- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106101236
感想・レビュー・書評
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フライドチキンは黒人奴隷料理の代表。
白人が食べずに捨てた手羽、足先、首の部分を、骨も気にせず食べられるようにディープフライしたのがルーツ。
おでんそば。おでんに中華そば。すごい。効率性と満足を求めた結果の料理。昔の母親の朝ごはんで、バンバーグそば出てきたけど全く同じではないか。
最後の締め文がいい。
"料理は、味が決め手である。しかし同時にその国、民族、地方、個人を表す文化でもある。だから他人にはどうということのない味でも、その人にとっては懐かしい味であったりする。"
思い出で飯を食う。背景を知ったうえで料理を楽しむ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ソウルフード」とは魂の食事とか郷土料理という意味ではなく、アメリカを発祥とする黒人文化の料理。もっと言えば「奴隷料理」のことで、その背景には差別や貧困という悲しい歴史が潜んでいる。フライドチキンがアメリカのソウルフードの代表と呼ばれる理由は、かつて白人の農場主が残して捨てていた鶏の手羽先などを、黒人の使用人たちが油で揚げて食べていた事から。ブラジルのフェイジョアーダ(豚の内臓と豆の煮込み)、ブルガリアの「焼きハリネズミ」、牛肉を禁じるヒンドゥー教の国・ネパールの不可触民と食べた「スキヤキ」など、世界各地に根ざした「被差別料理」とそれらを食べる人々をレポートする。日本においても、牛や豚の屠畜場で働く人たちが作った内臓の揚げ物など、筆者自身が幼少の時から親しんだ「むらのソウルフード」が生々しく描かれており、被差別の民の歴史に深くえぐり込んだ一冊と言える。
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俗説で言われるところのホオルもん、ホルモンは実は被差別側からの巧妙な印象付けにより、その美味を隠しつつ独占して来たのでは。といううがった見方はないのだろうか。それほどホルモンは旨いし、今や正肉に比べても高級食材ともいえる。
フライドチキンしかり、差別の歴史はその歴史に反して余儀なくされたにしてはあまりにも美味な着地をしている。
多少動物臭が臭かったり、痛みかけとしても、絶妙なグルメ点があったといえる。
本来美味とはそういったものではないか。
辺見庸の「もの食う人びと」までの体の張り方がないのと、結果こちら先達のほうが美味そうだったわけだが。 -
書店で古本で売っていたので購入。数年前京都にいた時ちらっと読んだことがあります。この本であぶらかすの存在を知って無性に食べたくなって近所を探し回ったのはいい思い出。
久々に読んでみましたが、なかなかいい旅行記&食レポでした。
被差別部落出身というアイデンティティも大切にしつつ、等身大のひとりの人間として、目の前の人に、そして料理に接しようとする気持ち、通じ合おうとする意志は、何となく伝わってきました。
文章から、食の向こう側にある生活なんかも、想像されてきます。
そして何より、食を通して差別について考えさせられることもあって、そういう意味でも単なる旅行記、単なる食レポに終わっていないように思います。 -
食
社会 -
世界の各地域でいわゆるソウルフードと呼ばれる被差別階級の食卓を見つめることで筆者が自己のアイデンティティを確立していく。大阪・更池部落のさいぼし・あぶらかす・こうごり。アメリカ黒人社会のフライドチキン・BBQポーク・なまずフライ。果てはブルガリアのロマの食卓やネパールの牛食文化にまでスポットが当てられ、人間社会の隅で生きるものたちの生活がありありと浮かび上がる。良書。
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「ソウルフード」は差別と根っこのところでつながっている。アメリカのフライドチキンやなまずフライ、ブラジルのフェジョアーダやムケカ、ロマのハリネズミ料理など、実際にその地を訪ねて差別されている人たちに入り込んで食べさせてもらう。ネパールの不可触民・サルキが食べる牛肉のエピソードはすごい迫力。原点には、著者自身の体験からくるあぶらかすの料理がある。いままでにない視点からのディープな民族料理レポートだ。
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正直な感想を言えば、読んでいると食欲がなくなる。
しかし、ブルガリアのロマの章などは「うっ」と思ってしまうけれど、実際その過程は私達が牛や豚を食べたりするのと同じことなのだった。
どんなに眉を顰めてしまうような食事風景だとしても、彼らにとってはどれもこれも単に生きるために他ならない。
何を食べるから良い、悪い、などと、私達に批判できる権利など一切ないのだ。
本当に食というのは命そのものだ。 -
アメリカ、ブラジル、ブルガリア・イラク、ネパール、そして日本という世界各地の被差別民の生活とその共通性を”ソウルフード”(食事)という観点から描いたノンフィクション。
普段何気なく食べている食事にこそ、文化が表象されるというのは当たり前のこととして、内臓料理の割合が多いことや、香辛料等で煮込むその調理法、など、その共通性が面白い。
これを読んで無性にかすうどんが食べたくなった。東京ではあまり見ないが幾つか店もあるようなので、近いうちに必ず。