世界史を創ったビジネスモデル (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
3.91
  • (14)
  • (18)
  • (10)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 255
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038044

作品紹介・あらすじ

ローマ帝国から人工知能まで――人類が歴史の中で生み出した「ビジネスモデル」を解き明かす。〝失敗しない〟ための実践的教養。

「世界史」に、ビジネスの新しい活路を見いだせ! 歴史上の国家を〝企業〞、その活動を〝ビジネス〞として理解すれば、新たな視点が得られる。ローマ帝国の盛衰、大航海時代の競争、さらに現代のAT&T、グーグル、人工知能についても。人類が経験してきた「成功」と「失敗」から導き出される「歴史法則」とは? 日本社会の停滞を打破する「フロンティア」がここにある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今年一発目のくそ本 なんだこりゃ こじつけにもなってないわ

  • 世界史を創ったビジネスモデル(新潮選書)2017/5/26

    地方分権化と市場メカニズムの活用、寛容主義が日本に必要
    2018年5月8日記述

    野口悠紀雄氏による著作。
    2017年5月25日発行。
    本書は2014年6月から2016年8月にかけて週刊新潮に
    連載した「世界史を創ったビジネスモデル」をまとめたものである。

    はじめにでも著者が指摘しているのだけれども
    それまでよく知られている歴史上の事実であっても、
    別の分野の専門家がその分野の観点で見ると、
    新しい歴史像が浮かび上がってくることを示している
    というのが本書のコンセプトだ。

    本書を読んでいて井沢元彦氏の逆説の日本史や
    磯田道史氏の著作などに通じるものがあると思った。
    それは非歴史家故に出来ることなのだろう。
    だからこそ無意味に難しくなっていないとも思えた。

    昨年ヒットした応仁の乱を書いた呉座勇一氏には
    本書のような読者を意識した文章というものを理解して
    貰いたい所ではある。

    参考になって点をあげていくと

    成功するための法則を見出すことは難しい。
    見い出せても、その応用は難しい。過去に成功した
    ビジネスモデルをそのままの形で真似ても成功するとは限らない。
    それに対して、失敗を避ける方法は、比較的容易に見出すことが出来る。
    そして、その知識は、広い応用可能性を持つ。
    失敗の原因を知り、それを避けることは、誰にでも出来る。

    多様性を否定した国や企業が失敗する例はきわめて多い。
    失敗しなくても、徐々に衰退することはほぼ間違いない。
    つまり、多様性の確保は、組織の成功にとって、ほぼ間違いなく必要条件である。
    ローマ帝国が崩壊した基本的原因は、異質なものを排除するようになったことだ。
    現代ではナチスドイツの異民族排斥政策がその典型だ。
    企業も多様性を失うと1980年代のIBMの例に見られるように衰退する。

    分権化を実現する手立ては、経済的な問題については
    市場メカニズムの活用であり、政治的には分権化である。

    カエサルが投降者を寛大に扱うことは、広く知られている。
    現に、カエサル軍にはガリア人の兵士すらいる。
    それを見れば、降伏したところで残酷な扱いは受けず
    むしろ歓迎してくれるだろうと期待できる。だから、戦局のわずかな変化をきっかけにポンペイウス軍から大量の投降が発生し総崩れになったのではないだろうか?カエサルの寛容性はポンペイウスとの戦いで決定的な重要性を持っていたことになる。

    ローマの指導者として要求される条件を繰り返せば、
    第一には兵士と市民に対して物質的な報酬を約束し、それを実行できること。
    第二には正当性を獲得することだ。しかしそれだけでは十分ではない。
    国家の理念、あるいは将来のビジョンを提供する必要がある。
    しかも空虚な絵空事ではなく、説得力のあるものを。

