石油と日本: 苦難と挫折の資源外交史 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037689

作品紹介・あらすじ

無資源国・日本が背負った宿命の一五〇年――果たしてそこに理念はあったのか。近代より続く『石油の時代』にあって、石油を持たない国・日本は 「資源外交」に身を投じるしかなかった。そこは国同士がエゴを剝き出しに衝突し、謀略を巡らす現場。莫大な時間と金、時には人の命も費やして、いったいこの国は何を得てきたのか? 日本の行方を左右した交渉、開発、投資――その僅かな栄光と数多の蹉跌。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の資源外交史を石油に的を絞り、第二次大戦前から本書が書かれた2015年まで追いかけている。数あるエネルギー政策の中で石油に特化することで話を掘り下げて、話を無用に拡散させないように簡潔にまとめる意図で書かれているのだと解釈した。

    資源を持たない日本が石油を巡る外交に戦前も現在でも右往左往させられていることがよく伝わってくる。その最大の壁は「ワシントン・リスク」であり、日本のあらゆる政策がアメリカ追従になる背景(の大きな要素)となっている。自前で石油の調達に動こうとした田中角栄がロッキード事件で失脚したくだりについてはあえて本書では深入りしていない。

    石油だけに目を向ければ、アメリカの石油メジャーのパワーがアメリカの政策を動かし、それが世界に大きな影響を与えていると印象付けている。巨額のカネが動く所にアメリカあり…だが、他のエネルギー政策と政治関連の本も読んでみたいと思った。そうすれば、昨今のウクライナ情勢もまた別の見方ができるかもしれない。

    スケールこそ全く違うが、「戦略物資をどう調達して自国の発展に活かすか」を巡る行動は自分の仕事にも通じる要素がある。漫然と目先の忙しさに追われてしまうのではなく、業界全体の動向やら各社の戦略やらを広く情報を掴んでおく必要がある、と学んだ。

  • ふむ

  • ●サブタイトルにあるように、日本の石油政策は苦難の連続だった。日本が石油を求め、どのような道を歩んだかを丁寧に解説した一冊。

  • …石油なくしては、中国との戦争を成功裡に終結させることもできず、国として生き残ることもできない。…(ハル・ノートを)受取った時、我々はもはや一国家として存続することができないと決断した。そこで我々は戦ったのだ。

    資源を持たない日本が、明治維新後、先進国となるために、そして先進国であるために必要とした石油。
    しかし西欧列強国がその影響下、植民地化に置いた中東やアジア諸国から石油を奪い合う場でもある「資源外交」は各国のエゴと謀略に満ち、ときに戦争の引き金ともなった。
    日本のおかした最大の失策、太平洋戦争を軸に、石油の発掘、獲得、輸入に尽力した「石油人」と呼ばれた多くの人々の苦難と挫折、そして失敗の150年の記録と、今後日本の進むべき道を問いかける近現代史。

    その歴史は惨憺たる負けいくさの歴史だ。アメリカに脅され、イギリスに邪魔され、アラブに逃げられ、中国に奪われる。
    日本は日本で、民間と政府の足並みがそろわず、民間同士でさえ仲間割れし、足の引っ張り合いをしている始末。いったいどれだけの資金が無為に砂漠へと浸み込んで消えたことだろう。
    数々の失敗から、日本の政治家や財界人たちは何も学ぶことはなく、今また同じ失敗を犯そうとしている。

  • 石油が無いために戦争に追い込まれ、石油が無いために敗れた。でも、南方で必死に活躍した技術者たちが蓄積した経験と技術が、後に異端児アラビア太郎の開発する油田で役に立ったことを知って、嬉しかった。彼や出光佐三のような男たちは、今の日本では現れにくくなっているのだろうか?

  • 資源の少ない日本が如何にして資源外交を展開し、今の地位を築いたかが時系列でよくわかる一冊。内容はやや難しく、一定の周辺知識がないと理解が困難と感じた。我々が安定した生活を送れている背景には、先人たちの苦難があったわけで、これからも資源の少ない日本にとって資源外交は極めて重要である。

  • タイトル通り石油・油田開発をめぐる日本の近現代史。
    対米開戦、石油外交、アラビア石油の利権失効、イランでの権益を巡る外交交渉。資源を巡る20世紀のひとつの歴史です。
    「原発がー」と語る前に石油を知ろうぜ。

  • 日本がいかにして石油メジャーのなかをかいくぐり、自国のエネルギーとして石油を入手していくようになったのか、その背景がていねいに描かれている。
    トピックとしては、
    -映画「海賊と呼ばれた男」でも話題の出光
    -アラビア石油の興亡をからめたサウジと日本の資源外交
    -イラクに消えた日本の一兆円
    -イランのアザデガン油田の権益獲得から消失
    、といったことなどが取り上げられている。

    イラク復興関連の仕事を経験した自分でさえ、過去にイラクに融資した日本の金はもう戻ってこないという事実を知り、唖然としてしまった。この事実は一般国民のほとんどが知らないのではないだろうか。

  • 油田権益の獲得失敗・喪失の敗北史
    列強の力の源泉たる権益の奪い合いに飛び込むだけの覇気がない国、と言えるだろうか

  • [一滴を求めて]エネルギーの多くを海外からの輸入に依存している日本。その中でも、日本は石油を求めていかに国際社会で奮闘し、そしてときに挫折と失敗を経験することになったのか......。題名が端的に示すように、日本と石油の関係をズバリ考察した作品です。著者は、日本エネルギー経済研究所で務められた経歴を持つ中嶋猪久生。


    時系列的にまとめられているため、資源外交を考える上でコンパクトかつ明瞭な一冊だと思います。また、石油にまつわる政治や経済面のみならず、技術面にも説明が及んでいるため、多角的に日本にとっての石油を考える機会を与えてくれるかと。


    著者のスタンスは一貫としていて、一部の例外を除いて日本の石油外交は失敗に満ちているというもの。個人的には著者の姿勢に同感を覚える点が多くありつつも、日本とその他の国々の石油に関する権益を、「取った・取られた的」な見方で常に捉える著者の視点は(日本の資源外交を成功に導くためにも)批判的に検証しても良い点ではないかなと感じました。

    〜石油は金を出せば買えるもの。もしかしたら、そんな国の姿勢が、日本の負け続ける資源外交の一番の要因ではないのか、いまさらながらそう思うのである。〜

    石油の技術的側面も学ばないといけないのかな☆5つ

  • 石油で日本の近代史を語る、という意欲本。素人の自分には非常にためになった。
    今後は水を巡って争うのだろうか。

  •  副題の内容そのままの本である。日本は石油のほとんどを外国から輸入しており、国際政治の波に揺さぶられる中で民間や政府も取り組んできたが、資源外交的には敗北続きである。その歴史を振り返るに、本書はとても良くまとめてあってお勧めできると思う。
     過去には、出光佐三や山下太郎などところどころで活躍した人物や出来事もあるが、全体の流れとしてはアメリカや中東諸国には正面切っては勝てないのかなあと感じてしまう。
     外交力の欠如や資源政策の無策を嘆いても始まらないが、エネルギーの確保を考える際には本書を読んで先人の苦労や努力を知るのは大事なことだと思う。

  • 【新着図書ピックアップ!】石油と日本(にっぽん)。勇気ある先人たちは、石油メジャーと産油国ナショナリズムにいかに挑み、いかに挫折したか。ここで語られる150年は、近代日本の歴史そのものである。リベラルアーツの必読書。
    【New Book!】Oil and Nippon. 150 years of brave and unsuccessful challenges are real stories of modern Japan. This book is must for liberal arts.

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