私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)

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著者 : 諸富徹
  • 新潮社 (2013年5月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037276

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私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

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  • 「税金」と言われると、いやいや払うものというイメージがどうしてもある。
    広辞苑を引くと、「租税」の項には、「みつぎもの、年貢」という定義の次に、「 国家または地方公共団体が、その必要な経費を支弁するために、法律に基づき国民・住民から強制的に徴収する収入」とあるという。
    国家というものがあり続けるためには、「税」という収入源が必要なのだ。
    本書では、租税が歴史的にどのようにして生まれてきたのかを追い(主に欧米が対象)、その意義を問い、将来を考える。
    税制の歴史の流れとともに、哲学者・経済学者たちの種々の国家論や租税理論を紹介・解説している。

    近代までの国家は、国家の持つ財産(「家産」)で財政を賄う「家産国家」だった。だが、支出の増加のため、それでは立ちゆかなくなり、「租税国家」へと移り変わっていく。
    多くの場合、租税制度を変化させる大きな契機は戦争であった。有り体に言って、戦争には「金」が掛かるからである。

    租税を考える上で、「義務」として政府が上から払わせるか、「権利」として市民が下から支えてくかの2つの視点がある。市民革命を経た場合は、国家を支える「権利」としての側面が大きいという。

    課税をいかに公平に行うかというのは大きな問題である。制度の変遷は公平さを追い求めての変遷とも言える。

    租税は「財政上の必要を満たすため」という面が大きいが、一方で、政策手段として行う場合もある。課税により、経済システムを制御していこうという試みである。CO2排出に掛けられる税などがこれにあたる。この課税の問題は、政策上の目的が達成されれば、税収が減るというジレンマである。

    税は時代とともに変わる。近年、新たな税として注目されるのは、「金融取引税」である。金融派生商品に掛けられるもので、元はといえばリーマン・ショックに端を発するという。経済は実物経済から金融経済へと大きく推移してきた。こうした税が導入されれば、金融危機の対処費用としても運用可能であり、投機的取引を押さえる政策課税としての側面も持ち、またこうした税の負担は主に富裕層に掛かるため、公平性の面からも適切と言えるようである。

    国際化が進む情勢の中で、将来的にはグローバルタックス(世界共通の課税)が構想されてきている。南北格差や環境に関する問題など、国を超えて解決しなければならない問題に充てる財源を持つ必要があることが見込まれる。こうした税を誰がどのように管理するか、実際上の問題はあるが、大きな視点で見ていくことは大切なことだろう。

    日本の税制の流れについては、あとがきに簡単にまとめられている。
    日本の所得税は明治20年に導入されている。明治政府による「上から」の導入になる。但し、日本の税はいささか特殊で、納税と選挙権が連動していたため、「名士」の証明となる面もあった。高度成長期には放っておいても税収は伸びたが、そのままの税制では難しくなってきている。公平性をもって税収を上げていく必要がある。

    いささか断片的だが、本書で印象に残った点を挙げてみた。専門外のため、読み落とし、読み違いがあると思う。ご指摘があればありがたく受けたい。



    *18世紀のイギリスでは、収入を正確に見積もることが困難であったため、馬車や下僕を所有しているかで課税率が決まったりしたこともあったという。

    **以下、まったくの与太話です。
    一応、個人事業主なもので、年度末は毎年、ぶーたらいいながら確定申告します。必要経費をまとめ、帳簿を整え、控除分を引き、課税率を掛け、なんちゃらをかんちゃらし・・・。
    「むきぃぃぃぃ。どこの世界に支払うものの代金を客に計算させる商売があるんだよ(怒)!! しかも計算がめんどくさすぎ!!」と荒れ狂ってやるわけですが(^^;A)、これもまぁ「むしり取られている」と思うからそう思うわけで。
    税金の本を読んだし、今年度からは「あら、面倒だけど、仕方がないわね、おほほ・・・」とココロ穏やかにやれるかな(==)。きっと無理(^^;)。

  • 何かのレビューを見て、読みましたが期待していたものと全然違いました。タイトルにある結論に至るまでの、解説の長さに根が負けます。とても教科書的な本で、私にはとてもハードルが高すぎました。世界における税金の成り立ちから、それを納める必要性までをそういう方向から捉えたい方には向いているかもしれませんが、軽い気持ちで読み始めると永遠に終わりが来ないかもしれません。

  • 少し堅く言えば、租税を通して見た国家論です。扱っている範囲が近代の欧米、それも英米仏と独が中心なので、そういう意味での限界はあるでしょうが、現在の日本国民が考えなければいけない項目はキチンと提示されていると思います。バランス良く叙述しながら、これからの最大の課題である、国境を超えた金融取引と課税回避行為について、読者が前向きに考える材料を提供しています。
    国家の役割と限界、グローバル化してゆく資本主義経済の制御、そのためのトービン税(金融取引税)など新たな税制の可能性、と書くとなんだかとっつきにくそうな印象を受けるでしょうが、大学教養課程程度、かつ、表現も平易で読みやすい本です。