    人は誰も自分の能力を正しくは評価できない。

    アウグストゥスが見出したローマの新しいビジネスモデルは通商の拡大であった。

    経済活動に対して国家が干渉しなかったことだ。
    エジプトのように交易と工業を国営化し、国家の独占事業とするようなことはしなかった。

    軍事的拡大のモデルには、いつか限界が来る。
    しかし、通商の拡大というモデルには限界がない。
    空間的拡大が終わったとしても、通商の内容を充実させることが出来るからだ。

    強権的収奪モデルを長期にわたって継続するには膨大な
    軍事コストが必要であり、現実的ではないのだ。

    なぜ交易するだけで価値が生まれるのか?それは自然条件が地域によって異なるので、分業によって特定分野に特化するほうが、全体の生産が増えるからである。

    交易の利益、あるいは分業の利益とは、18世紀から19世紀にかけてアダム・スミスやデイビッド・リカードが定式化した概念である。
    リカードが言うように、分業して交換すれば、どちらも豊かになる。
    経済の繁栄は、それによってもたらされる。

    現代のドイツが他のヨーロッパ諸国を支配し搾取しているという説明は、事実とは異なる。
    それは、ローマ帝国が属州を支配したという見方と同じように、誤りだ。
    ドイツの一人勝ちだと、よく言われる。
    ドイツに貿易黒字が生じているのは事実だ。
    しかし略奪しているから生じているわけではない。
    貿易とは、言うまでもなく経済的等価交換である。
    しかも、ドイツは貿易黒字を溜め込んでいるわけでもない。
    ターゲット2と呼ばれるユーロ加盟国間の決済システムを通じて、赤字国に貸し付けているのである。

    貿易収支そのものについても、ドイツがEUから利益を得たという見方には、疑問がある。
    ドイツの貿易収支が巨額の黒字であることは事実だが、EUがなくてもそうなっていた可能性は高い。
    EUが存在するために、ドイツは農産物をフランスから輸入しなければならないという事情もある。
    しかし、もっと条件の良い輸入先が域外にある。
    だから、ドイツは世界を相手に自由貿易するほうが有利だろう。
    (関税同盟を作ることがかえって事態を悪化させるというこの効果は関税同盟の貿易阻害効果と呼ばれる)
    しかしながら、第二次大戦を引き起こしたという歴史的な責任があるのでドイツはEUを尊重せざるをえないのだ。

    日本はローマが豊かになり、そして衰退した過程を、
    それよりずっと短い時間の幅の中で再現した。
    だから、ローマがなぜ繁栄し、なぜ衰退したかを知ることが重要である。

    ビジネスモデルという観点に立つと、「何がなかったか?」は
    大変重要な問いだ。なぜなら、現代の国家にはあるがローマ帝国にはなかったものは、現代の国家にも不必要かもしれないからだ。

    ローマ帝国には(少なくとも初期においては)巨大な官僚機構が存在しなかったことだ。

    アメリカと古代ローマは、議会の名称や外観だけでなく、政治システムの基本思想において似ている。
    そして、それは偶然ではない。
    アメリカ建国の父たちが、古代ローマを意識して新しい国を設計したからだ。

    ローマとアメリカの類似性は、以上にとどまらない。
    もっとも重要な共通点は、戦争後の対外政策にある。
    それは、よく言えば「寛容主義」であり、やや否定的なニュアンスを含めて言えば、「敗北者同化主義」だ。

    ロシア兵(ソ連軍)が夕刊だったのは、ローマ兵が退役後の夢にひきつけられたのとは全く違う理由による。
    それとは正反対に、絶望と恐怖のために勇敢にならざるを得なかったのである。

    1940年初め、逃亡と戦線離脱で赤軍が崩壊しそうになったとき、NKVD「ザグラドオリャードイ」という特殊部隊が作られた
    (NKVD 内務人民委員部とは国家保安委員会KGBの前身の戦時中の呼称)
    その任務は、戦闘部隊の後方に位置し、逃亡兵を射殺すること。
    彼らは、普通の兵士が持っていない機関銃を持っていた。
    1942年7月には、命令227号により「封殺部隊」が設立されてザグラドオリャードイを補佐し、逃亡兵や突撃に後れを取る兵士を容赦なく射殺した。スターリングラードだけで数週間で1万人を超える兵士が銃殺された。兵士は、後退のほうがずっと危険だと思い知らされていたから、武器を持たず素手のままでも前進したのだ。
    また捕虜になれば、仮に帰国できてもスパイ容疑を追及され、人生は終わりになる。

