日本の近代 下: 教養としての歴史 (新潮新書 262)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102622

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  • 下巻では、1919年の第一次世界大戦終結から、1945年の敗戦までの歴史があつかわれています。

    大正から昭和にかけてさまざまな文化の領域で見られた「大衆化」の現象に光をあて、とくに文学におけるその影響について論じられている箇所は、近代から現代へと引き継がれることになる問題についての著者自身の立場が示されているように感じられます。

    戦時体制がさまざまな領域で戦後の日本に引き継がれ、それによって日本の経済的・技術的な発展が可能になったという議論は、経済学の野口悠紀雄や科学史の廣重徹らが、どちらかというと批判的な観点から論じていますが、本書でもそうした見方が、むしろ肯定的なスタンスで提示されています。

    やや期待外れに感じたのは、日本の「国体」や「社稷」にかんする著者の考えが、あまりはっきりと語られていなかったことでしょうか。保田與重郎などの浪漫派や戦後の天皇制にかんするアイロニカルな思索を展開してきた著者だけに、このテーマについてはおおいに語ってほしかったように思います。

  • [ 内容 ]
    日本の近代は焼け野原となって幕を閉じた。
    しかし、敗戦も一つの達成であった―。
    第一次大戦の戦勝から大東亜戦争の敗戦までの約三十年間、日本は何を成し遂げたのか。
    五大国として列強と肩を並べた日本は、帝国主義の終焉と相次ぐ大不況に方向性を見失う。
    国家が迷走するなか、主導権を握った軍部は、次第に最強国アメリカとの対立を深めていく。
    たった二冊で黒船から敗戦までの九十年がわかる特別講義の完結編。

    [ 目次 ]
    第1章 五大国になったが、日本は時代に取り残されてしまった
    第2章 都市のサラリーマンという生き方
    第3章 いつも戦争の遠因には不況があった
    第4章 昭和デモクラシーを担った陸軍という政治集団
    第5章 中国との戦争に終着点はあったのか
    第6章 第二次世界大戦の中の日本の戦略
    第7章 アメリカとの戦争、そして敗戦
    あとがき 「敗戦」は悪くない結末だった

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    [ 参考となる書評 ]

  • 大正から昭和にへと、関東大震災を境に世界的な大不況下で
    日本の政治はどのように変質し、日中戦争へと突き進んで行ったのか。
    自由選挙が行われ、平民出身の宰相、リベラルな政治家が出現し、
    民主主義としては進化したはずの日本で、なぜ外交上の失策や
    軍部の独走が続いたのか。
    筆者はあとがきで、自由選挙による、
    軍事や政治のエリートの不在を招いた事を理由に挙げる。
    いわゆる衆愚政治に陥ったという事だろう。
    日本人が初めて手に入れた自由を使いこなすまでには
    習熟していなかったという事か。
    また当時のヨーロッパ諸国、ソ連、アメリカの状況にも翻弄された。
    明治の先達が日英同盟を結んで日露戦争に勝利したような
    外交センスが失われていたのが大きな敗因であろう。

    残念ながら現在の日本人もあまりそこから進歩していないように
    思えてならない。
    現在の政権も外交センスの無さ、経済政策のビジョンの無さに
    関しては当時より下なのではないだろうか。
    少なくとも高橋是清のような財政のプロは見当たらない。
      

    歴史は常に勝者の手によって記されるものだという。
    敗戦国である日本は東京裁判で一方的に裁かれ、
    アメリカによる原爆投下やソ連による満州での蛮行が
    国際的に裁かれる事は無かった。
    日本人による第二次大戦の記録はしっかりと
    残しておかなければならないと思う。

著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学名誉教授。『日本の家郷』で三島賞、『甘美な人生』で平林たい子賞、『地ひらく――石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。

「2023年 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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