- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106100055
作品紹介・あらすじ
「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。国史研究史上、初めての発見と言ってよい。タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題…など、猪山家は現代の我々が直面する問題を全て経験ずみだった!活き活きと復元された武士の暮らしを通じて、江戸時代に対する通念が覆され、全く違った「日本の近代」が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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この古文書の発見は確かに画期的で、近世武士の生活が解り、その後の時代物文学やドラマに影響を与えたのだろう
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駅施設内交換本。作者が好きな訳では無い。「日本の近代」とあるが、近世末からの移行期が主題。
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T図書館 再読
猪山家は加賀藩の御算用者、いわゆる経理のプロ
天保10年7月~明治12年の5月(1842~1879年)まで37年間、幕末武士が明治士族になるまでの完璧な記録
家計簿及び家族の所管や日記
金融破綻 地下下落 リストラ 教育問題 利権と 収賄 報道被害などの問題に直面していた
《感想》
磯田先生の本はいつでも情熱が感じられ、それでいて読みやすいしわかりやすい
こちらも夢中で読むことができる
数字が飛び交う文章に、幕末までくると疲れてしまったが、大村益次郎や秋山真之などの有名人が登場し、時代と猪山家の変遷が見えて勉強になった
早い段階で借金に着手したことは、先を見通す力があったと言える
その後、武士としての使命の部分、教育関連と医療にはお金を使い、絵の鯛だったり、我慢できる部分には節約をがんばっていた
祖父、父、子供、共に信用され、出世していったことは素晴らしいし、当然の結果だろう
《内容》
猪山家の借金は年収の2倍あった
藩士の金利は15%を越えるのが普通であった(高すぎるっ!)
理由は大名ほど信用がなく、担保が取りにくいことから高金利だった
天保13年1842年の夏
所持品を売り払って借金を返すと家族全員同意した
父の信之、茶道具をあきらめる
本人の直之、書籍、四書五経は高額で売れた
妻、母、加賀友禅を手放す
以後着物を買わなかった
妻の実家から1000匁(もんめ)援助
勤務先から500匁借用
それでも2200匁残った借金は四割返すから無利子十年賦
利払いの圧迫から解放され破産からよみがえった
猪山家が貧しくなった理由
江戸詰の負担が重い(二重生活)
金利が高い
勤務にあった俸禄が支払われない
接待交際が多い(親類、町方など)
家来と下女の人件費
出産儀礼、成育儀礼
葬儀(10年に1回の計算、年収の1/4) -
おもしろい。
タイムカプセル開封感がたまらない。旧金沢藩士の猪山家は代々「御算用者」という会計•経理の家柄だった。幕末に新政府の会計方を任され、明治以降は海軍に出仕した。経理のプロが自家の借金返済のために付け始めた家計簿が、現代までよく残っていたものだ。関連する手紙類も含めて、取りまとめて保管した几帳面さも驚嘆に値する。
一応、大学で歴史学を学んだ身としては、何となく『こうじゃないかな』と類推していた幾つかのことに正答を得られた感じで満足感が高い。
だが、私がこの本を読んで何よりも感じいったのは別の所にある。それは"藤沢周平の小説のもつ時代描写の的確性"だ。ご存知の通り、藤沢周平は学者ではない。様々な文献にあたったり取材したりして書いたのだろうが、描かれたフィクション(時代小説)は江戸期の武家生活を見事に活写していたと言わざるを得ない。何か、『事実が後から追いついた』…そんな感覚に陥ったのだ。
…という訳で、藤沢周平ファンはぜひ一読してみる事をお薦めします。家計のやり繰りに苦心する歴代の猪山家の人々が、藤沢周平作品に登場する無名の人々に重なって見えるかもしれません。 -
幕末、加賀藩の猪山家は家計簿をつけていました。
その家は代々、加賀藩の「御算用者」
いわゆる経理を勤めており
仕事柄というか性格というか
私用の家計簿も実に細かい!
ところが当時の生活を調べるのに
これほど適した資料は他にありません。
武家社会の出と入りの実態もさることながら、
この家計簿と猪山家の歴史を通して
幕末から明治において
武家から士族へどうやって変わっていったのか
までがわかるのです。
というようなことを原本から読み解き
平易な言葉で伝えてくれる本。
この古書にめぐりあったとき
著者はすごく興奮したみたいですが、
そのワクワク感そのままに書いているので
おもしろいですよ。 -
イメージ上の武士と、実態の武士。
会計面からすり合わせすることができる。 -
面白かった。当時の士族の生活の細部が描写されていて、リアリティが感じられた。このような話を今の教育現場ですれば歴史好きな子ども達が増えそうだ。
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嫁入り道具の着物までも売り払う妻の献身に感動。
露姫の手紙は悲しいすぎる。 -
2016.03―読了