    (部分的個人的感想)****************************************
    ・・・このソ連軍の実態はかつて小林よしのり氏が1998年に出した
    戦争論に中国国民党、中国共産党軍の実態として紹介していた実態と酷く酷似している。
    正直言って第二次大戦はアメリカ兵以外では戦勝国、敗戦国関係なく全員敗者だとしか言いようがない。
    誰もが不幸だとしか言えない。
    第二次大戦でソ連の異常なまでの死亡者数もこれで納得できるというものだ・・・
    ************************************************************

    しかし、恐怖によって支えられる体制を長期に継続することは出来ない。
    ソ連が70年しかもたなかったのは、当然のことだ。

    ローマの奴隷のほどんどは一生奴隷だったが、中には解放された者もいた。
    人は絶望すれば働く意欲を失うが、希望があれば苦しみに耐えられる。
    だから、働くインセンティブを与え続けるため、解放の可能性は重要な手段だった。将来の夢を与えて働かせたという意味で、軍の場合と同じメカニズムだ。しかも、主人は身近にいて、個々の奴隷の働きぶりを詳しく観察できる。
    巨大組織での勤務評価とは違って、ごまかしがきかない。

    秘密警察こそ、ソ連の中核的組織であり、そしてローマ帝国にはなかったものの典型だ。
    現代日本企業はソ連の強制収容所や集団農場とは違うし、日本の会社員は奴隷ではない。
    しかし、だからといって、以上で述べたことが現代の日本に無関係だとは言えない。
    人間が自ら進んで働くには、第一に未来への希望が必要だ。
    そして第二に、勤勉に働いたことが正しく評価される仕組みが必要だ。
    ローマにはこの2つともがあり、ソ連には2つともなかった。
    では、今の日本はどうだろうか?

    ローマの偉大さとは、制服の迅速さでも、広さでもない。
    属州の統治に成功したことだ。統治は概して属州の住民にとって善政であり、彼らの生活水準向上に寄与した。だから彼らは属州化を喜んで受け入れたのである。

    寛容主義は、最強国となるための必要条件だ。
    歴史的事例を見れば、これが正しいことは、疑問の余地が全く無い。

    現代社会での反面教師は、ナチスの劣等民族根絶政策だ。
    それは、馬鹿げたほどに高くつくものだった。
    もっとも大きなコストは、優れた技術者がドイツやハンガリーなどから
    逃げ出したことだ。彼らの多くはアメリカにわたり、
    その科学技術水準を短期間の内に飛躍的に向上させた。

    寛容政策は、受け入れる側にとっても一定の資質を必要とする。

    カエサル流戦略(寛容主義)は現代においてももちろん有効だ。
    政党や会社の中の派閥争いなどでは、相手の寛容政策に
    ひきつけられた内部崩壊が、帰趨を決める。
    有能な社員を他社から引き抜く際にも、重要な要素だろう。

    寛容政策に対する最大の敵は、国内における反対勢力なのである。
    自分たちの既得権が侵されるから反対する。

    寛容政策を取れるかどうかは、国内反対勢力との戦いだ。
    だから誰にでも実行できるものではない。

    異質なものを受け入れ、自らの中に取り入れて、国を強くすること

    異質なものと共存するのは、決して容易ではなく、常に緊張を伴う。
    だから、人々は同質なものだけで集まろうとする。
    それによって結成されるグループのメンバーは、価値観を同じくする人々であり、仲間であり、お友達だ。
    しかし、コストがあっても、なおかつ異質なものを認めることにはプラスがあり、プラスはマイナスを上回る。
    これを意識するのが、「異質性や多様性の尊重」だ。

