地球の履歴書 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037764

作品紹介・あらすじ

熱球から始まったこの星はどのように冷え、いかにして生物は生まれたのか? 科学の発達とともに、私たちは少しずつ地球の生い立ちを解明してきた。戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解したのだ。海面や海底、地層、地下、南極、塩や石油などを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描く。講談社科学出版賞受賞のサイエンティストによる意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 地球が誕生してから今日までの46憶年におよぶ地球の歴史を解説する自然科学書というのは数多く出版されています。ただ、私自身もそうですが、地学に興味がないとなかなか手に取ってまで読んでみようという気持ちになれないケースも多いのではないか、と思います。
    本書は人類が地球の生い立ちを理解するプロセスを、いろいろなサイドストーリーを交えて解説しているので、読者を飽きさせません。恐竜を絶滅させた隕石の衝突だったり、地球を寒冷化させた巨大噴火、氷期-間氷期にまたがる100m以上に及ぶ海面高度の変動、南極点発到達までの探検家たちのドラマ、アフリカのニオス湖で発生した謎の住民大量死亡事件など…。また2015年初版ということで最近のトピックスも盛り込まれ、古さも感じさせません。
    そして本書を推す何よりの理由は、本書が日本人の著者によって書かれた本なので、文章が大変読みやすいという点につきます。海外の自然科学系の読み物は、どうしても訳者の技量によって、不自然な日本語と向き合わざるを得ない事が多いです。その点、本書は「チェンジングブルー(岩波現代文庫)」で講談社科学出版賞を受賞した経歴のある著者だけに、一般向けに読みやすいだけではなく、ちょっと文学的な匂いのする文章で書かれているので、教科書的で無機的な解説書というのではなく、”読み物”として十分に読み応えがあります。
    中学生、高校生なんかに読んでもらえたら、自然科学、特に地学系への興味が掻き立てられる人が出てくるんではないかと思いました。

