オタクはすでに死んでいる (新潮新書 258)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102585

作品紹介・あらすじ

テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。日本人はなぜ皆、コドモになってしまったのか。自由自在に飛び跳ねる思考の離れ業のダイナミズムを堪能出来る一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 面白い!文化論にも関わらず説明する表現があまりに体にすっと入ってくるので読むのが止まらず引きこまれました。特にオタク世代移り変わりを貴族主義→エリート主義→自分の気持ち中心主義という表現でまとめたのが秀逸。オタクというか、文化論って面白いなと強烈に感じた一冊でした。

  • おたくといえば、萌えという昨今の世間のイメージもしょうもないが、当のおたく側自身までもが自分の好きな方向性だけを正として、視野と懐が狭くなっている。
    タイトルから物議をかもしたそうだが、岡田氏の立場からは自分たちの世代の古き良き「おたく」はいなくなってしまったということだろう。

  • 文中で言う「第三世代」のキーワードは「萌え」でなく「ネット」だろうし、日本経済の閉塞感もおたくの人格形成に大きく作用しているだろう。
    その辺りにあまり触れられていないのが残念だが、結論部分はある程度得心がいった。
    先達のおたく哲学も多少理解が進んだ。

  • 歴史的に見たおたくとオタク。

    単一的な価値観が全面化している社会に拮抗するものとして、「貴族」として、それ以前の「SFファン」とも対立する存在として、最初のおたくは自立した。

    おたくは自身を屹立した存在として自覚し、存在するために行動した。

    裾野が広がったあと、「エリート」としての第二世代がやってききた。

    そして、マジョリティになったことで、「おたく」は死んだ。


    「萌え」が、「気持ち悪い感じの俺かっこいい」ということははじめて知ったよ。


    あと、講演を編集したもののようですが、編集がすばらしい。
    岡田斗司夫さんはやはりすごい人だと思う。

  • オタクの誕生から現在に至るまでの変遷を論じた本。
    昭和から平成まで社会全体に対する文化論にまで発展しています。
    相手の考えを認知し、文化を広めるためにはそんなに好きではない作品も勉強するなどの第一世代の基本姿勢に共感します。
    若者へのエールで締めくくられている点も良かったです。

  • おたくからオタクへ、そしてオタク共和国の崩壊へと至る流れを軽やかに描いている。組織が萌芽期、隆盛期、衰退期として流れていくように共和国的意識としてのオタクはなくなり、個人の好みだけが残るようになっていった。この歴史を、オタク史にとどまらず、"昭和"の死として論じているところに著者の鋭さを感じる。子供が大人になり、大人が子供になった平成という時代を如何に生きるべきか、我々は考えていく必要がある。

  • オタクという社会現象をここまで捉えられるのは、著者自身がオタクであるからに他ならないと思う。それにしても、オタク学を社会分析にまで発展させることができる著者の分析力と観察眼には脱帽。またその眼差しがオタク達に対する愛情に満ちている。

    (本が2008年に出版された時点で)
    第一世代:今の40代
    第二世代:20代終わりから30代半ば
    第三世代:20代前半(生まれたときから高品質のアニメ、マンガ、オタク商品があった)

    弟三世代までは、「オタク」という大陸に一緒に住んでいる仲間を否定しなかったけど、弟三世代は「萌えている自分」が好きなので、人のことはどうでもいい=「自分の気持ち至上主義」 というのを理解し、かなり納得いきました。


    p168”日本では子供に「お小遣い=趣味の自己決定権」を与える。同時に日本では、大人向けの「思想や表現の過激性」を備えた子供文化が増えた。この二つの条件がそろって、はじめてオタクは発生したのです。”

    p170”あえて苦労を引き受け、常に向上を求める大人の姿勢は、短絡的に見るとあきらかに「損」なのです。そして、そういう「短絡的」なスパンでしか、ものを考えられない。短期的な感情=「今の気持ち」だけで判断することを「自分の気持ち至上主義」というわけですね。 そのため、オタクの総人口が急激に増えてしまったのです。”

    p178"「見てもらった分だけ返すならいいんだけど、どうせ損するだけ」
    ハイ、その通りです。
    でも、そういう「一方的な損をひきうける覚悟」を大人と言うんですけどね。
    「一方的な得だけ、要求する根性」を子供っぽい、と言うんですけどねぇ。”

    オタクという切り口でありながら、今の社会全体が抱える問題をバッサリと分析しきっている、さすがオタキング!

  • タイトルはあれかな、北斗の拳からとったのかな。

    とまぁそんな話はどうでもいいとして、本書の趣旨は「オタク」という概念が、近年陳腐化してしまっていて、種々雑多なオタクたちの、同族の共感性が乖離してしまっているという話。

    第三世代のオタクたちは「萌え」という感覚に絞られた共感性のみが重要視されてしまっていて、オタク人ならではの気骨(岡田氏のいう貴族性)や、基礎的知識がかなりおろそかになってしまっていると・・。

    この話を聞いたときに、「あ、C・Pスノーが言っていた、学問分野における文系と理系の断絶」にひどく似てるなぁと思った。

    共有価値が細分化しすぎていて、同じ「アニオタ」であっても、話が全然かみ合わないという現象が起き、しかも当人たちはそれで「よし」とする傾向にあるのだとか・・・。

    オタクとしての「誇り(岡田氏のいうところ貴族性!」と信念をもって、縦横無尽に行動する岡田斗司夫氏のバイタリティーに感服!

  • いやはや、色んな気付きを得られる本だった。自分は何かに関するオタクだと思っている人にはぜひ読んでほしい。自らを理解する助けになるだろう。

  • 10月29日読了。読み手の過剰反応を狙ってのタイトルだとは思うが、黎明期からの「オタク」の緩やかな連帯感・「わかってる」感じの消失を、かつてのSFファンがたどった道筋などから検証する「オタキング」岡田氏(ヤセ後)の著書。無邪気な開拓者の第一世代、葛藤と闘争の第二世代、新人類の第三世代という世代の推移はオタクに限らずサークル活動とか、あらゆる団体に適用できる考え方のように思われる。岡田氏に対してそこはかとなく感じる「お前がオタクを語るなよ」という当方が抱く感情も、所謂『オタク』の文化が喪失してしまった、ということの証左なのかもしれない。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。通称、オタキング。1984年にアニメ制作会社ガイナックス創業、社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーに。その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を超える。現在はYouTuberとして活動し、チャンネル登録者数は90万人を超える。

「2023年 『誰も知らないジブリアニメの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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