    組織のとって異質性や多様性が必要である第一の理由は、同じ人ばかりだと「内輪の論理」「仲間内の論理」「なあなあ主義」が蔓延しやすいことだ。同質の人ばかりだと、遺伝子は劣化するのである。
    不祥事はこうした体質の企業で発生する。
    現代に日本では、東芝の不正会計、三菱自動車やスズキのデータ偽装など企業の不祥事が続いている。東芝や三菱自動車の不正は、上司の命令が絶対的で逆らえなかったから起きたと説明されている。
    しかし、これは多くの社員の協力なしには出来ないことだ。
    不祥事は、同質集団だからこそ起きる問題である。
    それを改善するために社外取締役制度を導入したが、チェックすることは出来なかった。

    第二の理由は、同じ人ばかりだと、それらの人々の既得権益保護が最優先事項となり、企業のビジネスモデルを変更できなくなることだ。
    新しい事業に着手するのは難しいし、古い事業を切り捨てるのは絶望的だ。
    このため、組織は硬直化し、衰退する。

    異質性が必要とされる第三の理由は、外的条件が大きく変化した場合異質性が、生き延びるための最終的な保険となることだ。
    最も優れたものだけを集めるのでは、保険として機能しないのである。

    時代を代表する文化は、数人の優れた創作者がいても形成できない。いかに彼らが優れていたとしても、その時代の大部分の人が権力者と同じ方向を向き、賛同し、高揚するという動きがなければ、生まれない。そうしたことが実現するのは、誠に稀有なことである。

    ローマ帝国における都市は、ほとんど完全な自治を享受していた。
    帝国の官僚機構が地方の都市の事柄に介入することは、極めて稀であった。
    このために、ローマ帝国は、広大な領域をごく少数の官僚機構で支配することができたのだ。
    ローマ帝国は、自治を行なう諸都市の連合と、その上にはめ込まれた絶対的な君主制との混合物だったのである。

    日本の地方都市は、排他的であり、地域外から移住者を迎えて成長したわけではなかった。排他的である半面で、財政的には国に依存した。
    日本の地方都市に決定的に欠けていたのは、財政的な地方分権と地方自治である。
    このために、地方都市の多くは、ローマ植民地のように発展するのではなく、個性を失って、衰退していったのだ。

    ローマ帝国が衰退した理由
    (なぜ大国は衰退するのか グレン・ハバード、ティム・ケイン)

    1ハドリアヌス帝による帝国拡大路線の放棄
    2二人のセウェルス帝による銀貨の改悪。その後の皇帝たちも、軍事費のために通貨改悪に頼った。
    3ディオクレティアヌス帝による価格統制。
    これによって市場経済が機能不全に陥った。

    もっとも、日本はトランプ発言以上に移民に対して拒絶的であり、異質のものを認めようとしない。それを考えると、われわれには、トランプ発言に対してあまり批判的なことを言う資格は無いと思われる。

    市場経済は、人々の創意を刺激し交易を促進して、経済を活性化させる。統制された経済では、人々は抑圧され、取引はヤミ市場にもぐって、経済は活力を失う。このことが、すでにローマ帝国の時代に実証されていたのである。

    スターリンがソ連に秩序をもたらした方法は、ディオクレティアヌスが
    ローマに秩序を確立したやり方と同じであって、いずれ崩壊するものだったからだ。
    ソ連はローマ帝国後期の歴史に学ぶことが出来なかったのだ。

    計画経済が何かを知るには、ソ連のアネクドート(小話)を見るのが一番よい。
    「君たちは働いたふりをしろ。われわれは給料を払ったふりをするから」
    もっと体系的にはつぎのとおり。
    「失業はないが、誰も働かない。働かないが、給料は貰う。給料は貰うが、何も買えない。何も買えないが、何でも持っている。何でも持っているが、不満だらけ。不満だらけだが、選挙では現体制に投票」

