漂流記の魅力 (新潮新書)

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (2003年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100024

漂流記の魅力 (新潮新書)の感想・レビュー・書評

  • 1793年、仙台から江戸へ向かった帆船、若宮号は途中で暴風雨により遭難。オホーツク海を北へ流され、たどり着いたのはロシアの東端。船員たちは極寒地で凍傷に倒れる者もいれば、ロシアへの永住を決意する者もいたが、それでも4人が帰国を訴え、ロシア皇帝と面会する。

    そして、彼らは陸路で西へ向かう。モスクワを経由し、ロシア西端から船で地中海、大西洋、太平洋を横断して、日本の長崎へ到着。その間10年。おそらく、初めて世界を1周した日本人だろう。

    そんな奇跡のような冒険を4人の帰国者から聞き取った文書が残されていたことを著者は紹介。日本にも「ロビンソン・クルーソー」に匹敵する漂流記があったのだ。

  • 吉村昭氏は、子どもの頃から、漂流記に興味を持っていたとあとがきに記している。私も、これまでに、漂流、破船、大黒屋光太夫、アメリカ彦蔵などの小説を読んできた。そして今回、漂流記の魅力を読むことができた。漂流記の魅力は、日本に限らず、ロビンソンクルーや白鯨など欧米の海洋小説はベストセラーとなって、人々に読まれてきた。その魅力は、ほとんど助かることがない境遇のなかで、いかに人間が闘い、生き抜ける力を持っているかが試される世界が描かれるからなのだと思う。そこには、不屈の精神や体力が大きくものを言うが、それだけでなく、鎖国政策にあった日本にとって、心の支えとなる宗教(キリスト教)に委ねることは、2度と故国の地を踏めないことを意味すること(発覚すれば斬首)となるからだ。こうした時代に翻弄されることがたまらないのかもしれない。

  • 日本は島国だから昔から多くの人が船で海に出たり、海から外国人が漂流してきたりした。
    漂流記はまさに文学なのである。

  • 古本で購入。

    漂流を題材にした小説を6篇書いてきた吉村昭が、「日本独自の海洋文学」である漂流記について語る。
    新書創刊のラインナップにこれを入れてくる新潮社はなかなか渋い。

    イギリスには多くの海洋文学としての小説・詩が生まれた。
    しかし同じ島国の日本には存在しない。それはなぜか。

    理由は船の構造・性格の違いによると、吉村は言う。
    西洋の外洋航海用の大型帆船と違い、日本の船は主に内海航海用だった。一般に「幕府が鎖国を守るために外洋航海のできる船の建造を禁じた」と言われるが、実際はそのような禁令はなかったらしい。日本に外洋航海用船がなかったのは、「必要なかったから」だそうだ。
    物産豊富な日本は国内の流通で事足りた。外洋に飛び出す必要がなかった。

    このあたり、物産・労働力ともに豊かだった宋代中国が、ついに産業革命に至らなかった(必要がなかった)という話に少し似ている。
    ちなみに、イギリスでコークス製鉄法が発明される700年以上前に、中国ではコークスによる製鉄が行われていたのだとか。

    閑話休題。

    陸地を視認しながらの航海とは言え、太平洋は恐ろしい海だった。それは南から北へ列島沿いを流れる黒潮のせい。急変する天候により遭難し黒潮に乗った船は漂う。運よく異国の地に流れ着いたとしても、病などで次々に船乗りが死ぬ。
    奇跡的に帰国を果たした彼らの体験を、選りすぐりの学者が聞き取った記録こそ、日本の誇る「海洋文学」なのだ。

    『北槎聞略』『時規物語』『蕃談』『東海紀聞』『船長日記』…
    数ある漂流記の中で著者が紹介するのが、寛政5年(1793)に石巻を出港して江戸へ向かった若宮丸乗組員の体験を記録した『環海異聞』。

    若宮丸は天候の激変で遭難、アリューシャン列島にたどり着く。ロシア人に保護された船乗りたちのその後はドラマチックの一言。
    オホーツクからシベリアを越え、帝都ペテルブルグに至る。漂流民を送り届けることで江戸幕府の心証を良くし、交易に繋げたいと目論む皇帝を始め政府高官に手厚く遇され、帰国の途へ。大西洋を渡り南アメリカ大陸の南端を過ぎ、太平洋を横断、ついに日本の土を踏む。この間、約10年。
    ロシアでの長きにわたる生活の中である者は死に、ある者はキリスト教に改宗してロシアに留まり、ある者は日本人として初めて世界一周を果たした。帰国を望む者とロシアで日本語教師となり裕福な暮らしをしようと願う者の確執、各地で見聞した貴重な体験など、『環海異聞』は特異な記録文学として光を放つ。