  • イギリス、ドイツ、アメリカの近代以降の租税論通史の本。ホッブス、ロックにはじまり ニューディール政策、現代の国際租税回避まで、わかりやすく説明されている。それぞれに ドラマがある

    個人の所得に応じた累進課税による所得税、消費(支払能力)を反映した内国消費税、富の再配分としての相続税、独占企業政策や個人所得税の補完としての法人税 、戦時の異常税率などの導入経緯、根拠、歴史的変遷を記述

    次の論述と税金との関係性を整理することから 始まる
    *ホッブスやロックの国家論
    *アダムスミスの国富論
    *ヘーゲルの市民社会の原理

    ドイツ租税論(シュタイン、ワグナー)
    *個人と国家は運命共同体
    *納税=個人の義務
    *日本は ドイツ租税論を導入

    ニューディール租税政策
    税金は 単なる財源調達手段としてでなく、所得や富の再配分、独占企業のコントロールなど 政策手段としても 用いている

  •  租税には,国民の生命・財産を保護するための財源を確保する役割だけではなく,経済をコントロールするための「政策手段」の役割もあるという。単に「上」から義務として押し付けられるものではなく,「下」から経済に働きかけるために国民が持つ手段として租税をとらえることができる。

     グローバル化が進み,貨幣や企業が国民国家の枠を越えて自由に移動するなかで,国際的な経済活動に対する課税権を国民国家を超えたどのような主体に付与することができるのか。「下」からどのようにアプローチできるのか。「グローバルな『共通課税権力の樹立』」が実現するには,夢物語と思えるほど現在は程遠い地点にある。本書でみられた租税の歴史のように,今後さまざまな議論や論争を経ていくしかないのだろう。

     日本の財政についても,議論や論争を重ねて漸進していくしかないのかな,と思った。

  • いやー、なかなか面白かった!
    市民革命などの歴史を、税制度に着目して考えたことないし、納税を権利だと考えたこともなかったし。(とはいえ、私の場合は別に納税に対してネガティブでもなかったけど)

    あと、哲学的な話かと思いきや、意外にもグローバル税の話にも十分な紙幅を取って言及されていた感じだし、アトキンソンが言ってたような、最近の格差拡大と税金種別の割合の話などにも触れられていた。多国籍企業の税金対策などについても。金融取引税の話も興味深かったな。

    あ、あと、世界の話だけでなく、ちょいちょい日本の現状にも触れられているのが良かった。

    これだけいろいろ触れられていて、専門性もありながらも、一般人に分かりやすく書いてくれている気がしました。取っ掛かりとしてはありではないかな!

  • 「政策課税思想に通底するのは、次のような資本主義観である。所得と富の格差が小さく、完全雇用が実現し、独占・寡占はコントロールされて適切な競争環境が維持され、金融は実物経済を翻弄するのではなく、むしろその僕や黒衣となって支える側に回り、そしてきれいな空気や水が享受できる環境の下で、実物経済の適度な成長が実現する経済社会こそが望ましい。そのためにはアダム・スミス流の『レッセ・フェール(自由放任)』ではなく、市場と国家が適切な形で組み合わされた混合経済へと移行する必要がある。そして経済学は、十九世紀に全盛をきわめた『自然の体系』から『人為の体系』へと移行すべきである…。」p.275-276

    グローバルな取引が主流となった現代において、金融所得に対する過重な課税は行うことが難しいため、所得税は軒並み低く、消費税など逆進性の高い税への課税によって対応する潮流があると筆者は述べている。

    日本において、さらには、日本の地方において、どのような理念に沿って課税を考え、実施していくかを考える上で参考になりました。

  • [「られる」一辺倒の卒業]給与明細を見るたびに、なんとなく「取られている」と感じてしまう税金。そんな税金がどのような思想を背景として成立し、国民国家内に取り入れられてきたかを解説するとともに、「上からの税金」とは一線を画した考え方について提唱する一冊。著者は、京都大学で教鞭をとられ、財政学を専門とされている諸富徹。


    税金というと複雑かつ難解という印象を受けますが、その成立を根本から整理してくれているので非常にわかりやすく、税を(良い意味で)身近なものとして感じられるようになるのではないでしょうか。特に、財政調達と政策達成という二つの手段が税に内包されていることを指摘しながら、ドイツやアメリカの歴史を語る章については、税にまつわる歴史のおもしろさを堪能することができました。

    〜「下から」の方向性を徹底させ、そして「市民からの法人への働きかけ」という視点に立つならば、「政策手段としての税」は政権の手にあるだけでなく、たとえ間接的な形ではあれ、私たち自身の手にあると考え直すことができるだろう。つまり、「市民社会が租税を自らの道具として使いこなして経済をコントロールする」という租税観、新たな政策課税論への転換である。〜