    ところが、おかしなことに、現在の日本では、政府の統制を是認する考えが強まっている。安倍晋三内閣は、官民対話と称して春闘に介入し、民間企業の賃金を引き上げようとしている。

    国は一度停滞しても復活することがあるという事実は我々を勇気づけてくれる。

    分権化と市場メカニズムの活用こそが、悪政から国家と
    経済活動を守る最も強力な手段なのである。

    企業に所属し得ない若者たちは、どこに拠り所を求めるか。
    それは、学校で教えられてきた概念である「日本国」だ。
    国が彼らを守るというのは幻想にすぎないのだが、国に対する依存が強まる。
    歴史上初めて、人々が国に帰属意識を持つようになったのだ。
    それは、外国人に対する強い警戒感と密接に結びついている。

    戦争が採算に合わないのはいつの時代にも変わらぬ真理であり、そうした考えが政策を手動する国では、軍部の暴走は起こらないのだ。

    「外に開かれた部分」に対して日本社会が関心を持ち、彼らをはぐれ者にせず、その発想を日本社会の改革に役立てられるなら日本は大きく変わるだろう。

    我々は、失敗したビジネスモデルや敗北した英雄の物語に、もっと注目しなければならない。

    企業が失敗する理由も様々だ。
    新しい技術の価値を評価せず、古いビジネスモデルに固執すること。
    異質性を排除し、同質の人々のグループになってしまうこと。
    短期的利益にとらわれて、長期的見通しを失うこと、等々。

    いまの日本では、分権的な制度が機能しておらず、
    官僚機構が肥大化している。国全体も地域も企業も、
    異質なものを排除し同じ仲間だけで集まろうとする。
    古いビジネスモデルに固執して、新しい技術の導入を怠っている。
    異常な金融緩和策で財政支出をまかない、企業は国の介入に依存するようになってきている。
    これらはきわめて深刻な兆候だ。
    しかし無視ないしは軽視されている。
    日本は歴史に学ぶことができるだろうか?

    ドナルド・トランプ米大統領は、自由な貿易を否定し、
    伝統的な製造業をアメリカに復活させることによって、
    失業した労働者に職を与えようとしている。
    そして、移民や外国人労働者に対して非寛容的な政策を取ろうとしている。
    こうした政策が失敗することは、火を見るより明らかだ。
    このような政策がアメリカを強くすることなど、決して無い。
    それは、確実にアメリカの産業力を弱めるだろう。
    トランプ米大統領の政策は、控えめにいっても時代錯誤の復古主義だが、国のビジネスモデルの基本から見ても明らかに誤りだ。

  • 『世界史を創ったビジネスモデル』という題でローマ帝国と海洋国家から入り、IBMやGoogle、マイクロソフト等々のビジネスモデルに繋いでいくとはなかなか斬新かつ大胆だ。Googleやマイクロソフト等々のビジネスモデルがいつまで続くか分からないが、まだ会社が出来てたかだか30〜40年だ。確かに素晴らしいビジネスモデルであり、誰もが出来ることではない。しかし今や世界は70年代にインターネットが世に出てから様々な分野で技術革新が起き、それぞれの技術革新がインターラクティブに作用して更に新しい技術革新が起きている。しかもそのスピードたるやエクスポネンシャルだ。GoogleもマイクロソフトもAmazonも世界の変化のスピードにいづれ追いつけなくなる時が来るだろう。筆者がローマの成功モデルは柔軟なダイバーシティさが作用して、1500年も続いたと言っているが、既存の成功パターンからの脱却、脱皮をダイバーシティを通じてやって行っても100年がやっとかもしれない。企業は全く別の会社にならないいけないことも排除しないくらいでないと生き残れないかもしれない。

  • ビジネス書より歴史経済書の性格強い、二部は蛇足

  • 17.6.23 ビジネスブックマラソン
    こんにちは、土井英司です。

    「一気に読みました」というのは、本にとって最高の賛辞の一つで
    すが、「読み終わるのが惜しくて、ちびちび読みました」もまた、
    最高の褒め言葉ではないでしょうか。