  • 幅広い知識、バックグラウンドから種々の事項を詳しく正確に解説している。
    現代の日本、世界が過去から続く環境の連続性の上に成り立っていること。

    読了90分

  • 第一章 How deep is the sea?
    地球創世記 海の広さを知る 永遠に失われた知 先人の足跡 海の深さを知る

    第二章 謎を解く鍵は海底に落ちていた
    ソナーの登場 海山の謎 ダーウィンとサンゴ礁 地球の表面はジグソーパズル 時代を先取りしすぎた研究 沈む海底

    第三章 海底が見える時代
    救世主現る 現代のトレジャーハンティング 海底に潜む巨大火山 巨大噴火の影響

    第四章 秋吉台、ミケランジェロ、石油
    白亜の時代 淀んだ海の黒いヘドロ 頁岩から燃料を造る 地球を揺るがす大惨事 温暖化した世界 白亜の終焉

    第五章 南極の不思議
    神秘の大陸 さまよえる湖、南極編 ライバル達の大陸 探検かの行く末 新しい時代へ

    第六章 海が陸と出会う場所
    移ろう海面 生き物が集うホットスポット 氷河時代が過ぎ去って ノアの洪水 街に隠された海面変動 人類の足跡

    第七章 塩の惑星
    戦争や革命も 塩を採る 海の塩 干上がった地中海 死海と塩 塩と生きる

    第八章 地下からの手紙
    有馬温泉の不思議 地震の前兆と予知 玉川毒水 ニオス湖の悲劇


    平易な文章でエッセイ風。面白く読めた。

  • 地球46億年に対して科学が明らかにしてきたこと、その歴史、そしてそれに取り組んできた人々のドラマ。
    有馬温泉に浸かって、思いを馳せたい。

    途方もない年月の中で、今成り立っているバランスは永遠のものでないことを知る。

    海水面、塩分濃度、地軸、地磁気の向きは全て移ろう。

    地球の歴史3%の期間、白亜紀でのみ形成された石油に基づく文明は一瞬のものであり、また変わっていく。

  • 大河内直彦(1966年~)氏は、東大大学院博士課程修了、京大、北大、米国ウッズホール海洋研究所などを経て、海洋研究開発機構生物地球化学研究分野・分野長。
    本書は、季刊誌「考える人」の2013年春号~2015年冬号の連載をまとめ、2015年に出版されたものである。
    著者は「まえがき」で、本書について、「紆余曲折を経て発展を遂げてきた科学を通して、私たちの暮らす星を覗いた短編を集めたものである。地球上の珍奇な場所や驚くべき出来事について、科学の視点を交えながら紹介する八つのストーリーである」と語っており、初出の連載の性格から、体系だった地球の地理・地形や歴史とはなっていないのだが、取り上げられた「珍奇な場所や驚くべき出来事」は実に幅広く、読み終えてみると、地球の地理・地形や歴史の見え方が、僅かながらも変わったような気さえする。
    例えば、以下のような場所・出来事が取り上げられている。
    第1章:How Deep Is The Ocean?・・・古代のエラトステネスとポセイドニウスの地球の大きさの測定、アレキサンダー大王やマゼランの海の深さの測定
    第2章:謎を解く鍵は海底に落ちていた・・・ダーウィンが唱えたサンゴ礁の進化(裾礁→堡礁→環礁)、プレート・テクトニクス理論
    第3章:海底が見える時代・・・サイドスキャン・ソナーを使った現代版トレジャー・ハンティング、鬼界カルデラと姶良カルデラ、ピナツボ火山の噴火
    第4章:秋吉台、ミケランジェロ、石油・・・秋吉台の石灰岩地形、インド島のユーラシア大陸衝突とヒマラヤ山脈の形成、ユカタン半島への隕石の衝突
    第5章:南極の不思議・・・南極点の移動、アムンセンとスコットの南極点到達競争
    第6章:海が陸と出会う場所・・・地球で繰り返す温暖・寒冷化と海面の上下動、東京湾海底に残る巨大河川・古東京川、黒海の海面上昇とノアの洪水伝説、
    第7章:塩の惑星・・・メッシニアン塩分危機(600万年前に、地殻変動でジブラルタル海峡が地続きとなり、地中海が干上がった出来事)
    第8章:地下からの手紙・・・六甲山周辺で見られた阪神淡路大震災の前兆現象、カメルーンのニオス湖の悲劇(1986年に、湖底から湧き出た二酸化炭素で湖畔の住民の大半が死んだ出来事)
    我々の住む地球についての知的好奇心を掻き立て、また、満たしてくれる一冊である。
    (2021年6月了)

  • 科学エッセイ集。歴史トピックが織り交ぜられていて面白い話題もある。
    しかし、テーマが広すぎてまとまりが無い。

  • 私たちの身の周りには地球の歴史が詰まったものが数多く存在する。それは例えば、海、山、石油、コンクリート、そして自分自身。本書はこれら身近に存在するものを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描いている。
    本書ではこれらのストーリーになぞらえて「なぜ海は塩辛いのか」、「なぜ温泉は温かいのか」といった身近な疑問から、「地下では数十億アンペアの電流が生じている!?」、「地中海には厚さ2~3キロメートルの塩が眠っている!?」、「1700人が犠牲になったニオス湖の悲劇の犯人は二酸化炭素だった!?」といった最新の科学が紐解く目から鱗の事実までをわかりやすく解説。その他、プレートテクトニクスや地磁気の逆転現象などが発見されるきっかけとなった出来事や、これらが広く認められるようになるまでの歴史も詳しく解説している。そこには以外な経緯を持つ科学技術の発展と知られざる科学者の間のドラマが…。地球科学に精通している人もそうでない人も今日から世界の見え方が変わる、是非とも一度手に取って頂きたい良書です。 (地球環境学コース 修士1年)

  • いかにして生物は生まれたか、繋がりで読んだ。各章エピソードを交えていておもしろかった。

  • 文系な私にとって、科学だの物理だのと言われてもねーと思っていたが、ざっくり地球46億年の歴史を理解したつもりになれる。
    パラリと興味ある項目だけ読んでも価値があると思う。
    そして、本書に出てくる世界各地を旅したくなる。

  • 読みやすかった。

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著者プロフィール

大河内直彦 1966年京都市生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。その後、京都大学、北海道大学、米国ウッズホール海洋研究所など流浪の時代を経て海洋研究開発機構へ。現在、生物地球化学研究分野分野長を務めている。

「2023年 『石油のものがたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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