司法のしゃべりすぎ (新潮新書 103)

著者 :
  • 新潮社
3.13
  • (3)
  • (13)
  • (36)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 144
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101038

作品紹介・あらすじ

現役判事が司法の抱える問題点を鋭く突く。不要に原告を疲弊させ、理不尽に被告を傷つけ、無駄に裁判を遅延させる「蛇足」の正体とは何か。戦後補償訴訟、中国人の強制連行、ロッキード事件、ロス疑惑、「悪魔ちゃん」事件など、現実の裁判を例にあげて蛇足の弊害を明らかにする。まったく新しい視点から裁判を論じた画期的な提言。裁判を見る目が一変すること間違いなし。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • フォトリーディング&高速リーディング。

    現在は退任された著者の、判事時代に書いた本。話題になっていた。

    判決文で余計なことを主張する自己主張が、裁判の時間を長引かせ税金を使って居るとのこと。

    例示も多い。

  • 判決に関わりない蛇足ともいうべき部分が判決の理由欄の大部分を占めたり、判決そのものよりも重大な社会的影響を与えたりすることの無駄、違法性を説いている。
    結局のところ、判決の要点と蛇足の部分をメディアが恣意的に混同し報道する姿勢こそが最大の問題点なのかな。
    判決で勝った場合、その理由欄に大きな不服があってもそれを正す機会が無いというのは確かに問題だろうけども。

  • 著者は「判決文が短い」という理由で再任されませんでした。おまえはしゃべらなさすぎ。

  • 『司法のしゃべりすぎ』井上薫。読了。一般に向けたというよりは法曹界に一石を投じる一冊。メディアリテラシーのあり方を考えざるをえないな。しかし国家無答責ってのは随分な気が...

  • 裁判官が判決理由に直接関係のないこと(傍論)を付与することで、裁判の長期化、裁判所の抱える多数の訴訟の停滞、行政府や立法府に対する干渉、三権分立の均衡の崩壊などの弊害が起こると著者は述べている。それを解決するには、裁判の核心・判決の理由とは関係ないことに関して審理を行ったり、判決文の作成をしたりすることに時間を費やすことなく、要点だけまとめて裁判所が訴訟を行うことが必要だと述べてられていた。

    著者の主張は、訴訟当事者の経済的な側面、精神的な側面、日本の裁判の迅速化など、あらゆる面に言及し合理的な考えであると思われた。

    しかし、裁判を進めていくうえで結果的に不必要となってしまう証拠や審理があったとしても、それは結果論であって、はじめから必要なこと・不必要なことがはっきり分かれているなんてことはあるのだろうか。事件とかそういう争いのあるものは、複雑な事情が重なり合ったものも少なくはない。その点が私には疑問に思えた。

    日本の裁判の改善のために一石を投じたものであるのならば、著者の主張は評価されるべきだが、少々議論が乱暴なように感じられる。

  • 蛇足判決の解説にとても納得した。

    法曹界以外でも通じることが多いと感じる。

    結論に影響しない事実認定の作業に手間をかけすぎたり、えん罪に近いものを生じさせたりを自分もしているのではないかと、本書を読んでから常に意識するようになった。

  • 著者は執筆当時は現役判事でしたが、本書での主張を貫いて退官された元判事の方。裁判による判決の中で、判決の理由には直接関係のない「蛇足」が含まれることを徹底的に批判しています。英米法では、判決の中でも先例拘束性のある「レシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)」と傍論である「オビタ・ディクタ(obiter dictum)」が峻別されていますが、日本の法体系でここまで徹底した議論を展開するのを読んだのは初めてです。ただ、「蛇足」は単なる「蛇足」にとどまらず、裁判の迅速化に反するのみならず、一人歩きをして訴訟制度の歪みを産み出し、民主的コントロールが弱い司法が立法権まで手を出してしまう危惧があるという主張は、ラディカルながらも考えさせられました。惜しむらくは、結論をあまりにも早い段階で提示してしまい、その後は論証を補足していくという構成なので、法曹の書く文章に慣れていない方は、最後まで完読するまでに飽きてしまうかもしれませんね。

  • 現在の判決書の書き方を含めた司法の在り方に批判を加える一冊です。

  • [ 内容 ]
    現役判事が司法の抱える問題点を鋭く突く。
    不要に原告を疲弊させ、理不尽に被告を傷つけ、無駄に裁判を遅延させる「蛇足」の正体とは何か。
    戦後補償訴訟、中国人の強制連行、ロッキード事件、ロス疑惑、「悪魔ちゃん」事件など、現実の裁判を例にあげて蛇足の弊害を明らかにする。
    まったく新しい視点から裁判を論じた画期的な提言。
    裁判を見る目が一変すること間違いなし。

    [ 目次 ]
    第1章 晴らすことのできない濡れ衣(すわ、殺人事件発生;損害賠償請求訴訟提起さる ほか)
    第2章 判決理由とは何か?(話題にすること自体に意義がある;理由とは何か? ほか)
    第3章 饒舌禍の実例(ロス疑惑(実例1)
    中国人の強制連行(実例2) ほか)
    第4章 蛇足の弊害(当事者のマイナス;裁判所のマイナス ほか)
    第5章 打開策はあるか(裁判所内で;法曹全体での打開策 ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 判決するにあたって不必要な理由を付けることによって様々な弊害が出てくるってことを繰り返し繰り返し述べている本。筆者の考えた例のような案件がいっぱいあるのかと思えば、どっちかっていうと、判決に必要がない裁判官の個人的な考え方までが判決理由に述べられることによって、立法の権限がない司法が出しゃばってきているってかんじの例が多かった。確かにそれも問題だと思ったし、掲載されている新聞記事を見て、筆者の言うように蛇足ばっかりで面白いと思ったけれど、いかんせんこういうパターンばっかりでちょっと飽きた。それに、論理的に原因・結論だけの裁判を実際に臨む人がどれだけいるのかも疑問。クドクドややこしい言葉使って、図なんかも使っちゃってるけれど、内容的には繰り返しだし、そんなに濃い内容じゃない。

全22件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

同朋大学大学院人間福祉研究科・社会福祉学部准教授。臨床心理士。
名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程(心理学専攻)修了(文学修士、1982)。愛知県児童相談所に勤務(1983〜1999)。1999年より同朋大学社会福祉学部専任教員。家族援助論、児童福祉臨床研究などを担当。児童家庭相談、特に児童虐待防止ケースマネジメントを研究。
主な著書等:『児童虐待へのブリーフセラピー』(共著 金剛出版 2003)、『新生児医療現場の生命倫理』(共著 メディカ出版 2004)、「サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ入門」(共著 そだちと臨床vol.2 明石書店 2007)。訳書として、『安全のサインを求めて』(ターネル、エドワーズ著 共監訳 金剛出版 2004)、『児童虐待を認めない親への対応』(ターネル、エセックス著 共監訳 明石書店 2008)

「2008年 『子ども虐待防止のための家族支援ガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上薫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×