにも関わらず、情報を流してくれた。



    p123
    蒋介石のバックにはアメリカがついて、ABCD包囲網とともに蒋介石政権に援助していたのは、何度か読んだけれども、ソ連の関わりは考えなかった。
    「蒋介石の国民党の背後に、敵対関係にありながら「抗日」で合体を模索する中国共産党がいて、それを操っているのは、世界に共産主義を浸透させようとしていたソ連のコミンテルンであることを見抜いていた。
     英米が支持する国民党政府は共産党と国共合作を進めていて、日本軍が侵攻を続ける限り、戦争は泥沼となるだろう。日本軍が矛を納めない限り事態を救えない。国民党政府との戦争が長期化すれば、利するのは中国共産党であり、ソ連である。そこで小野寺は、早急に蒋介石国民党と和平し、ソ連、共産党対策を優先すべきと考えたのだった。」


    1939 独ソ不可侵条約
    この条約に基づいて、ドイツはポーランドに侵攻。ソ連もその後、ポーランドに侵攻。
    ポーランドは1944ワルシャワ蜂起あたりで、ソ連がわざと救助を遅らせて、二度、世界地図から消えた。(ここらは今度、別の本読む)


    あとはもう……内容が濃すぎて、まとめも抜粋も断念。
    ドイツが敗戦間際に、小野寺に和平仲介を頼もうとしていたとか。
    日本の敗戦間際、もうとにかく天皇制の護持だけでもっていう状況で小野寺がせっかくスウェーデンに和平仲介の労を取って貰えるかも、というところだったのに、日本の軍内部で小野寺の行動を疑惑視してそのルートを潰したとか……

    省庁縦割りの弊害、ねたみ、シナリオにそぐうドイツの大本営発表だけ信じて自分に都合悪い情報は切り捨てるとか……
    読んでいて歯がゆく、憤懣やるかたなくなるけれども、まっとうに日本のために働く、こういう人たちがいてよかった。

    参考文献の多さもさることながら、アメリカやイギリス、ポーランド等、各国の資料も調べた著者に敬意。

  • ●:引用、他は感想
    佐々木譲「ストックホルムの密使」ではじめて知り、終戦工作に関する書物では必ず目に入る名前。最近まであまり優秀なインテリジェントオフィサーとの印象は無かったが、今年の夏のNHKスペシャル”終戦 なぜ早くきめられなかったのか」を見て、俄然気になっていた。
    題名にある「消えたヤルタ密約緊急電」をはじめとする、小野寺信在ストックホルム陸軍武官の諜報活動を、複数の資料を駆使して多角的に捉え、疑問点や矛盾点を解き明かそうとしている。しかし、同じ事柄に対する各資料の記述がほぼ同じ場合でも、そのまま重複し記述いるため、なかなか先に進まず、まどろっこしい。
     
    読むと、根元博中将や杉原千畝について書かれた評伝を読んだ時と同じ印象。→著者の被評伝者に対する一種の尊敬、英雄崇拝的なものを感じてしまうと言ったらいいか。

    ”P176 この時すでに日本のインテリジェンスは機能不全に陥っていたのである。日本型官僚組織に潜む病弊は根深い。”
    →P339
    →戦前の日本のインテリジェンスを扱った本は対外この結論に落ち着く。間違いではないが。
     

    ●対ソ工作を主導した種村が、大戦中からソ連共産党あるいはコミンテルンの影響を受けていたいう史料を筆者は持ち合わせていない。しかし、大戦時、日本よりはるかに国家の指導者に対する防諜・管理体制が整備されていたイギリスやドイツ、アメリカで、エリート層によるソ連を利するための「スパイ行為」があったことが近年判明しており、日本の権力中枢にもゾルゲ・尾崎工作に匹敵するソ連からの工作があったとしても不思議ではないだろう。→対米英戦争を継続するための親ソ容共。敵の敵は味方、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。シベリヤ抑留容認(日本人の棄民政策)などは、枢軸同盟崩壊後のどさくさの中のヤケクソ的なものと思っていたが、それ以前から冷静に考えられていたとは。コミンテルンの参本浸透説。陰謀論とは思えなくなる。

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消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)の作品紹介

同胞の無理解を超えて独ソ戦を予言し、対米参戦の無謀を説き、王室を仲介とする和平工作に砕身した小野寺信。大戦末期、彼は近代史上最大級の「ヤルタ密約」を掴み、ソ連の日本参戦情報を打電する。ユダヤ系諜報網から得た正確無比なオノデラ電は、しかし我が国中枢の手で握り潰された。欧米を震撼させた不世出の情報士官の戦果と無念を完全スクープ。

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