    本日ご紹介する、野口悠紀雄教授の『世界史を創ったビジネスモデ
    ル』は、最近読んだ中では最も「読み終わるのが惜しくて、ちびち
    び読んだ」一冊。

    ローマ帝国からヨーロッパ海洋国家のビジネスモデル、さらには最
    近のIT企業のビジネスモデルまで、広く「ビジネスモデル」を論
    じており、目からウロコの内容でした。

    経済学者のフィルターを通して世界史を見ると、一体どう見えるの
    か。これは、塩野七生さんの一連の著書に匹敵するほど読み応えが
    ありました。

    「多様性の確保」と「フロンティアの拡大」が、なぜ国や企業にと
    って重要なのか。誰でも受けいれる合理的な寛容さとフロンティア
    拡大で成功し続けたローマ帝国の事例に、指導者は学ぶべきでしょう。

    そして圧巻は、数百年先を見通し、平和時代のビジネスモデル(=
    通商)を開発し、後の海洋国家のモデルの基礎を創った「国造りの
    天才」アウグストゥス。

    本書を読んで、彼がなぜ歴史上最高のリーダーとして尊敬されるの
    か、その本質がわかった気がしました。

    ビジネスモデルとは何なのか、それが機能するには何が必要なのか、
    著者の慧眼も、本書の読みどころです。

    さっそく、しびれる内容をチェックして行きましょう。

    -----------------------------------------------

    「ビジネスモデル」という概念は、企業だけでなく、国にも当ては
    まる。国がどのような活動を行なうかは、ビジネスモデルの選択と
    考えることができるのだ

    重要な概念は、「多様性の確保」と「フロンティアの拡大」である。
    多様性を実現できた国や企業は、できなかった国や企業に対して優
    位になることが多い

    ローマを支える柱は、軍と奴隷である。軍を養うには税収が必要だ
    し、退役後の兵士に与える土地を獲得するには領土を拡張する必要
    がある。これらは周辺地に侵略し、征服することで得られる。そし
    て、戦争は奴隷の最大の供給源だ。つまり、戦争はローマにとって
    の中核的「ビジネス」なのである

    公共施設といえば国や地方公共団体の予算で建設するものだと我々
    は思っているが、ローマでは、実力者が私費を投じて作ったのだ

    ローマとアメリカの類似点は、以上にとどまらない。もっとも重要
    な共通点は、戦争後の対外政策にある。それは、よく言えば「寛容
    主義」であり、やや否定的なニュアンスを含めて言えば、「敗者同
    化主義」だ

    人間が自ら進んで働くには、第1に未来への希望が必要だ。そして
    第2に、勤勉に働いたことが正しく評価される仕組みが必要だ

    アウグストゥスは、それまでの空間的なフロンティアの拡大が限界
    に来たことを知り、それに代わる新しいフロンティアを、通商の拡
    大に求めようとした

    時代精神を体現したビジネスモデルが生まれるのは稀だ。現代で言
    えば、その稀な例が、iPhoneの登場だ。これが画期的であったの
    は、もちろん、それが優れた装置であり、便利だからである。ただ
    し、それだけでなく、時代の精神を体現しているからだ

    優れたビジネスモデルは、単に金を儲けるだけのものではない。ま
    た、余剰労働力を活用するだけのものでもない。そこには、人々を
    燃え上がらせるものが含まれているのだ

    広い領土は持たず、国を全世界に向って開放する。そして、貿易を
    中心的な産業とし、少数精鋭で大きな収益を実現する。これは、広
    い領土と多数の国民を持ち、主要産業は農業である大陸型国家とは
    異質のものだ。海洋国家は、ヴェネツィアやポルトガルが意識して
    採用した、国としてのビジネスモデルなのである

