貝と羊の中国人 (新潮新書 169)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101694

作品紹介・あらすじ

財、貨、賭、買…。義、美、善、養…。貝のつく漢字と羊のつく漢字から、中国人の深層が垣間見える。多神教的で有形の財貨を好んだ殷人の貝の文化。一神教的で無形の主義を重んじた周人の羊の文化。「ホンネ」と「タテマエ」を巧みに使い分ける中国人の祖型は、三千年前の殷周革命にあった。漢字、語法、流民、人口、英雄、領土、国名など、あらゆる角度から、斬新かつ大胆な切り口で、中国と中国人の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に面白かった。
    海・多神教・貨幣的な豊かさを重要視する殷と、内陸・一神教・善や義など無形の善行を好む周の文化を著者はそれぞれ貝の文化・羊の文化と呼び、これとエリート層である士大夫の文化が組み合わさったのが現代中国であるとする。(財・貨・賭・買や義・美・善・養といった感じから殷周それぞれの文化が読み取れる)
    こういった文化的な背景を元に、殷周時代から現代に至るまでの中国の歴史を読み解いていくが、病院前に葬儀店があること・ニーハオトイレ・三国志のエピソードなどそれぞれの具体的な歴史の紹介もこれまた面白い。
    今後中国とは好むと好まざると付き合わなくてはいけなくなると思うが彼らのホンネ(殷の文化)とタテマエ(周の文化)という思想構造を知る上で本書は非常に有益な一冊になると思う。下手なKnowHow本よりも、本書のほうが中国人の行動を理解するうえにおいても有益なことは間違いない。

  • 中国人を貝文化と羊文化に分けて分析する。キャッチーなタイトルだが、京劇を研究してきた著者の感覚は中国で生活している自分の感覚に近い部分もあるなと思った。文化の中心の一つ杭州も何度も登場する。
    農耕民族は地面や草木や虫など生命がどんどん湧いてくる自然環境→多神教
    遊牧民族は空から大きな力がふってくる→一神教
    羊=遊牧民、西方西北の内陸部、一神教、無形の主義を信じる、孔子的、儒教的
    貝=農耕民族、東方東南地域、多神教、有形の財(お金)を信じる、老荘的、道教的

    東シナ海の油田問題をみると、こちらが黙っていれば相手は当然の様に中間のものに手を出す。縄張り感覚が違うからだ。
    タイムスリップ体験をしたければ中国へ行けば良い。飛行機で上海へ世界最速のリニアモーターカーに乗り、都会上海市内へ、そこからディーゼル車で地方内陸へ。どんどん鄙びていく。

    日本と中国の文化の交流は、直流(一方的)だった。日本人は水滸伝や三国志を知っている。しかし、中国人が紫式部や松尾芭蕉を好んで読むか?唐の鑑真和尚が死をとして日本に渡ったのは神道を学ぶ為ではなかった。日清戦争後は逆転。魯迅、蒋介石、周恩来は日本に留学したが、近代日本のリーダーで中国留学経験を持つものはいなかった。これからは双方交流が大事だと。果たしてなるのか、まだ疑問だ。


  • 中国社会で起きている表層的現象からの中国論ではなく、「中国人」の内面からその本質に迫った画期的な作品。中国を論じる本は数あれど、一冊だけ選べといわれれば、間違いなくこの本を推奨したくなるくらいの名著。中国というところは昔から変わらない。中華人民共和国は歴代中国王朝の一種なのだ。嫌中派も親中派も目からウロコが落ちること間違いなし。

  • 978-4-10-610169-6
    c0222¥720E.

    新潮新書169.
    貝と羊の中国人

    著者:加藤徹(かとう とおる)
    2006/06/20. 発行
    2006/07/10. 第3刷

    発行所:株式会社新潮社

    -----カバー袖より
    財、貨、賭、買…。義、美、善、養…。貝の付く漢字と羊の付く漢字から、中国人の深層が垣間見える。
    多神教的で財貨を好んだ殷人の貝の文化。
    一神教的で無形の主義を重んじた周人の羊の文化。
    「ホンネ」と「タテマエ」を巧みに使い分ける中国人の祖型は、三千年前の殷周革命にあった。
    漢字、語法、流民、人口、英雄、領土、国名など、あらゆる角度から、斬新かつ大胆な切り口で、中国と中国人の本質に迫る。
    -------------------
    手にした理由
    このところ中華風(?)の物語を楽しんでいる。
    「薬屋のひとりごと」を知ったのはなんだったかな?
    「薬屋のひとりごと」で中国ネタのものも、面白いかも?と考え、中国五大奇書のうち、一番児童書になっていそうな「西遊記」を開いて、封神演義(マンガ)を思い出した。
    また、漢字は中国から伝わったが、日本人はそれを工夫して使い、現在に至る的な本も読んだ。
    とても近いけど、同じではなく、似ているけど、全く違う日本人と中国人の文化。
    それに興味が出てきてこの本を開いてみている。著者さんも初見である。
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    2006年のものなのですが、手にしてよかったと思いました。

