武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

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著者 : 磯田道史
  • 新潮社 (2003年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100055

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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)の感想・レビュー・書評

  • 世襲制が続いた江戸時代。その世襲制に終わりを告げる例外を与えたのが算用者という職種。つまりそろばん方だそうです。武士はこのような学問は下級武士が行うものとバカにしていた。しかしながら、算用方は必要ということで能力次第で登用される。ナポレオンも下級騎士出身だったため、大砲方を選んだのは、同じ事情がヨーロッパにもあったそうです。数学が世襲制を打ち砕いて近代化を進めたのは、感慨深い。

  • 会社で経理をしているので、思わずのめり込んでしまった。
    漢数字での記帳とか帳合はどうやっていたのかな?
    江戸時代の会計に俄然興味が湧いてきた。
    帳簿関連の古文書を調べてみよう。

  • 幕末から明治維新までの武士の生活を加賀藩の武士が残した古文書から復元し、考察するもの。
    表題が「家計簿」となっているが、経済面だけではなく、当時の武士・士族の考え方、風習まで記しており、より幅広い範囲での考察が可能である。
    特に明治維新に入り、なぜ武士(士族)が大きな反乱なく、四民平等を受け容れたのか。武士の経済的な基盤を理解することで謎解きできる。

    江戸時代が約200年安定した政治基盤を持てたのも、「位は取るが実をとらず、位は取らないが実をとる」といった封建制とはいいながら、勝者が全てを取る、ヨーロッパスタイルではなかったことが要因ではないかと改めて実感。

    また、「石高」、「知行」などの実態の運用状況もなかなか分かり難いところであるが、それも実例に基づき分かり易く説明されており、その意味でも重宝。

    著者あとがきより引用、
    猪山家の人々から、大切なことを教えてもらったように思う。
    大きな社会変動のある時代には、「今の組織の外に出ても、必要とされる技術や能力をもっているか」が人の死活をわける。


    以下引用~
    ・行政に不可欠な「算術」のできる人材がいつも不足しがちであったのである。武士とくに上級武士は、算術を賤しいものと考える傾向があり、算術に熱心ではなかった。
    ・加賀前田家は「算術」を非常に大切にした家である。・・・海軍は数字のかたまりである。明治維新後、日本が海軍を建設したとき、海軍の中心をなしたのは、薩摩と旧幕府そして差がであったが、のちには加賀もこれに割り込んだ。
    ・厳密な儒教社会からみれば、日本の婿養子制度はおよそ考えられない「乱倫」の風習である。
    ・武士と百姓町人の家計簿を比べたとき、最も違いがあらわれるのは交際費である。(身分費用)
    ・考えてみれば、江戸時代は「圧倒的な勝ち組」を作らないような社会であった。武士は威張っているけれど、しばしば自分の召使よりも金を持っていない。
    ・教育して官僚・軍人にして身を立たせる。とくに、明治初年の士族はこの教育エネルギーが絶頂に達していた。

  • 何回読んでも興味が尽きない。現在と似ているようで、かなり違う武士たちの日常に驚くばかりです。

  • 歴史に疎い私でも、武士の生活を垣間見ることができました。武士の生活も大変なのね。。。映画観たいなぁっと思って読んでみたのですが、この本をどのように映画化したのか映画を観るのが楽しみになりました。

  •  古本屋で温州みかんの段ボール箱に入っていたのは、加賀藩士猪山家の37年間にわたる細密な出納帳だった。ただの家計簿ではない。「御算用者」という会社で言えば経理と資財を合わせたような職務に代々ついていた、いわば会計のプロが残した家計簿だったのだ。磯田道史『武士の家計簿』は、「国史研究史上、初めての発見」というこの貴重な史料をもとに、武士の暮らしぶりを超具体的に紹介してくれる一冊だ。
     家計簿を付け始めた当初、一家の収入は米にして五十石。1石が27万円程度として現代感覚にすると年収1350万円相当だったという。ところが借金は年収の倍もあった。武士としての体面を保つために多額の交際費が必要不可欠だったからだ。祝儀交際費の支出機会は年200回以上、額面で年収の三分の一にも上っている。明治維新によってこの「身分費用」がなくなったことは、武士にとって特権を失う以上にありがたいことだったのでは、という著者の推測も肯ける。
     さて猪山家、さすが会計のプロだけあって、いよいよクビがまわらなくなる寸前に家財の一切を売り払って借金を整理したようだ。家計簿には嫁入り道具の着物はおろか、欠けた茶碗までいくらで売ったと生々しく記録されている。その後も苦しい台所が続くが、幸いにも猪山家は親子三代にわたって計数能力に恵まれ、徐々に藩政に重用されるようになる。一介の下級武士から、藩主の家族の秘書役へ、そして家計簿三代目(猪山家としては九代目)の成之は加賀百万石の兵站を預かる立場へと出世。さらにロジスティックの腕を見込まれて新政府軍にヘッドハントされ、誕生したばかりの日本海軍のソロバンをはじくことに。明治7年の彼は現代で言えば3500万円相当の収入を得ていたそうだ。
     という具合にこの本、歴史読み物としてのトリビア的楽しみもさりながら、筆とソロバンを両手に激動の幕末を生き延びた会計一家・猪山家の成り上がりストーリーとしても格別のおもしろさ。森田芳光監督で昨年末、映画になったのも納得だ。無味乾燥な数字から無類の物語を抽出した著者の仕事に感謝したい。