    -----------------------------------------------

    近年稀に見る日本人著者による力作であり、かつ今後の日本の方向
    性への示唆に富む内容でした。

    首相を含め、政治家は必読。

    企業経営者も、起業家も、読めば歴史上の偉人たちが創り上げた
    「ビジネスモデル」のすごさにしびれ、テンションが上がる内容です。

    ぜひ読んでみてください。

    -----------------------------------------------

  • 閲覧室 204||Nog

  • 1章のローマのビジネスモデルまで読んだ。
    帝政ローマの成り立ち、衰退の理由=過大な防衛費、不寛容

  • レビュー『世界史を創ったビジネスモデル』(野口悠紀雄)
    序章〜「ローマ帝国のビジネスモデル」〜「海洋国家のフロンティア拡大」迄は
    歴史を「成功」と「失敗」の切り口語ってくれているので、知っていたはずの歴史もひと味違ったものに感じられたが、それを現代のビジネスモデルの解説になった部分から、新鮮さが感じられなくなってきた。
    それは、前半部分で歴史を語りながら、現代のビジネスを参照してきたことが、後半部分で再度重なって語られているように感じられたことと、後半部分でのビジネスモデルの紹介が、前半のローマ帝国の解説に比べて軽く感じられてしまったからかもしれない。

    ちょっと厳しい指摘になってしまったように思えるが、それはこの序章で書かれていた『人間は誰でもある時期になれば過去を振り返伝みたくなる。それは、自分自身もその一員である人類という種族が、これまで辿ってきた道がどんなものであったかを知りたいという欲求だ。
    歴史の知識を蓄積すれば、これまで知っていた事柄が、新しい光の中で照らし出される。それまでバラバラに把握していたことがつながる。関連性が分かり、一つの大きな構造の中に位置付けられる。
    それはあたかも、ジグゾーパズルで絵が浮かび上がるようなものだ。あるいは。クロスワードパズルで文字がつながるようなものだ。ある時、一気に理解が広まる。』という凄くイメージを膨らませる言葉がそこ重みになって、期待を抱かせすぎていたのかもしれない。

    そして、経済学博士号を持つ著者が時おり語たる映画の脱線も面白かったが、やはりローマ帝国の反映と衰退を分析している箇所が、歴史家とは違って面白かった。そのひとつがよくいわれる多様性の重要性を説明してる部分、大事だといわれ、それを受け入れてはいるが、「why?」とどこかで思っていた。そんなことへの回答として書かれていた。
    【なぜ異質性や多様性がある必要なのか?】
    ①同じ人ばかりだと、「内輪の論理」「仲間内の論理」「なあなあ主義」が蔓延しやすい。同質の人ばかりだと、遺伝子が劣化しやすい。不祥事はこういった体質の企業で発生する。
    ②既得権益保護が最優先事項となり、企業のビジネスモデルを変更できなくなる。新しい事業に着手するのは難しいし、古い事業を切り捨てるのは絶望的だ。このため、組織は硬直化し、衰退する。

    *80年代頃。日本企業の「企業一家」的な同質性が、高く評価された。ただそれは、大量生産というビジネスモデルの大枠が既に出来上がっていて、それをいかに効率的に実行するかだけにあったからだ。革命的な進歩よりは、積み上げによる改善が重要だった。

    ③外的条件が大きく変化した場合、異質性が生き延びるための最終的な保険となることにある。極度に環境適応した「最強メンバー」では環境が激変すると、生き延びられない。だから、異質なものを積極的に残しておく必要があるのだ。
    恐竜時代の哺乳類が、異質なものとして現在に我々を残している。


    (「周囲の人には彼らが日本で暮らすのは大変なんだから」と包容力のあるフリをしながら、しっかりと鍵をかけたかを確認して街に出て、彼らの行動に必要以上に注意を払ってしまう)

  • 何が変わっているかよく理解できないけど、確かに何かが変わっているこの激動の時代の中で、生き抜くにはどうしたら良いか? という素朴な疑問に適切なアドバイスをくれる本。

    歴史的な成功より、失敗から学ぶことの方が遥かに重要で大切だと教えてくれる。

全22件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

野口悠紀雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×