    古くて新しい問題なんですね☆5つ

  • 【目次】
    第一章 近代は租税から始まった――市民革命期のイギリス 009
    戦争と税金 014
    十七世紀の財政危機/一六四三年の新税/名誉革命へ/「家産国家」から「租税国家」へ/官房学の興隆と衰退
    ホッブズとロックの租税論 025
    租税とは何か/ホッブズの国家論/ロックの国家論/個人と国家のドライな関係、そしてデカルトと哲学
    史上初の所得税 037
    革命期以前の租税システム/消費税をいかに正当化するか/所得税の誕生
    アダム・スミスの消費税反対論 049
    グラスゴウ大学講義/『国富論』第五編/「所得」概念と「租税」理論

    第二章 国家にとって租税とは何か―― 十九世紀ドイツの財政学 057
    国家と個人は一心同体 061
    『法の哲学』/有機組織としての国家
    ロレンツ・フォン・シュタインの租税理論 067
    理念型としての国家と、現実の国家/パリ留学の衝撃/「社会改良」と租税
    アドルフ・ワーグナーの国民経済論・租税論 078
    ドイツ経済の興隆期/経済活動の動機は一つではない/三つの経済組織/慈善経済論の先見性/社会政策としての「租税」
    国家主導の功罪 096
    ドイツ財政学と近代日本/ドイツ財政学の現代的遺産

    第三章 公平課税を求めて―― 十九・二十世紀アメリカの所得税 101
    所得税の成立と廃止 1861~72 106
    戦費調達のために/所得税はなぜ短命に終わったのか
    共和党 vs. 民主党 1873~94 112
    人民党とヘンリー・ジョージ/二大政党の激突/「下から」の税制改革
    所得税をめぐる複雑なる闘い 1895~1913 121
    所得税は違憲である!/共和党内の新勢力/オルドリッチ上院議員の策謀/憲法改正と所得税恒久化に向けて
    税の「主役」交代 1914~26 136
    第一次世界大戦中の税制改革/法人税を政策手段として用いる/ウィルソン政権の遺産
    戦争、民主主義、資本主義 146
    三つの関係/独占・寡占をめぐる二つのビジョン

    第四章 大恐慌の後で――ニューディール税制の挑戦 151
    世界大恐慌はなぜ起こったか 156
    株式会社とは何か/所得格差の実態/『フォーチュン』誌のアンケート
    史上最強の政策課税 162
    一九三四年の税制改革/一九三五年の大転換/大統領教書の衝撃/最も過激な法人税/計画主義者とブランダイス主義者/留保利潤税は何をもたらすか/留保利潤税の運命
    「政策手段としての租税」再考 184
    資本主義の無政府性/政策課税の問題点/市民の「道具」としての租税

    第五章 世界税制史の一里塚――二十一世紀のEU金融取引税 195
    資本主義経済システムの変貌 199
    ニクソン・ショック/金融が資本主義を変えた/ケインズの「美人投票の論理」/リーマン・ショックを予言したミンスキー理論
    トービン税とは何か 211
    頻発する通貨危機/トービン税の射程/トービン税は非現実的か?
    EU金融取引税の挑戦 219
    二つの目的/高頻度取引に砂を撒く/金融派生商品に対抗する/「世界税制史の一里塚」へ向けて/イギリスの複雑な心境

    第六章 近未来の税制――グローバルタックスの可能性 233
    世界の税制にいま何が起きているのか 238
    下方シフト現象の背景/下方シフト現象のゆくえ/税制の現実
    国際課税のネットワーク 246
    居住地原則と源泉地原則/能動所得と受動所得/多国籍企業のタックス・プランニング
    グローバルタックスの現在と未来 255
    グローバルタックスとは何か/地球温暖化への「適応」資金/フランス「国際連帯税」の先駆性/グローバルタックスはなぜ必要なのか/グローバルタックスはどこへ向かうのか

    終章 国境を超えて 269
    租税、国家、資本主義/「政策課題」思想の伝統/国境を超える課税権力/私たちは国境を超えられるか

    参考文献 [283-295]
    あとがき(二〇一三年四月 諸富徹) [296-302]

  • 諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』新潮社。市民革命以降の欧米の税制の思想史から税金と共同体の関わりを考える一冊。租税は国家が市民の生命財産を保護することの対価と考えたロック。参加し担うから「仕方なく払う」のではない。税制輸入した日本とは対極的だ。

    財務危機が日常化する現在、単純な増税が決していいわけではない。税金を切り口に参加型民主主義を経済の側面から考察する上では、非常に刺激的な一冊。経済行為がやすやすと国境を越えていく現在、著者は租税に関しても国際的な規制(「世界国税庁」)をも視野に入れる。

    ややもすれば感情論で扱いがちなやっかない「税」の問題を本書は、国家や市場経済とどのように結びつくのかわかりやすく解き明かす一冊。消費税増税前に読んでおきたい。

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私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)の作品紹介

国家と経済と私たちの行く先は? 21世紀必読の税金論! 市民にとって納税は義務なのか、権利なのか? また、国家にとって租税は財源調達手段なのか、それとも政策遂行手段なのか? 17世紀の市民革命から21世紀のEU金融取引税まで、ジョン・ロックからケインズそしてジェームズ・トービンまで――世界の税制とその経済思想の流れを辿り、「税」の本質を多角的に解き明かす。

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