    吉村作品、次は漂流モノを読んでみようか。

  • 近海で遭難してロシアや北米に漂着するケースが意外にあったんだねえ。記録に残っていないケースも多々あるんでしょう。
    巻末の年表の中で、音吉は2年後に帰国とあるが、間違い。日本には戻れずシンガポールで客死。

  • タイトルから内外の色んな漂流記についてつまみ食い出来る紹介本かと思ったら違った(^_^;)

    日本人の漂流事例と、漂流から図らずも世界一周するはめになった若宮丸・津太夫らの聴取記録『環海異聞』がメイン。

  • 日本人初の「世界一周」が、図らずもこんな形で達成されていたとは。あまり知られていないのが不思議。1793年石巻から江戸へ輸送する米を積んだ「若宮丸」が悪天候のため漂流、アリューシャン列島の小島に漂着し、ロシア本国、バルト海、大西洋、ホーン岬、太平洋を経て長崎へ到着、帰郷。13年間の乗組員の想像を絶する艱難辛苦の史実。

  • 「漂流」や「大黒屋光太夫」など漂流をテーマにした小説で知られる著者が幕末の漂流の中でも比較的知られていない1793年の若宮丸乗組員の漂流から日本への帰還までをとりあげる。
    天候不良による遭難とロシア領内への漂着、ペテルブルグを経て南米大陸南端をまわって長崎までの帰還という日本人初の「世界一周の旅」は興味深い。小説作中では事実描写に徹し滅多に持論を語ることのなかった著者が「(江戸期の漂流記録は)日本独自の海洋文学である」と熱く語るのも強い印象を残す。

  • [ 内容 ]
    日本には海洋文学が存在しないと言われるが、それは違っている。
    例えば―寛政五(一七九三)年、遭難しロシア領に漂着した若宮丸の場合。
    辛苦の十年の後、津太夫ら四人の水主はロシア船に乗って、日本人初の世界一周の果て故国に帰還。
    その四人から聴取した記録が『環海異聞』である。
    こうした漂流記こそが日本独自の海洋文学であり魅力的なドラマの宝庫なのだ。

    [ 目次 ]
    第1章 海洋文学
    第2章 「若宮丸」の漂流
    第3章 ペテルブルグ
    第4章 世界一周
    第5章 長崎
    第6章 帰郷

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 漂流記と言っても外国文学のそれではなく、江戸時代に意図せず難破し漂流して艱難辛苦を乗り越えて日本に帰国してきた人たちからの聞き取りの記録についての本。

    石巻(宮城県)から出航して遭難した若宮丸の帰還者たちの記録「環海異聞」中心に記載している。同じ船で遭難して、シベリアに到着後も、語学習得力の差から仲間割れが起こったり、ロシア永住を決意したり、必ずしも同じ船の乗組員が一枚岩ではなかったことがわかる。
    現地に残った人のその後などは現在は判明しているのだろうか・・。空想のふくらむ本。

  • 『十五少年漂流記』とかあるし、漂流記かあ、ロマンティックだなあと勝手に思っていた。よく考えればそんなことはないのだ。「漂流記」とは、漂流を経て帰還した者の叙述を当代の学者が記録したもので、著者はこれを日本独自の海洋文学と位置付ける。第1章で、なぜ漂流が頻発したのか、その恐ろしさが解説される。第2章以降は、日本人として初めて世界一周することになった若宮丸の水主の漂流の過程を、大槻玄沢による『環海異聞』などに基づいて追う。新書ですが、吉村さんは小説も大体こんな感じだと思うので、まあ小説でもあるかもしれません。

  • 吉村昭氏の著作のバックボーンとなった資料の出自に関する書。「漂流」と合わせ読む事お薦め。

  • 平成20年3月13日読了

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漂流記の魅力 (新潮新書)の作品紹介

日本には海洋文学が存在しないと言われるが、それは違っている。例えば-寛政五(一七九三)年、遭難しロシア領に漂着した若宮丸の場合。辛苦の十年の後、津太夫ら四人の水主はロシア船に乗って、日本人初の世界一周の果て故国に帰還。その四人から聴取した記録が『環海異聞』である。こうした漂流記こそが日本独自の海洋文学であり魅力的なドラマの宝庫なのだ。

漂流記の魅力 (新潮新書)はこんな本です

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