- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106102059
作品紹介・あらすじ
新聞という産業は今、様々な危機に直面している。止まらない読者の減少、低下し続ける広告収入、ITの包囲網、消費税アップ、特殊指定の見直し-そして何より、金科玉条としてきた「部数至上主義」すなわち泥沼の販売競争は、すでに限界を超えている。いったい新聞は大丈夫なのか。生き残る方策はあるのか。元大手紙幹部が徹底的に解き明かす、新聞が書かない新聞ビジネスの病理と、再生への処方箋。
感想・レビュー・書評
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新聞は久しく読んでない。
ごくごくたまに読むくらい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
毎日新聞社の常務を務めた著者の目から、新聞を取り巻く現状と展望(+提言)について語る。
活字離れではなくて新聞離れであるという事実。
「紙」の販売にまつわる収益構造のねじれ。
(子会社の)TVをめぐる利権の渦。
二大新聞社の野望。
など、新聞が抱えるさまざまな問題についてである。
このうち「二大新聞社」というのは読売と朝日のことであり、毎日はカヤの外ということになる。そこで著者は「第三の極」(三番手以下の新聞社の大同団結)を提案する。
だが、これらの“美しい”ソリューションは、各社のメンツ(企業文化)や拡大再生産の発想(守旧派の抵抗)の前で実効性を持つのだろうか。
結局、新聞は読朝の二大潮流に収斂し、やがて衰退していく未来しかイメージできないのだが…。 -
毎日新聞の役職員であった筆者によるものであるから、意見が毎日新聞寄りであるのはやむないとしても、内容的に疑問な点が多い。
p.42 「仮に消費税が三ポイント上がり、八%になって上昇分を読者(=価格)に転嫁できなかった場合、(中略)ABC部数に定価をかけて、その8%分を弾き出してみます。」 転嫁できない金額は、定価が、税抜価額の場合、「8%分」ではなく、上昇分の「3%分」をかけるのが正しい(なお定価が、税込価額の場合、「8%分」ではなく、まず、「100/105」をかけて税抜価額にした後に、上昇分の「3%分」をかける)。
p.112 「保有株式20%ともなると、まず筆頭もしくは10番以内の大株主ですから」 20%(=1/5)なら、10番以内ではなく、5番以内
p.112 「商法の規定」(本書は2007/03/20出版) 商法ではなく、会社法
p.126 「二分の一までできるようになりました。過半数イコール所有です。」2分の1なのか、過半数なのか、それとも著者は両者の意味の区別が付かないのか?ちなみに答えは、放送法施行規則 第17条の8(認定の基準)により、議決権の2分の1を超えると「支配」で、支配されていると「認定又は認定の更新」が受けられないから、「2分の1」が正しく、「過半数」ではない。また、なぜ、根拠となる法令名称を明記しないのか?
p.99 「だとしても、世界の森林で、毎年100万本単位の木が、読者のいない残紙のために切り倒されていることに胸が痛みます。」読者がいる新聞紙のために木が切り倒されても筆者の胸は痛まないらしい。 -
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【教育学部図書館リクエスト購入図書】☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA81229191
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著者は毎日新聞社で記者からスタートし、社長室室長、常務取締役を歴任した人物。新聞社経営が崖っぷちであることを認識しながら、新聞再生を模索。業界は違っても・・と明日はわが業界もを感じさせる本。
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その冒頭部分を読み始めて、びっくり仰天した。
新聞社という企業は、販売店に対する配達手数料や広告代理店に対する取扱手数料、さらに部数拡張のために販売店につぎ込む販売報奨金やらで、実に売上の45%を持って行かれるというのだ。さらに、(これは本書とは無関係の新聞社に勤める友人の話であるが)新聞社の売り上げの20%を、新聞用紙代が占めるのだそうだ。 つまり、新聞販売にかかるいわば原価が、売り上げの実に65%を占める。会社の建物の維持費や取材にかかる経費、そして最も大切な社員の給料は、残る35%から捻出しなくてはならない。
何たる高コスト体質だ・・・と思ってしまう。 -
新聞社の押し紙問題は非常に根深い。また、押し紙に関わる新聞本社と販売店の間のやり取りもなかなかに複雑だ。販売店は新聞代収入を一旦本社に納め、そこから販売手数料と販売奨励金を受け取る。販売奨励金は基数により変動があり、戦略的に実質原価ゼロとなるような奨励金を出す場合もある。(ただし、2013年現在では、単純な基数制度は見直されているようだ)
本書は2007年の発刊であり、5年経過後の現在どうなっているのか、追跡確認が必要。 -
2007年3月初版の古い本だが、なかなか刺激的だった。2013年の今、新聞社は大して変化していないように見える。しかし確実に「新聞社を見る目」は変わっており、傘下の放送事業と併せて斜陽産業と見做され、経営は展望を失っている。そして彼らの記事はますます実態からの乖離してしまい、批判や嘲笑を受けて、記者は希望を失いつつあるように見える。