  • 映画になっているような話題本はあまり読まないが、この本は違った。
    なぜなら私の祖先が代々金沢出身だからだ。どんな暮らしをしていたのだろう?
    年収の2倍という借金をしながら会計係をしていたお侍が、家計簿を付けて財政を立て直す古文書による記録。
    家族の手紙や日記もあり、心温まる内容だ。借金の目録表の中に曾祖父の名字を発見。「あれ?」と驚く。
    同じ名前もあるかもしれないと思って、市立図書館で古文書の名簿をネットで調べたらこの名字の人をひとり発見。80ページくまなく捜したが他に同じ名字はいない。再びびっくりして、階下の母に知らせに行く。
    それにしても同僚に年利18%で金を貸すとは、曾々おじいちゃんはせこいではないか。あんまりだ。ま、こちらも同じように貧乏をして助け合っていたのだろう。
    でもこの映画の主人公は努力して頑張り、スパルタで育てた子孫は明治になって偉くなって金持ちになった。曾祖父の子孫の私はせこいのだけを受け継いだ。

  • 余裕がない自分を解放するために考えるべき事 - 読んだものまとめブログ http://t.co/vglWB66 via @sadadad54

  • 幕末、経理の才幹を認められ、生き抜いていく武士の家系を家計簿から読み解いていく非常に興味深い本だった。映画になったと知って読んでみた。武士っていろいろ体裁を取り繕うのが大変だったのね。

  • 残された家計簿から、その一家の生活ぶりを再構築していく試みにワクワクした。
    家計簿に並んだ数字そのもは無機質なものだが、その意味するところは血肉を持った人間の営みに直結している。

    筆者が感じたのであろう「おぉー!そうかー!」という、自分の知識と目の前の現物史料とがつながった感じ、その感動が随所に見受けられて、とても親近感を持った。
    それはほんの些細なことだったりもするし、きわめて単純なことなのだけれど、それがあるから史料読みは病みつきになるのだな、とも改めて思った。

    「御算用者」という武士の中でも特異な能力者集団の系譜を受け継ぐ一家の生活ぶりそのものも、幕末維新という動乱を経て迎えた明治という新しい社会秩序の中での「元武士」たちの生き方も。いわば”生の声”を聞くようなものなので、非常に興味深い。

    江戸時代の武士といえば、論語と剣術が栄達の道で、勿論まずは生まれた家の格式で生まれてから死ぬまでの出来事がほぼあらかた決まってしまうという大まかなイメージがあるが、そこに当てはまらない人がいたことにまず驚きを感じた。
    「算術」の能力に秀でた一家が、まさに算盤一本で意外な出世を遂げていく様は、まったく良く出来たサクセスストーリーだ。戦闘シーンも何もないけれど、どこか胸のすく思いがする。
    栄達の道を進んでいくのは初代一人のことであるが、それをどう維持し守っていくかがていくかがその後代々受け継ぐ一族にとって重要なことになる。そのためこの一家もその血脈を保つために網目のような血縁関係を築き上げていく。それもその「異能者集団」の内内において。
    勿論、一家を背負ってたつであろう子供に対する英才教育にも並々ならぬものがある。本来の武家であれば尊ばれるはずの生まれの順ではなく、あくまでも算術に長けている子供が優先。まさにスパルタ方式。
    更に一家を襲う価値観の大変換、明治維新の大波。

    彼らが江戸から明治という時をどう生きたのか。
    時代の転換期、先行きの見通し悪い時期においては、一つの参考になるかもしれない。

    数字を駆使した検証のくだりは斜め読みしても前後で十分面白く読めるので、数学に苦手意識がある人でも安心して読んでみてほしい。

  • 江戸時代の上級武士には算術を賤しいものと考える傾向があり、ソロバン鑑定などは徳を失わせる小人の技と考えられていた、その為行政に不可欠な算術の人材が常に不足していた。よって御算用者は比較的身分にとらわれない人材登用がなされていた。

    加賀前田家は算術を大切にしてきた藩で、このため維新後の海軍においても加賀藩出身者が重宝された。

    現代から比べると江戸時代の武士は、召使を雇う費用、親類や同僚と交際する費用、武家らしい儀礼行事をとりおこなう費用、先祖・神仏を祭る費用、などの武士身分としての格式を保つために支出を強いられる費用の割合が高く、これを怠ると武家社会から確実にはじき出される「身分費用」という概念があった。

  •  話題の歴史学者が、江戸時代の家計簿を見つけ、読み解いたことを解説した本。たしかに時代劇などでは当たり前に思っているシーンも、言われてみれば誰かが記録を読み解かなければわからないこと。丁寧に読み解いたことを解説している割には、読みにくかったり理解しにくいことはなく、素人にもわかりやすく読みやすいようにしてくれている。そしてただの家計簿も30年分をたどっていけば歴史と物語が詰まっていることを教えてくれた。