    姿はにているけれど、全く違う(と、私は感じている)その国やその国に住む人たちの事柄について、少し垣間見えました。
    私が持つ中国人のイメージの中に、やたらに恩着せがましい物言いや、ダメ元て無理を押し付ける気がするけど、気の所為ではなかったんですねw

    ちょうどユダヤとイスラエルのことも別の本を並行して読んでいるので、世界の中で自国ではないところで暮らす人達という括りで見ても興味深かったです。
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  • 当たり前のことではあるが、中国人と日本人は違う。顔つきや肌の色は似た黄色人種で二者共に漢字を操る民族であっても、考え方も言葉も多くは異なる。誰も疑いようない事実ではあるが、最近化粧や食べるものが近づいてきた(グローバル化による均一化)せいなのか、黙っていればどちらが日本人か中国人か見分けがつかない事もある。気候までも日本と近いからなのか、沖縄出身の方は見分けても中国人の方を見分けられないことさえある。だが違う。
    本書は中国に暮らした筆者が、日本人との違いについて中国人の成り立ちから辿っていく一冊である。タイトル「貝と羊」は中国人の気質をよく表した言葉だ。貝は農耕が生み出した余剰生産物を貨幣を用いて売買する所から、お金や経済を表す。殷の時代にそれらは発達したから殷人的。羊は読んで字の如く狩猟や遊牧を中心とした生活で周の時代、周人的な側面を表す漢字だ。
    中国という国は長い歴史の中でたくさんの周辺民族が侵略し治めてきた土地だ。各年代、王朝によって様々な考え方や暮らし方、文化が発達し、それに応じた知識人や権力者が集まり様々な色合いに発展してきた土地だ。四千年の歴史とはいえ同じ王朝が長く続くことも少ない。今の中国に至っては僅か80年にも満たない歴史しかない。その様な変化の激しい国だからこそ、土地への繋がりも疎遠で他者との繋がりも深くならない。
    その様な国が我が国の隣にあるのだ。私は中国はプライベートもビジネスも何度も訪れて、人の多さには驚いたが、食べ物も人も良くて世間一般で言うような悪いイメージは持っていない。国内にも中国人の知り合いは多数おり、皆、日本人の友人同様に良い人たちばかり、何よりビジネスやお店で出会う中国人は皆働き者だ。そんな中国と日本は頻繁にすれ違いを起こす。政治の問題は靖国訪問、台湾や沖縄、原発処理水放出は日本からの魚貝類農産物の輸出に大ダメージを与えるような問題が山積している。すれ違いは今はまだ殴り合いの喧嘩に至っていないが、対話・沖縄・尖閣問題はいつ武力衝突に発展しないか緊張状態が続く。まさかお互い手を出すことはないだろうとたかを括っている人も多い。だが歴史を振り返れば、そうした国民性の違いやひょんなすれ違いから何度も戦火を交えてきた。元寇然り日中戦争もたったこの数百年の間に衝突している。
    先ずはお互いの国民性の違いは認めなければならない。生まれも育ちも経験もまるっきり違う2つの国家が分かりあうためには互いの歴史に学ぶのが一番である。その知識なしにニュース報道やネット動画に悪戯に踊らされ、面白がっていると、そのうちに引き金は引かれるだろう。
    中国人が本音と建前を貝と羊の様に使い分け、どんな変化の中でも逞しく生き延びてきた事を忘れてはならない。そして我々日本も太平洋戦争の惨禍から劇的に復活を遂げた民族だ。2つの強力な民族同士が心の底から相手を信じ、笑って手を取り合える時代がいつか来る。そう信じて本書を閉じる。

  • 9月からの中国留学に備えて常識収集。

  • 中国の文化を殷周の違い、貝と羊から書き起こし2000年代まで中国人の考え方、行動原理、習慣が書かれている。

    特に中国の大雑把な捉え方は参考になった。「春望」の一節で、二通りの解釈ができるところ等。

  • 本音と建前
    その背景

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 貝の文化 羊の文化/第2章 流浪のノウハウ/第3章 中国人の頭の中/第4章 人口から見た中国史/第5章 ヒーローと社会階級/第6章 地政学から見た中国/第7章 黄帝と神武天皇/終章 中国社会の多面性

  • 978-4-10-610169-4 254p 2008.4.10 9刷

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著者プロフィール

1963年生まれ。明治大学法学部教授。専攻は中国文学。主な著書に『京劇――「政治の国」の俳優群像』(中央公論新社)、『西太后――大清帝国最後の光芒』(中公新書)、『貝と羊の中国人』(新潮新書)、『漢文力』(中公文庫)など。

「2023年 『西太后に侍して 紫禁城の二年間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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