  • 資産処分のシーンが圧巻。資産を処分して借入を返す、元本をまとめて貸し手に持ち込むことで、債務圧縮を図る。
    これは、いまの債務超過企業の手法と全く同じ。

  • 著者が偶然に発見した金沢藩士の文書。映画化もされたので、猪山家の人々の人間模様が中心かと思いながら読み進める。しかし、この文書は武士階級の者達がそれぞれに経験した幕末・維新という激動の時代の浮き沈みまで記録したものだった。映画も見てみたいな。

  • 金沢藩で代々御算用者を勤める猪山家の武家文書に含まれていた、約37年(1842年~1897年)に亘る詳細な家計簿をひもといて、武士の暮らしぶりや、幕末維新の激動期を武士たちがどう乗りきっていったかを検証した書。
    下級武士ながら、技術者として精勤に励み、金沢藩で頭角を現した代々の猪山家当主。手に職を持っていたがゆえに、明治政府にても重用されて難局を乗りきることができた猪山家。ある武家の数代に亘るファミリーヒストリーがリアルに描かれていて、とても興味深かった。

  • 猪山直之の生き方に魅力を感じる。
    著者の江戸の幕末の状況の説明を読んで余計に学問を身につけること、一芸というか手に職をつけることの大事さ、また素直に正直に生きることの良さを感じた。

  •  この著書の存在を見つけたのは、磯田氏の「無私の日本人」を読んでからのことである。
    用は自身の職業柄、加賀百万石と言われた藩の誤算用者がいかにして財政を組み立てたのかについて興味があった。
     加賀藩が栄えたのは、体制として誤算用者を集めた誤算用場に、財政ばかりではなく国内の民政をも差配させていた点である。
    普通の藩では、政治が会計を行うが加賀藩では会計が政治を行っていたのである。勿論、有能な実務担当者が選任され筆とソロバンを代行していたからである。

  • 面白かった。笑!
    江戸時代でもリストラやら地価下落やら、金融破綻などなど今の状況がそのまま反映されたような世界だったことが、猪山さんの家計簿が見つかったことでわかった。っていう内容なんだけど。

    マメな猪山さんは、その都度小さい一口日記みたいのも家計簿と一緒に残してて、愚痴ってたりなんだかんだと嘆いてみたりと、書いてあることで手に取るように武士の生活がわかった。ということらしい。笑!

    嫌だろうな武士の猪山さん。

    わりに有名な人だったらしいけど、それでもこんなにビンボーだったんだなぁ。武士って。って感じでした。笑!!!借金しまくりで利息で首が回らない武士ばかりだったとか。

    武士より農民の方が断然お金持ちだったのに、見栄だけで成り立ってた。などなど。興味深い内容でした。

    今でも見栄を張ると金がかかるのは変わらないしね。

  • 武士の支出のほとんどが、冠婚葬祭の親戚づきあいの接待交際に費やされていたのは初耳。参考文献リストの分量が凄くて、まるで論文のような新書でした。これを映画にするというのは大胆ではある

  • ひとまとめに武士という。紐解くとそれぞれにこんな生活だったんだなあというのが伝わってくる

  • 2003年刊行。著者は茨城大学助教授。金沢藩で経理・書記部門を担当していた家系で、詳細な家計簿が残されていた。これを解読し、幕末から維新初期までの下級武士の生活実態を明らかにしようとする。①商人からの借入れが多いが、同程度の武士あるいは親戚からの借入れも多い。②借入額が年収の2倍というのは平均的。③維新のような変革期では、現在の職種のみならず、他の業態でも勤務できる知識・技能が尊ばれる。④明治維新において武士の権限剥奪に反乱・反抗が日本全国では発生しなかった・波及しなかったのは身分維持費用が高額なため。

  • 家計簿からこんなにリアルな武士の一家の生活があぶり出されるとは、誠に見事としか言いようがない一冊。あたかも小説を読んでいる様だ。

  • 驚いたのは、幕末から維新にかけての武士の悲喜こもごもがわかるということと同時に、古文書の解読という歴史学者の仕事の様子そのものまで書かれていたことだった。
    すごくがんばって古書店で資料を探し当てるくだりはとてもイキイキと書かれていておもしろい。もちろん肝心な「武士の家計簿」の内容も、その時代に生きた人々の思いまで伝わるような見事な解析だったが、それはそれとして「武士の家計簿」がなぜ見つかったのかというところも非常に興味深く読める。

    著者の出世作らしいが、家計簿ひとつから時代を見抜くという著者の洞察力の深さはとてもすごかった。歴史ロマンという言葉が感じられるような気がする一冊。

  • 武士の家計簿から明治維新を語るのは新鮮な切り口だった。

  • 面白い。新書なのに堅苦しくない。

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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)の作品紹介

「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。国史研究史上、初めての発見と言ってよい。タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題…など、猪山家は現代の我々が直面する問題を全て経験ずみだった!活き活きと復元された武士の暮らしを通じて、江戸時代に対する通念が覆され、全く違った「日本の近代」が見えてくる。

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)はこんな本です

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